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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第57話 デレク

 地面に倒れ込み、ダンジョンの天井を眺める。

 ああ、アックスオッターはこれで消滅する心配はない。

 転生して生まれ育った屋敷。水の都と呼ばれ、色とりどりの建物が並ぶ街並み。アックスオッターを守り通せた。


「アイク」


 クロエが屈んで俺に手を差し伸べてくる。

 手を掴み起き上がる。


「ありがとう」


 どれほど倒れ込んでいたのか時間の感覚がない。

 いまだに現実ではないようで浮ついて足が地についていないかのような感覚。

 だがとても満足感がある。


「アイク、アックスオッターを守れたわね」

「ああ」


 クロエが俺に笑いかける。

 俺も笑い返す。


「おーい」


 パーシーが駆け寄ってくる。


「良かった。無事だった」

「すまない、心配かけたか」

「クロエに抱えられているのは見たから心配はしていなかったけど、怪我がなさそうで良かった」


 今更ながらに怪我を確認する。

 ダンジョンが討伐できた興奮で、多少の怪我では痛みを感じなさそうだ。

 しっかりと体を見回すが怪我はない。


「怪我はない」

「良かった。僕は腕に乗るのに失敗して下から眺めるしかできなかったよ」

「俺も最後の最後にうまくいかなかった。ベアトリクス様がいなければ失敗していた」


 俺とベアトリクス様だけではなく、何人かの騎士が腕を駆け上がろうと試していた。しかし、うまく行ったのは俺とベアトリクス様だけだったようだ。


「誰かがヘカトンケイルを倒せば成功だよ」

「その通りだ」


 パーシーと話しているとベアトリクス様が近づいてくる。


「アイザック、悪いが少し付き合ってもらう」

「何にでしょうか?」

「デレクたちが生きているか見にいく必要がある」

「まだ生きていたのですか」


 デレクはすでに死んでいると思っていた。

 まさか生きているとは思わず驚く。

 ろくに戦闘ができない人がダンジョンに入って生きていられるほどダンジョンは甘くない。


「ダンジョンの形が特殊だったが故、後ろからモンスターが出てくるなどなかっため多くが生き残っている」


 普通のダンジョンでは通路と部屋の組み合わせで迷路のようになっている。下の層に続く、当たりの道を引いた場合は他の場所にいるモンスターは倒さない。

 通らなかった通路と部屋のモンスターを無視すると、倒さなかったモンスターが徘徊して通路から出てくる時がある。騎士であれば当然モンスターが出てくるのを知っていため対処できるが、デレクたちはモンスターがでてくると知っていたとしてもモンスターに勝てない。

 通常であれば最奥まで戦えないものが生き残る可能性はないに等しいが、核を与えたダンジョンは通路のないダンジョンであるがために生き残ったようだ。


「全員が生き残っているのですか?」

「いや、深層の攻略になってからは目標を逸れた魔法が当たるなどして犠牲があった」

「それでもデレクは生き残ったと」

「そうだ」


 ベアトリクス様が頷く。

 悪運が強い。

 正直思うところがありすぎてデレクにはもう会いたくはない。もしもいまだに反省を一切していないければ法が裁く前に殴り殺してしまいそうだ。

 しかし、アックスオッター家唯一の生き残りとしては会わないわけにもいかない。


「デレクはどこに?」

「69層の入り口近くにいる」


 ベアトリクス様は歩き始める。

 黙って俺はベアトリクス様の後をおう。


 入り口近くには固まるように震えている者たちがいた。10人ほどいた人数が3人にまで減っている。半分以下。少ないが戦闘できないものが3人も生き残ったともいえる。

 3人がうずくまっている近くは巨大な剣が転がっている。

 近くには普通のヘカトンケイルが倒れており、どうやら69層の入り口近くまでヘカトンケイルの攻撃があったのがわかる。


「デレクは?」


 3人の中にデレクが含まれていない。

 ベアトリクス様が尋ねると、震えていた者たちは剣が転がっている場所を指差す。

 鉄骨のような剣の元に行くと、デレクが剣の下敷きになっている。

 胸から下の下半身が剣の下にある。


「なんで、なんで……」


 デレクはまだ息があるようだが、口から血を流している。


「デレクよ、最後の最後で運がない」

「私は間違っていない……」


 デレクはベアトリクス様への返事ではなくうわ言を呟く。

 デレクの瞳は焦点があっていない。

 もう全ての感覚がなくなっていそうだ。


 ベアトリクス様が鉄骨のような剣に手をかけたため、俺も剣を動かすのを手伝う。鉄骨のような重量級の剣であろうと俺とベアトリクス様なら動かせる。

 剣を持ち上げ、デレクの上から退ける。

 下敷きになっていたデレクの半身は剣で潰されていた。

 仮に全力で魔力を使って回復しても生き残るのは難しそうな傷。


「お祖父様……」


 父と兄を殺したデレクが最後に縋るのが家族である祖父とは……。

 デレクに誰かを思う心があったか。

 怒りと哀れさと悲しみが合わさり感情が滅茶苦茶になる。


「おお、デレク。なんという……」


 いつの間にかデレクの祖父が近くにいた。

 おかしい、先程まで確かにいなかった。

 生き残った3人の中に高齢で白髪の人物はおらず、見間違えるはずがない。

 どこから現れた?


「お祖父様」


 デレクが小さく呟く。


「今助けてやるからな」


 デレクの祖父が持っているものはなんだ?

 血に塗れているが、まるでダンジョンの核のように見える。


「何をするつもりだ」


 あまりにも異質なデレクの祖父に腕を伸ばす。

 デレクの祖父は老人とは思えぬ身のこなしで滑るように動き、手の届く範囲から出てしまう。ダンジョンの核に見えるものを大きく口を開けて咥え、俺を嘲るように腕を広げる。

 服を破って白い羽根が生えてくる。


「なんだ!?」


 巨大化しているのか服が全て破れていく。

 デレクの祖父が巨大な白いコウモリに変わる。

 巨大なコウモリとなったデレクの祖父は羽ばたき、死にかけのデレクを足で掴むと飛び上がる。

 攻撃してでも止めようとしたところでコウモリが口を大きくひらく。


「キシャアアア」


 コウモリが叫びを上げると、高音で頭が痛くなる。

 鼓膜が破れそうな声に、耳を塞いで耐えるしかない。

 何も手出しをできないうちにコウモリは69層の入り口へと飛び去ってしまう。

 頭がくらくらして気持ちが悪い。


「逃すか」


 ベアトリクス様が声をあげる。

 俺は動こうとするが一歩足を踏み出したところで膝をついてしまう。

 体の感覚が狂ってしまったようで動けないうえに、吐き気までしてきてえずく。




 吐き気が治って立ち上がれるようになった時にはコウモリの姿はない。

 周りを見回すと先ほどの俺同様に皆がうずくまってえずいている。


「逃げられたか」


 ベアトリクス様が立ち上がりながら声を出す。俺と同じように気持ち悪かったのだろう、ベアトリクス様の顔が青白い。


「はい。68層の騎士が止めているでしょうか……」

「望みは薄い。飛んでいるのを咄嗟に止められるとは思えない」


 ダンジョンが成長しきっていない場合、下からくるのをあまり警戒しない。69層から飛び出してきたデレクとデレクの祖父を止められないか……。


「確認には?」

「無論、向かう。しかし、まだまっすぐ歩ける気がしない」

「自分も動けません」


 立ち上がれはしたがまだ目眩が残っている。

 まだうずくまっているものも多く、症状は個人差があるようだ。


 時間をかけて回復し、なんとか動けるようになったものでのろのろと68層に向かう。

 なんとかたどり着いた68層。


 68層にいた騎士に大きな白いコウモリを捕まえたかと尋ねる。

 やはり捕まえられてはおらず、上の層へと逃げていったという。


「やはり逃げられたか。ダンジョンの入り口には騎士がいない、抜けられる可能性が高いな」


 ベアトリクス様がため息をつく。

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