第52話 奇形のモンスター
33層。
騎士の消耗が激しく戦闘に参加する。
33層のモンスターは腕が4本ある3メートルほどのオーガ。核を与えたダンジョンは巨大化するか奇形になるのが傾向として多いようだ。
「獣化する」
俺の場合は獣化したほうが魔力の節約になる。
魔力を血のように循環させると、甲冑の下で見えてはいないが皮膚に鱗が生え、背中から尻尾が生えてくる。
「行くわよ」
「ああ」
俺の獣化が終わるとクロエが孤立しているオーガに突撃する。
クロエは走る勢いのまま、殴りかかってくるオーガの腕に乗る。腕の上で大剣を振ると、オーガの首が飛ぶ。
クロエは身体強化を強めにしているためか一撃でオーガを倒せている。
「背が高くてやりにくいわね」
「胴をないだらどうだ?」
「余分に魔力を使いたくはないのだけど仕方がないかしら」
クロエは大剣を使っているため力押しに見えるが、力だけではなく効率を考えて攻撃している。
「二人とも喋っていないで倒す」
パーシーが喋りながらもメイスをオーガの脛に叩きつけ、オーガが膝をついたところで胸にメイスを叩きつける。
力押しなのはパーシーの方だったりする。
殴られて凹んだオーガの胸が膨らむ。
「うわ!」
パーシーが叫び声をあげ、飛び退いてオーガから距離を取る。
慌ててパーシーとオーガの間に入ろうとするが間に合わない。
オーガが爆発する。
「パーシー、大丈夫か?」
爆発によってオーガの上半身が消えてなくなる。
オーガの体内にあるコアが破裂したようだ。
コアは5センチほどで大きくはないため、コアが攻撃で壊れるのは珍しい。
「身体強化しているから怪我はないよ。だけど運が悪いな」
コアの爆発は凄まじいが何百と集めなければ問題ない。
「確かに運は悪いが、爆発させている人が多いように思えるな」
今更だが今までの移動中にも定期的に爆発音を聞いている。
爆発するような武器を使う騎士はおらず、爆発するような物はモンスターのコアしかない。
「普通とはモンスターの構造が違う?」
「かも知れないな」
今回は解体などを手伝っていないため、モンスターの構造を知らない。
そういえばデレクがダンジョンに核を与えるほどモンスターのコアが増えると言っていた気がする。
……モンスターの体内にあるコアは一つではない?
「パーシー、モンスターのコアは一つではないかも知れない」
「コアが一つじゃない?」
「もしモンスターの体内に幾つもコアがあれば当たる可能性は上がる」
「なるほど。あとで解体して確かめてみよう」
「そうだな」
パーシーと話している間にもオーガは襲いかかってくる。
バトルアックスでオーガを両断する。
「確かめるのは後にして今は倒そう」
「ああ」
オーガを倒すため動き出す。
孤立したオーガではなく、固まっているオーガの元に向かう。
こちらに気づいていないオーガの胴を薙いで両断する。
両断したオーガとは別のオーガが拳を振り下ろすように殴りかかってきたため、盾を掲げて受け止める。
前屈みになったオーガの頭にパーシーのメイスが振り下ろされる。
頭部を破壊されたオーガは力を失う。
バトルアックスでオーガを倒しながら、さらに奥へと進む。
周囲をオーガで囲まれる。
バトルアックスで攻撃しながら尻尾を思いっきり振り回し、オーガの足を取る。バトルアックスに注意していたためか、オーガたちは簡単に転ぶ。
「クロエ、背を低くしたぞ」
「いいわね」
尻餅をついているオーガや膝をついているオーガの首をクロエが跳ね飛ばす。
完全に転んでいるオーガの頭はパーシーがメイスで潰していく。
「この調子で行くか」
「そうしましょう」
オーガが固まっている場所に入り込み、バトルアックスで斬りながら尻尾で転ばせる。転んだオーガはクロエとパーシーが処理していく。
魔力の消費も少なく、効率的にオーガを倒せる。
「四足歩行だと転ばすのは難しいが、二足歩行であれば簡単に転ばせる」
「尻尾、意外に便利そうね」
「体の均衡をとるのにも使える」
「少し欲しくなったわ」
オーガを効率的に倒せるようになると余裕が出てくる。
4本の腕があるオーガはジャイアントラビットよりは当然強いが、身体強化を強めにしているのもあって思ったよりは楽に倒せている。
それに俺たち以上に早い速度でオーガを倒している人が多くいるのも楽な要因の一つ。強い騎士は低層で戦っているのかと思わせるような勢いでオーガを倒している。
オーガがすごい勢いで減っているため、圧力を感じずに倒せている。
33層から40層まで突き進む。
一つの大隊で平均5層程度進んでいたため、7層も進むとは思ってもいなかった。40層にまで到達したところで、最初に戦った大隊が戻ってくる。
俺たちは地上に戻らないと決まり、40層のモンスターを全て倒す。
「ダンジョンが明るすぎて時間感覚が狂っているが、討伐が始まってから丸一日以上経っているのか」
「寝て起きたら3日目じゃないかな」
動き回っていたため気づかなかったが、1日起きていたようだ。
食事は携行食しか食べていないため、運動量からして何か食べないとまずい。
「さっさと寝たいが寝る前に食事か」
「食事は今準備しているだろうから、モンスターの解体を見に行こうよ。コアが複数あるのかみたい」
「そうだな」
ダンジョンは肉に関しては困らない。
なぜならモンスターを解体すれば大量の肉が手に入るから。
携行食を大量に持ち運ぶより、モンスターを食べた方が手っ取り早い。ダンジョン討伐が行われると、絶対にどこかで解体作業が行われている。
モンスターを解体している場所を見つけ出し、解体作業を手伝いながらモンスターについて尋ねる。
「やはりモンスターのコアが多いみたいだね」
「パーシーがコアを爆発させたのもコアの数が多かったからか」
「数が増えても運が悪いのもあるとは思うけど、コアを壊す可能性は上がっているかな」
聞いたところモンスターのコアは2個から3個あるらしい。
コアの数がモンスターの強さにどう影響しているのかはわからないが、エネルギーの塊であるコアが増えれば強化されるのは予想ができる。
巨大化したり奇形になっているのもエネルギーの多さから来ているかも知れない。
魔石のためにコアを増やしてモンスターを強化するとは愚かすぎる。
モンスターの解体を手伝った後は食事をとる。
時間感覚がないため何の食事か曖昧だが、この後寝るので夕飯を食べている気分。
「アイザック」
「ベアトリクス様?」
食事を食べているとベアトリクス様がやってきた。
ベアトリクス様は獣化しているようで、緋色の鱗が首元と顔の一部に存在する。
「まだ獣化を解いていないな」
そういえば獣化を解くのを忘れていた。
「はい、解いてません」
「獣化を解かずに十分に休めるのであればそのまま休むといい」
「以前に休めたので、休めると思いますが……」
バンパイアとの戦いで大怪我を負った時は寝るのに尻尾が少し邪魔な程度で、1日獣化したままだったが十分に休めた。
「獣化の維持にはほぼ魔力を使わないが、獣化するのには魔力を多く使う。獣化したままでは休めない者もいるが、魔力の回復が問題ないならば獣化したままでいるといい」
確かに毎回獣化を解いて魔力を無駄にする必要はない。
「以前はそこまで気が回りませんでしたが、魔力は回復していたと思います」
「ならば獣化したまま休むといい」
「分かりました」
ベアトリクス様の用事は獣化についてだけだったようで、足早に去っていった。
忙しい中わざわざ伝えにきてくれたようだ。
食事をとった後はベアトリクス様の忠告通りに獣化したまま寝る。やはり尻尾が少々邪魔であるが、位置を調整すれば問題ない。
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