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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第82話 シープウィードへ

 列車砲をセレストドラゴン王国まで運ぼうとするわけだ……。

 普通の大砲ではベヒモスを倒せないどころか、傷すら与えられないだろう。列車砲でもベヒモスに傷を与えられるかは怪しいが、普通の大砲よりは傷を負わせられる可能性がある。


「セレストドラゴン王国の騎士であれば何体かのベヒモスを倒しているであろう。スカーレットドラゴン王国から向かっても、ダンジョン自体の討伐が終わっているかもしれない」


 確かにセレストドラゴン王国ならベヒモスであろうとダンジョンを討伐しているかもしれない。

 ルーファス国王陛下が続けて口を開く。


「セレストドラゴン王国の現在がどのような状況であれ、友好国の危機に援軍を出す必要がある。援軍を出す中で力になるのがテラパワーが作った大砲であると考えた」

「それほどまでに当社の作った大砲を評価していただきありがとうございます」


 俺は頭を下げる。

 スカーレットドラゴン王国はダンジョン討伐に使用する物の評価は命が関わっているため厳しい。ダンジョン関連で優先されるのは最上級の褒め言葉。


「騎士団が動ける状態で民間人を援軍として連れていくのは間違っている。しかし、テラパワーには無理を承知でセレストドラゴン王国に行ってもらいたい」


 俺だけであればすぐにでも頷く。

 しかし、テラパワーの社員についてとなると簡単には頷けない。テラパワーの社員は一般人で、ダンジョンで戦う騎士やギルド員とは違う。

 会社の代表として簡単には頷けない。


「テラパワーの皆と話をさせてもらえませんか」

「そうであるな……。余も焦りすぎていたようだ」


 ルーファス国王陛下は依頼という形ではなく、命令もできたはず。テラパワーの意向を尊重してくれている。

 期待に応えたいがまずは皆と話す必要がある。


「王都のテラパワーに向かいます」

「いや、フランクがテラパワーの社員に船への積み込み後の確認を要請している。タートルジェイドから帰ってきたテラパワーの社員を含めてシープウィードの港にいる」


 王都に残っていたフランク王太子殿下が先にテラパワーに要請したわけか。

 タートルジェイドからダンジョンの討伐状況は王都に報告されていたはずで、大砲や砲弾を運ぼうとするのは理解できる。

 まさかこんな事態になるとは想定していなかったが、サブリナに決裁権を渡しておいて正解だったか。


「シープウィードでテラパワーの社員と話す時間をいただけますか」

「用意させる」

「ありがとうございます」


 俺は頭を下げる。

 テラパワーについて話が一区切りついたところで、俺は個人的な質問を聞く。


「ルーファス国王陛下、クロエはどうしているのでしょうか?」


 今回はクロエと別行動。

 セレストドラゴン王国から来たカール殿下を含めた騎士の移動用に専用列車が用意されている。クロエもカール殿下と一緒に行動しているため、今どうしているのかわからない。


「セレストドラゴン王国から来たクロエ殿下とカール殿下にはすでに事情を伝えている。最優先でシープウィードに送っている」

「先にセレストドラゴン王国へ行きましたか」


 クロエがどうしているか心配であるが、このままずっと会えないわけではない。

 目的地は同じ、セレストドラゴン王国のダンジョン。先に行ったとしても追いつける。


「セレストドラゴン王国へすでに出発しているかはわからぬ。最優先で出航できるようには伝えてはあるが、列車と船が滞っている。本来なら今乗っている列車もすでに出発している予定であるが、まだ王都から出られていない」


 王都の駅が凄まじい喧騒なのは、セレストドラゴン王国向けに人や荷物を運ぶため列車が遅れているのか。

 列車砲が運ばれ、騎士団関係者が駅構内に多い理由が理解できた。

 港のあるシープウィードに向けては線路が複線になっているはずだが、大量の列車が移動しているため複線でも処理が間に合っていないのか。


「動いたか」


 ルーファス国王陛下の言う通り、列車が動き始めた。

 王都から近いシープウィードはそう時間がかからないはず。




 3時間ほどでシープウィードの駅らしき場所に到着したが通り過ぎる。

 列車は速度を落として、さらに進んでいく。街中を抜けていき、船の停泊している港中へと入っていく。シープウィードはスカーレットドラゴン王国最大の港なだけあって、線路まで特殊な作りになっているようだ。


 列車の中から見える線路は複雑。荷下ろしがしやすいようにだろうか、線路が船の近くまで行っている。

 列車砲を作る時にも使ったが、荷下ろしをするためのクレーンが港の中にはある。クレーンがあれば重たい荷物も船に乗せられる。


 列車が揺れ、船の前で止まる。

 船までの距離が近いため、複線に入って停車したのだろう。


「すぐにテラパワーの社員を呼び寄せるように指示を出す」

「よろしくお願いいたします」


 ルーファス国王陛下と話をしながら列車を降りる。

 窓から見えてはいたが、列車を降りると船が本当に近い。巨大な鉄でできた船には煙突がついており、エンジンが稼働すると蒸気を吐き出すだろう。

 船を見上げていると風が吹き、潮風の匂いがする。


 港は忙しそうに動き回る人で喧騒が広がっている。

 船に荷物を乗せている車やクレーン、今出港したであろう蒸気を上げる船、人を乗せた車が港の中を走り回る。

 アックスオッターの港ではここまで忙しそうに動き回ってはいなかった。


 ここまで大規模な港は初めてで周囲を見回していると、車が一台近づいてくる。

 車から降りてきたのはクロエ。


「クロエ? まだ出港していなかったのか」

「ええ」


 船が出港している様子があったため、クロエはすでにスカーレットドラゴン王国から出発しているかと思った。


「すぐにセレストドラゴン王国へ出発するんじゃ? ここに来てもいいのか?」

「出港までもう少しかかるわ」

「ルーファス国王陛下がクロエたちを優先すると言っていたが、まだ出港に時間がかかるのか?」


 船のエンジンは大きいため、稼働までに時間がかかるのか?


「船に荷物を積んでいるからもう少しかかるわ」

「荷物?」


 クロエの返事は俺の予想と違った。


「お兄様が乗ってきたセレストドラゴン王国の船には余裕があるの。私たちが急ぎ帰るのも重要だけれど、大砲や戦車を乗せて帰った方がダンジョン討伐の力になるわ」


 大砲と戦車を船に積み込んでいるのか。

 クロエが思ったよりも冷静だ。


「クロエはもっと焦っているかと思った」

「焦っているわよ。だけれど私たちが急ぎ帰っても国に残っている騎士の数に比べたら少ないわ。だったら少しでも力になるものを持って帰るの」

「そう考えが巡るだけ十分冷静だと思うがな」


 アックスオッターに名前付きのダンジョンができた時の俺に比べたらクロエは十分落ち着いている。


「私だけならセレストドラゴン王国に真っ直ぐ帰っていたかもしれないわ。お兄様やセレストドラゴン王国の騎士が考えだしたのよ」

「なるほど」


 俺がクロエやパーシーに助けられたように、人が増えれば視野が広がる。


「ところでクロエ、俺がこの場所にいるとよく気づいたな?」


 港はとても広い。

 人を探し出そうとしても居場所を知っていないと探すのは無理。


「船で作業していたテラパワーの社員にアイクが呼んでいると声がかかったのを聞いたの。アイクの場所を聞いたのよ」

「船に戦車や大砲を積み込んだ後、テラパワーの社員が壊れていないか確認しているか」

「その通りよ」


 というかテラパワーの社員よりクロエの方が先に来ている。

 確認の区切りがつくまでやっているのだろうか?

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