第99話 ベヒモスダンジョン101層
グリムリーパーとの戦闘後、多少の遅れは許容してダンジョンを進んでいる。
98層の戦闘で破損した甲冑を修理する。
テラパワーの社員がいる場所は道具が揃っているため甲冑の修理にうってつけ。
「100層に到達」
99層を突破したのを騎士が知らせる。
兵士たちが99層のモンスターを片付けるため動き出した。
「100層か」
ダンジョンに入って19日目。
17日で100層というのは無理だったが、19日であればまだ許容範囲の日数。
精鋭が揃っているからかアックスオッターの時より疲労は少ない。
あとはダンジョンがどこまで伸びているか。
「アイザック、あまり無理はするなよ」
師匠が誰かの甲冑を修理しながら話しかけてくる。
グリムリーパーとの戦いは師匠やテラパワーの社員から心配された。
戦闘継続不可能になる騎士が大量に出たのはグリムリーパーとの戦いが初めてだったから仕方がない。しかもぼろぼろになった甲冑も見ている。
「師匠から怒られない程度にします」
無理しないとは言えない。
ダンジョンは死と隣り合わせの場所。時には無理してでも状況を打破する必要がある。
「生きて帰ってこい」
「はい」
師匠は俺の言葉の意味を理解しているのか短く言葉を続けた。
甲冑の修理を再開する。
100層を超えてからダンジョンはまた見た目が変わった。
草、岩、木そして花。木に花が咲いている。
緑色ではなく透明な白い花。
「ダンジョンにあると思えないほどきれいな花だが、大量のヘルハウンドを相手しながら花見は無理だな」
101層のモンスターはまたヘルハウンド。
100層もあれば同じモンスターが出てくる。
「きれいすぎてきみが悪いわ」
「確かにな」
きみが悪くはあるが、騎士とモンスターが戦うと花びらが舞うのが幻想的ではある。
もっともダンジョンは騎士とモンスターが命をかけて戦う地獄と言った方がいい場所。花びらが舞っていたところで誰も見向きもしない。
「交代するよ」
「ああ」
別の大隊と交代するため前に出る。
「数は少ないがモンスターを繋ぎ合わせたようなモンスターがいる。深層モンスターより強い。気をつけろ!」
交代する大隊の騎士が交代間際に注意を促してきた。
「繋ぎ合わせた?」
「アイク、ヘルハウンドが来たよ!」
騎士に質問しようとするがヘルハウンドが来てしまう。
深層のモンスター相手に話しながら戦う余裕はなく、こうなってしまうと戦いに集中するしかない。
「片方倒したからと気を抜くな!」
「ありがとう!」
去り際に騎士が助言を残してくれる。
詳しく聞きたいところであるが、後は気を抜かずに戦ってみるしかない。
「アイク、飛ぶわよ!」
「ああ」
クロエが飛んでヘルハウンドの気を引く。
以前にもやった戦法だが101層のヘルハウンド相手でも同じように効果が出る。
ヘルハウンドは8本の足を飛びあがろうとゆっくり縮める。
「おおお!」
「はああ!」
俺のバトルアックスがヘルハウンドの首を落とし、パーシーのメイスが頭をつぶす。
「アイク、パーシー。変なモンスターがいるわ!」
何体もヘルハウンドを倒していると上空のクロエが何かを見つけた。
ヘルハウンドの首を落としながらクロエに問う。
「変て!?」
「モンスターを繋ぎ合わせたような見た目よ」
「さっきの騎士が言っていたモンスターか!」
叫びながらヘルハウンドの首を叩き切る。
「片方倒したからと気を抜くなだったか」
「意味がわからないわね」
確かに意味がわからないのだが、わざわざ助言してきた意味はあるのだろう。
「クロエ、安全のため変なモンスターと戦う前にヘルハウンドを減らしたい」
「広範囲の魔法を使うわ」
深層モンスターより強いと助言するほどのモンスター。
ヘルハウンドに囲まれながら戦いたくはない。
「広範囲の魔法を使う!」
周囲の騎士に注意を促す。
「パーシー、二人で魔法を使って倒してしまうわよ」
「うん」
クロエとパーシーから魔力が放出される
「フリーズ」
ヘルハウンドが凍っていく。
「サンダーストーム」
雷の嵐が降り注ぐ。
効率いたヘルハウンドが砕け散っていく。
「一度に100体以上倒したか」
「魔力もすごい使ったけどね」
「効率がいいようで悪いな」
「二人分の魔力だと考えると、身体強化した方がいいね」
だが魔法のおかげで空白ができた。
「きたわよ!」
空白のできた場所を進んでくるモンスターは違和感がすごい。
「上半身がオーガで下半身がヘルハウンドか?」
上半身のオーガにも頭があり、下半身のヘルハウンドにも頭がある。
「オーガの上半身を切り取って、無理やり繋ぎ合わせたみたいだね」
「形は違うがキメラみたいだな」
「モンスターを繋ぎ合わせたキメラといったところかな?」
上半身のオーガは槍を持っており、穂先を俺たちに向けている。
しかもヘルハウンドの体は走るのが早く、奇妙なキメラのモンスターは勢いよく駆けてくる。
「槍を止める」
「オーガの首を狙うわ」
剣や斧であればまだ楽だったのだがな。
下半身のヘルハウンドに触れれば燃え上がる。槍だけを押さえ込んでヘルハウンドに触れないようにしなければならない。
キメラが近づいてくる。
バトルアックスで盾を鳴らすとキメラが俺に狙いを定めた。
身体強化の魔力を増やして槍を受ける。
「ふっ」
走る速度と体重の乗った槍は凄まじい威力。
だがベヒモスやヘカトンケイルの一撃に比べれば軽い。
「はああ!」
キメラが止まった瞬間空を飛んでいたクロエが叫ぶ。
頭上にあるオーガの頭部が飛ぶ。
思ったより簡単に頭部が飛んだ。
「アイク! まだヘルハウンドが動いている!」
「何!?」
盾が燃え上がる。
ヘルハウンドの体液が燃えるのは生きている間のはず。
「片方倒したからと気を抜いたらダメだよ!」
「片方とはそういう意味か! 頭部を狙うなら二つ落とさなければならないのか!」
盾が燃えあがり熱が伝わってくる。
しかもオーガの上半身は頭部がなくなったというのに槍を振り回している。
「ヘルハウンドの頭部を狙おうにもオーガの上半身が邪魔よ!」
飛んでいるクロエからヘルハウンドを狙えないか。
「クロエは集まってきたヘルハウンドの注意を引いて!」
「任せたわよ!」
先ほど大量に倒したヘルハウンドは再び増え始めた。
「パーシー、俺は槍とヘルハウンドの牙と爪を防ぐので手を出せないぞ。どうする?」
攻撃を防いでいるので精一杯。しかも盾が燃えている。
適当に繋ぎ合わせたようなモンスターだが想像以上に強い。
「魔法で動きを止める」
「早めに頼む」
ヘルハウンドが攻撃を繰り出す度に液体が飛んで周囲が燃え上がる。
「サンダーインパクト」
パーシーのメイスがオーガの胴体に刺さる。
「狙いが逸れた!」
ヘルハウンドの下半身を狙うつもりが、オーガの胴体に当たってしまったか。
だがオーガの上半身だけではなく、下半身のヘルハウンドまで動きが止まった。
「おおお!」
ヘルハウンドの首を落とす。
盾の炎が消える。
二つの頭を落とせばキメラは死ぬか。
「ヘルハウンドまで止まった?」
「繋がっているだけあって電流は流れたようだ。運が良かったな」
「想像より強かった」
「ああ。首を二つ落とす必要があるのは大変だ」
首を全て落とさなければならないモンスターはいる。
しかし、首が複数あるモンスターの大半は首が隣り合っている。
「パーシー、キメラのようなモンスターについての記録を見た記憶は?」
「名前付きのダンジョンを討伐した回数は少ないから資料も完全ではないと思うけど、以前に見た資料にもこんなモンスターは乗ってなかったよ」
「俺もない」
名前付きのダンジョンについての資料はそこまで多くはないため、ほぼ全ての資料を読み終わっているはず。
だがキメラのようなモンスターについての記述は覚えがない。
「アイク、話は後。クロエが相手しているヘルハウンドを倒すよ」
「ああ」
会話している暇もない。
連携しながらヘルハウンドを倒す。




