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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第58話 デレクの祖父、ディラン

 デレクの祖父は不意打ちとはいえ騎士相手に逃げ切るほどの実力を隠し持っていたとは……。


「デレクの祖父が姿を変えましたが、あの姿はなんだったのでしょうか」


 獣化に似ているが完全に姿が変わるのは異質だった。


「少々違和感があったが、完全な獣化に見えた」

「完全な獣化?」

「獣化には段階がある。一段階目はアイザックや妾が変化している獣化。二段階目になると完全な獣の姿となり大きくなる。ただ二段階目の獣化を経験するものは滅多にいない」


 獣化に段階があったとは……。


「しかし、デレクの祖父は会社を経営する普通の市民だったはずです。なぜ戦えぬものが獣化を?」

「獣化するきっかけは戦いだけではないが……。非戦闘員で完全な獣化ができるとは聞いたためしがない」


 デレクの祖父は何者なんだ?

 ダンジョンの最奥まで生き残り、魔力がなくなり疲れ切っているとはいえ騎士相手に逃げ切る。ダンジョンの最奥に来るまでにデレクを連れて逃げられそうに思える。

 それに血に塗れたダンジョンの核に似た物を持っていた。


「ベアトリクス様、デレクの祖父が持っていた物は……」

「血に塗れたダンジョンの核に見えたな」

「はい」


 なぜダンジョンの核を持っていた?

 そもそも本物なのか?


「持ち物は事前に確認している。ダンジョンの核を持っているはずがない」

「つまりあれはダンジョンの中で手に入れたもの?」


 ベアトリクス様が頷く。


「ヘカトンケイルから取り出した物でないか確認する必要があるな」


 倒したヘカトンケイルは気に留めず、次のヘカトンケイルを倒しに向かった。気に留めていなかったのは俺だけではなく、全ての騎士が同様だと考えられる。

 誰かが倒したヘカトンケイルに近づいたとしても気にも留めない。


「それと地上に出てからデレクの祖父であるディラン・リスターがどこに行ったか調べなければならない」


 ああ、そうだデレクの祖父はディランという名前だった。

 ブラックウィングという貿易を中心とした会社を経営していた。会社の規模はアックスオッターでは大きいといえるが、スカーレットドラゴン王国全体で見るとそこまでの大きさではない。


「ディランはアックスオッターには戻らなさそうです」

「戻らぬであろうな。スカーレットドラゴン王国全体を探してでも見つけ出す」


 貿易会社を経営していたディランは各地に拠点を持っている可能性がある。国外にすら拠点があるのではないだろうか。

 それこそバンブータイガー共和国に拠点がありそうだ。

 デレクに知識を授けたのはディランの可能性が高い。


「ベアトリクス様、今回の騒動はディランが元凶だったのでしょうか」

「わからぬ。ダンジョンから出た後、今一度調べ直す必要がある」

「急ぎダンジョンを出る必要がありますか」

「急ぎ戻りたくはあるが、一部の騎士だけ返すのは危険すぎる。それにダンジョン内を片付けぬとダンジョン周辺が悲惨な状況になる」


 討伐後、ダンジョン内の物は全て排出されるため、片付けておかねばモンスターのコアが爆発するなど問題が起きる。

 今からディランを追いかけたとしても追いつける可能性はなく、ダンジョンを片付けるのを優先した方がいい。

 ベアトリクス様が68層にいる騎士を捕まえる。


「ダンジョンの討伐は成功した。片付け——」

「ダンジョンが討伐された! うおおおおお!」


 68層の騎士にダンジョンの討伐を伝えると、ベアトリクス様の発言を遮って騎士たちが騒ぎ出した。

 ベアトリクス様は苦笑している。

 騒ぐ騎士の気持ちはわかるが……。


「アイザック、69層に戻るぞ」

「よろしいのですか?」

「妾には止められん。喜び終われば片付けに来る」


 騎士たちは伝播するように喜びの雄叫びをあげており、一人二人に声をかけたところで意味はなさそうだ。

 ベアトリクス様が69層に向かって歩いていく。俺も69層に戻る。




 早くダンジョンを出たいがヘカトンケイルを片付けるのに想像以上に難航する。

 改めて大きさを確認すると、通常のヘカトンケイルが7メートルほど、ダンジョンボスのヘカトンケイルが15メートルほど。しかも腕が12本ある。

 ヘカトンケイルだけでなく、ヘカトンケイルが持っていた剣の大きさも凄まじい。

 15メートルのヘカトンケイルは特大の物が運べる特殊な鞄でも入れるのは難しい。ある程度解体してから鞄に収納するしかない。


「ダンジョンボスのヘカトンケイルは21体か」

「元々の核1個と与えた核20個を足した21と同じとはね」

「重ね重ね、なぜそんなに核をダンジョンに与えたのか理解に苦しむ……」

「うん、理解できないよ」


 そもそも核を与えなければダンジョンが深層にならなかったが、それでも与えた核の数が少なければもっと楽にダンジョンを討伐できた可能性が高い。

 ダンジョンに核を与える決定をしたデレクは死に、ディランは逃亡した。俺はどこに向ければいいのかわからない怒りをヘカトンケイルに向ける。


「ふん」


 バトルアックスをヘカトンケイルの腕に振り下ろす。

 以前は鉄のように固く、刃が全く入らなかったヘカトンケイルの体はすんなりと切り落とせる。モンスターは死ねば柔らかくなる。

 切り落とした腕をクロエとパーシーが片付けていく。


「肉には困らなそうだね」

「鉄にもな」


 ダンジョンのモンスターが持っている武器は屑鉄として再利用される。

 貴重な金属が使われている場合もあるが、今回はどうだろうか。流石に見ただけではどのような金属かまではわからない。ただヘカトンケイルが振り回しても曲がっていないところを見るに普通の金属ではなさそう。


 会話をしながらも、血と脂に塗れて解体作業を続ける。

 全ての解体が終わり、片付けられるまで半日はかかった。


 片付けが終わるとベアトリクス様が近づいてきた。


「アイザック、集められたダンジョンの核は20個しかなかった」

「1個足りませんか。やはりディランが持っていた核らしきものは本物の核でしたか」

「そのようだ」


 ダンジョンの核には使い道がない。

 正確にはダンジョンに与える使い道以外は、だが。


「なぜわざわざダンジョンの核を回収していたのでしょうか。ディランにもダンジョンに核を与えた場合どうなるかは分かったはずです」

「妾にもなんのために核を回収していたのかはわからない。ダンジョンを出てから調べるしかあるまい」


 何に使うか想像もできないが、ディランが手間をかけてまで核を回収した意味はあるのだろう。

 ダンジョンに核を与えるような、碌でもない使い方でなければいいのだが……。


「急ぎダンジョンを出る必要があります」

「片付けも終わった。ダンジョンを出るとしよう」


 ベアトリクス様から撤収が宣言される。

 ダンジョン内にモンスターが残っていないか確認しながらダンジョンを出る。




 2日がかりでダンジョンから出てくる。

 疲れているのもあって休まず進むのは無理。それでも10日かかったところを休みながらも2日でダンジョンから出れた。


「諸君、ダンジョンは討伐された!」


 ヘカトンケイルの2メートルはある巨大な頭が置かれ、頭の前にベアトリクス様が立つ。


「核を与えられたダンジョンの討伐は犠牲なしには成し遂げられなかった。ダンジョンからアックスオッターを解放した戦士たちよ、共に戦った友に祈りを捧げようではないか」


 核を与えられたダンジョンは名前付きのダンジョンと同等。

 通常より強いモンスター相手に犠牲者なしにダンジョンを討伐するのは無理だった。何よりダンジョンボス21体というのは多すぎた。


「勇士よ安らかに眠れ」


 心からの感謝と謝罪をアックスオッターを守ってくれた勇士に捧げる。

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