第69話 討伐方法
カール殿下との話に区切りがつくとルーファス国王陛下が話しかけてくる。
「アイザック、ダンジョンについて話をしよう」
「了解しました」
大きな机の前に移動する。
机の上には地図が広げられており、地図には周辺の地形が書き込まれている。
タートルジェイドは街から海が見えた通り、海面した立地のようだ。陸地から半島が笹の葉のような先細りの形で飛び出ている。
ルーファス国王陛下の後ろに控えていた騎士が指し棒を取り出す。
「バンブータイガー共和国は半島を国土としております。ダンジョンがあるのは半島の根本、タートルジェイドのすぐそこに1つ、半島の中部に2つ。バンブータイガー共和国の首都は半島の中部海側にあります」
タートルジェイドの近くにあるダンジョンも近いが、バンブータイガー共和国の中部にあるダンジョンが首都まで随分と近い。
「半島根元のダンジョンからモンスターが溢れた場合は、タートルジェイドとバンブータイガー共和国の街にモンスターが押し寄せます」
指し棒を見るに、地図でタートルジェイドの横にはバンブータイガー共和国の街があるようだ。国境周辺には若干陸地がえぐれている程度で川のような者は書き込まれていない。街同士が繋がってしまっているのか?
「また半島中部のダンジョンからモンスターが溢れ出た場合、バンブータイガー共和国の首都は壊滅的な損害を受けると予想されます」
やはりバンブータイガー共和国の首都は壊滅してしまうか。
ルーファス国王陛下が声を発する。
「バンブータイガー共和国の首都に関して今回は無視する。名前付きのダンジョンが増える場合、周囲にダンジョンの発生率が増える。いつかは討伐したいが、同時に3つのダンジョンを討伐するのは現実的ではない」
ルーファス国王陛下の判断は非道ではあるが、現実問題スカーレットドラゴン王国には名前付きのダンジョンを3つも討伐する余裕がない。
結局はスカーレットドラゴン王国がダンジョンを討伐する必要に迫られるのだろう。名前付きのダンジョンを発生させたバンブータイガー共和国の後始末をスカーレットドラゴン王国がするのもおかしい話だが、国が消えては仕方がない。
再び騎士が説明を再開する。
「目標ダンジョンからおよそ10キロメートル地点の線路を複線化し、列車砲を配置しております。ダンジョンから2キロ圏内に大砲を配置しております。戦車、ポンプ車はいつでも動けるように待機状態です」
全砲門がダンジョンを狙っているとはいえバンブータイガー共和国を向いている。大砲の意味を知っていれば恐怖だろう。
「今回のダンジョン討伐ではダンジョン内に注水する予定ですが、水が汲み取れる場所まで少々距離があります。水路を作るか、一度水を貯めダンジョンに経由する必要があります」
近くに大きめの湖がある。
湖から流れる川がバンブータイガー共和国の街中を流れている。バンブータイガー共和国の街は川を中心に発展したように見える。
「列車砲の実験により、砲弾の直撃で大きな穴を開けられるのがわかっております。列車砲の砲撃により大穴を開け、騎士の魔法でさらに穴を大きくする計画を立てております」
ダンジョンを水没させるのは一番下の階層だけで良いとはいえ、凄まじい量の水が必要になる。湖の大きさから水量が足りているのはわかっているのだろう。
あとは何日もかけて水を流し込む必要がある。
水を流し込んでいる間に水路を建設しても良いだろう。
「ダンジョンへの注水が失敗した場合はダンジョンを討伐しに騎士団が向かいます。騎士団が討伐に向かう場合、戦車と大砲をダンジョン内へと導入いたします。現在の作戦は以上となります」
聞いた限り作戦に問題はないように思える。
……今まで違和感なく聞いていたが、俺はなんでダンジョン討伐の作戦を聞いているんだ? 騎士団所属のため最終的には作戦を聞きはするが、なんでルーファス国王陛下と作戦を聞いている?
……なんで?
俺が混乱しているとルーファス国王陛下が俺を見ながら口を開いた。
「アイザック、ライナス。本来なら一般人であるテラパワーの社員を連れては行きたくない。しかし、まだ運用が安定していない大砲や戦車に協力が必要。騎士団にテラパワーの社員を守るようには伝えるが、絶対に安全とはいえない」
騎士団の人間としてではなく、テラパワーの人間として呼ばれていたのか。
作戦の内容を聞いた理由がわかった。
「テラパワーの社員には危険な場所だと伝えた上で、タートルジェイドへの志願者を募りました。今回のダンジョン討伐には覚悟を持って挑んでおります」
「勇気と覚悟に感謝する。アイザックを含めた第二騎士団はテラパワーの護衛へと回す」
「感謝いたします」
ルーファス国王陛下の配慮とテラパワー社員たちの献身に感謝する。
テラパワーの配置について話が終わると、部屋を退出する。
俺たちだけではなく、ベアトリクス様も一緒に部屋を出た。
「会わせたいものがいる。また移動する」
「了解しました」
再び車に乗ってタートルジェイドの中を移動する。
車が止まったのは見慣れた第二騎士団の面々が集まっている場所。戦車やポンプ車が集められており、騎士たちが車両を守るように配置されている。
「モンタギューはいるか?」
「はい」
ギルド員からの叩き上げの騎士モンタギュー。
牛人でありながら第二騎士団でも腕利の騎士。
「モンタギューはアイザックを知っているな?」
「もちろんです」
モンタギューは2メートル近い身長で、体は筋肉で出来上がっているような分厚さがある。
以前に会った時より存在感が増して大きくなった気がする。
「アイザック、デレクが剣に潰された時に近くにいたのはモンタギューだったようだ」
「自分は死にかけていたため、記憶にありませんがどうやら近くにいたようです」
デレクに関してか。
しかし、死にかけていては話す内容がなさそうだがな。
「モンタギューは死にかけた時に二度目の完全な獣化をした」
「二度目の獣化」
「ディランの獣化を見た者全員にモンタギューの獣化を見てもらっている」
モンタギュー卿に会いに来たのは獣化が目的だったのか。
「モンタギュー、すまないが獣化してもらえるか」
「ベアトリクス様、甲冑を脱いできても構いませんか?」
「ああ、もちろんだ」
モンタギューが甲冑を脱ぎに一度下がって行った。
「なぜ甲冑を脱ぐのです?」
「体が大きくなって甲冑が弾け飛ぶ。色々な工房に甲冑の特注を願い出ているようだが難しいようで断られている」
「他の工房で作れないとなると作れるかはわかりませんが、テラパワーで作れるか見てみますか?」
「頼めるか? モンタギューが十全に戦えるのであれば戦力の増強になる」
ベアトリクス様と話しているとモンタギュー卿が甲冑を脱いで薄着になった状態で出てくる。
「参ります」
モンタギュー卿の体が大きくなっていき、服が破れていく。
茶色でもかなり濃い色の体毛が生えてきて、バッファローのような見た目へと変わっていく。大きさはバッファロー並みではなく、身長が倍以上にも大きくなっている。
「大きい……装備作れないわけだ」
モンタギュー卿を見上げる。
圧倒的な存在感を発している。
「アイザック、モンタギューとディランを比べてどう思う?」
「モンタギュー卿の方が存在感を強く感じます」
「やはりそうか……ディランの獣化をみた皆が同じ感想を述べる」
年齢や鍛えているかによって強さは違う。
しかし、何か根本的に違う気がする。以前のディランを思い出す。
ディランは気配もなく突然隣に現れた。
「……ディランは獣化する以前は存在感がありませんでしたが、モンタギュー卿は獣化する前から存在感がありました」
「……そうだな。やはり普通の獣化とは何か違うのか」
具体的な答えは出ないが何か違和感を感じる。
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