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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第91話 停滞

 バッファローヒルに来て一ヶ月。

 いまだにダンジョン内部へは進めていない。


 今は定期的に開かれる会議にクロエのパーティーという枠で参加している。

 会議中にダンジョン内に進むべきだという案が騎士の中から出てきた。ケルヴィン国王陛下が危険すぎると意見を押さえ込んで入るが、状況はあまりよくない。

 結局、現状を継続するという形で会議は終わる。


「さすがに焦れてきたか」


 クロエも仏頂面で機嫌が悪そう。

 クロエから返事を期待できないため、パーシーを見ると苦笑している。


「僕たちがくる前から戦っていたのも含めると二ヶ月近いよ」

「二ヶ月立っているのに入り口付近で戦い続けているからな」

「それにダンジョンが発生するのは一箇所じゃないからね……」


 ベヒモスダンジョンに戦力を集中している状況はよくない。

 しかし、このままベヒモスが定期的に出てくるベヒモスダンジョンを放置もできない。セレストドラゴン王国が焦れるのも理解できる。


「モンスターの復活速度さえ落ちればな」

「いったい幾つのダンジョンの核を与えたんだろ」

「ダンジョンの様子から核を与えたであろうと予想はされているが、そもそもダンジョンの核を与えたかもよくわかっていないらしいからな」


 スカーレットドラゴン王国で名前付きのダンジョンが連続で発生したため、セレストドラゴン王国も国全体で改めて確認しているときにベヒモスダンジョンは発生したらしい。

 発見した時にはベヒモスがすでに外に出ており、普通の状態でないのは明らかだった。


 俺はケルヴィン国王陛下から付けられた騎士を見る。


「ソフィー、バッファローヒルはほぼ全てが開拓されているんだったか?」

「はい。私の兄が納めるバッファローヒルは領内全てを定期的に見回っており、新しいダンジョンが発見されたとしても低層で討伐されています」

「ベヒモスダンジョンは急に現れたと……」

「そうです。水源の不便さから町や村から離れた位置にはありますが、定期的に探索される場所です」


 ケルヴィン国王陛下からつけられたのはバッファローヒル侯爵の末の妹。

 ソフィーは俺たちと同じように覚醒者で白い髪に白い角を持つ少女。まだ学園を卒業前であるが実力は学園卒業と同等らしい。領地の危機であるため特例で後方支援だけ許可されている。


「この周辺へ出入りする怪しい奴など見つけられはしないか」

「はい。ベヒモスダンジョンが発生してから探してはいますが見つかっておりません」

「エリクサー・ラボラトリーの情報もなしか」

「今のところは見つかっていません」


 スカーレットドラゴン王国からもエリクサー・ラボラトリーの情報は入ってこない。

 違う名前で活動しているのかもしれないな。


「別の方法で突破方法を考えるしかないか」

「何か方法があるのですか?」

「ない。自分たちで探そう」


 騎士が持っている知識では限界。

 テラパワーの錬金術師がいる場所へと向かう。テラパワーの社員をまとめているライナスに声をかけ、師匠とハーバートを探し出す。


「師匠、ハーバート」

「アイザック」


 師匠が返事してくれる。

 ハーバートは錬金術に集中しているようで、視線だけで挨拶してきた。

 錬金術を邪魔する気はないため、手を振って錬金術に集中するよう言う。


「アイザック、どうかしたか?」

「ベヒモスダンジョンの討伐が手詰まりで何かいい案はないかと聞きにきました」

「ダンジョンについては錬金術師より騎士の方が詳しい」

「騎士が手詰まりです。別の視点から何か案がないかと思いまして」


 両手を上げお手上げだと身振りで伝える。


「錬金術師としての知恵か……」


 師匠の眉間に皺がよる。

 急に聞かれても何か案が出るわけがないよな。


「アイザック様、一度ダンジョン内部に入ってみたいです」


 錬金術を終えたであろうハーバートが突拍子もないお願いをしてくる。


「ダンジョン内部にか? 錬金術師には危ないぞ?」

「知恵を出すにもダンジョンについて知りません。それに内部まで同行する予定ですから体験しておきたいです」

「内部に同行とはいえ、モンスターを討伐後の拠点化した階層だけの予定だがな」


 異例ではあるがテラパワーの社員をダンジョン内に入れる予定になっている。

 当初はダンジョンの外で待機だったが、戦車と大砲のメンテナンスのため同行すると決まった。騎士団関係者以外の集団がダンジョン内で活動するのは珍しいどころか初めての試みに近い。

 ケルヴィン国王陛下も迷っていたが、結局は同行を願われた。


「1層であれば装甲車の中から出なければ問題ないのでは?」

「気になったからかと外に出るなよ? ハーバートなら1層でも死ぬぞ」

「わかっております」


 ハーバートが真剣な表情で頷く。


「約束を守るなら許可が出ればダンジョンを案内してもいい」


 ハーバートが笑顔を浮かべる。

 ダンジョンに行けると笑顔を浮かべるのは変人だな……。


「師匠はどうします?」

「……行こう。サブリナのためにもハーバートを見張っておく」

「ああ……お願いします」


 確かにサブリナに悪い。

 忙しすぎてサブリナとハーバートの関係を聞いていない。


「アイク、まずはお父様にテラパワーの社員がダンジョン内を見学していいか聞くべきよ」

「そうだな。移動のために装甲車も欲しい」

「聞いてくるからダンジョンに入る人数を確認しておいて」

「わかった」


 クロエが来た道を戻っていく。

 ダンジョンの中では現在もモンスターを倒し続けている。装甲車で見学するだけなら許可は降りるだろう。

 師匠にダンジョンに入りたい人数の確認を頼む。

 待っている間、手持ち無沙汰になる。


「そういえばハーバートとサブリナは恋人ではないんだよな?」

「違いますね。私はテラパワーからバレットアームズに移らないかと誘われていました。要は引き抜きですね」

「ああ、ハーバートがライフル銃の開発責任者だったからか」

「元はジェームスが開発責任者で、私は途中から変わっただけですがね」


 ハーバートはテラパワーの社員としては最初期からいるといってもいい。

 師匠はライフル銃がある程度形になり、威力が微妙だとわかった時点で開発責任者から降りている。


「しかし、引き抜きがなぜ別れ際のキスに?」

「さあ?」


 ハーバートは首を捻っている。

 本当に理由がわかっていなさそうで心配になる。

 サブリナ、いいのかハーバートで……。


「アイク、お父様から許可が降りたわ。装甲車はとりあえず四台借りてきたから足りなければ足せばいいわ」

「ありがとう」


 クロエと同時に師匠も戻ってくる。

 同行したいという手の空いたテラパワーの社員は20人で装甲車に十分に乗る。

 俺、クロエ、パーシー、ライナスがそれぞれの装甲車に分かれて乗った上で、装甲車の護衛のため第二騎士団から人を借りる。

 準備に時間がかかったがダンジョンへと向かう。




 ダンジョン内は戦車による砲撃が続いており、音が反響してとてもうるさい。

 ホーンラビットを含めたダンジョンのモンスターが溢れている。


「ハーバート、どうだ?」

「聞いてはいましたが、戦車が役に立っているようで嬉しいです」

「ああ、戦車のおかげで楽ができている」


 砲弾もスカーレットドラゴン王国から輸送されているため、尽きる心配は今のところない。むしろ砲弾の数は増え続けている。


「アイザック、地面に生えている草が気になる。色がモンスターのコアに似ていないか?」


 ハーバートと話していると師匠が尋ねてくる。


「ええ、似ています。草は名前付きのダンジョンの身に生えているもので、普通のダンジョンには生えていません。下に行くと色が同じ木や石も生えています。それとコアに似た色であるため気持ち悪いですが、踏んでも爆発するような心配はありません」

「ほう……」

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