第49話 ジャイアントラビットとデレク
ジャイアントラビットの機動力をどう落とすか。
巨大な後ろ足に攻撃があたれば機動力が落ちるのは予想ができる。しかし、後ろ足に攻撃を当てられるのであれば、首を落とすのも不可能ではないのが問題。
近づくのが難しいなら、遠距離での攻撃で後ろ足を使えなくする。
普通ならばライフル銃で十分だが、核を与えたダンジョンのジャイアントラビットはどう考えても弾薬の口径が小さいライフル銃では効果がなさそう。口径の大きい弾薬を使うガトリングを取り出す。
ガトリングでも威力が弱い可能性もあるが撃ってみる。
「ガトリングは致命傷には至らないが、機動力は削れるか」
「そのようね」
急所にまで銃弾が貫通しないのだろう。
それでも後ろ足にあたれば明らかに動きが悪くなる。動きが悪くなれば騎士の敵ではない。
倒し方が分かれば騎士たちの対応能力は早い。
ガトリングを使ってジャイアントラビットの後ろ足を集中して狙う。
交代しながら一日中ジャイアントラビットが狩られる。
いつ終わるかもわからない討伐を繰り返していると、徐々に数が減ってきた。
「ようやくモンスターの復活速度が他のダンジョンとからわなくなってきたか?」
「まだまばらに復活するようだけれど、長かったわね」
「一斉に変化しないか」
3日間でどれだけのジャイアントラビットを倒しただろうか。
昼も夜も関係なく討伐を続けており、合計すれば凄まじい数なのは想像できる。
「本格的な討伐は明日からでしょうね」
「今日は魔力も魔力を無駄遣いしないように動くか」
「そうね」
ジャイアントラビットが減ってからは倒す範囲が増え、徐々にダンジョンの内部がわかるようになってくる。
戦う場所を広げた騎士が大声で地面に窪みがあると注意を促す。
「罠があるのか」
「草に隠れた窪みはいやらしいわね」
「致命的な罠ではないが、戦いながら踏み抜けば危険だな」
「奥に行くほど罠が凶悪になる可能性もあるわ」
普通のダンジョンでも討伐は大変だというのに、核を与えたダンジョンは地形までも脅威となる。
足元に注意をしながらジャイアントラビットを倒し続ける。
「アイザック」
ジャイアントラビットを倒していると、ベアトリクス様が近づいてきた。
「ベアトリクス様?」
「少し付き合え」
指示通りにベアトリクス様の後ろをついていく。
歩いて行った先にはデレクと10人ほどの人。
「集めたのはデレクを含めたダンジョンに核を与えた者たち。特に悪質だと判断された者たちに自分が何をしたのか直接見せる」
アックスオッターを危機に陥れた許されざる者たちか……。
誰かが止めていれば、最悪の状況は避けられたはず。
ベアトリクス様が銃を持ってデレクの前に立つ。
「デレク、モンスターを倒してもらおうか」
「私はやらない」
「ならばモンスターに食われるといい」
無慈悲なベアトリクス様の宣言にデレクの顔が白くなる。
「ふ、ふざけるな!」
ベアトリクス様はデレクの叫びなど無視して無理やり銃を持たせる。
「銃をこちらに向けてみよ。銃すらなしにモンスターの前に対峙させてやろう」
ベアトリクス様が銃を持たせたデレクを無理やり前に進める。
ジャイアントラビットの前にデレクが押し出された。
デレクに気づいたジャイアントラビットが頭をデレクの方へ向け口を開ける。肉食獣のような鋭い牙が生えた口は凶悪で、噛まれればかすり傷では済まないのがみただけでわかる。
「ああああ!」
デレクがライフル銃を撃つ。
戦闘の意思を示したというよりも、恐怖で咄嗟に撃ってしまったといったところだろうか。出鱈目に撃ったように見えたが、運よく銃弾はジャイアントラビットに向かって飛んでいく。
牛ほどもあるジャイアントラビットは適当に撃っても当たるようだ。
しかし、小さな銃弾が当たったところで意味はない。血すら出さずにジャイアントラビットの白い毛皮に弾かれる。
「シャアアァ!」
銃弾が当たったジャイアントラビットは怒ったように叫ぶ。
毛皮で縦断を弾いているため痛みはないだろうに怒るのか。いや、攻撃されたのが気に食わなかったのだろうか?
ジャイアントラビットは後ろ足に力を入れるように、体を縮ませて後退する。後退状態からバネが弾けるように勢いよく飛び出し、一瞬でデレクの前に到達する。
「うああああ」
デレクは銃を放り出して横に転げる。
みっともない逃げ方であるが、ジャイアントラビットは飛び上がって移動しているため、偶然にもジャイアントラビットの下を通り抜ける。
ジャイアントラビットが着地して振り返ろうとする。
一瞬の間を逃さずにガトリングが後ろ足に打ち込まれる。
「生き残ったか、運がいいな」
ベアトリクス様の声音には喜びはない。
ガトリングを撃ったのはベアトリクス様の近くにいる騎士。
最初から撃つのは決まっていたのだろう。
「ジャイアントラビットはまだ死んでおらんぞ」
ベアトリクス様が忠告するとデレクは這いずるように逃げ出す。唯一の武器である銃を拾う気もないようだ。
逃げてくる方向は俺たちがいる場所。
「助けろ!」
「十分に助けた。手負いににしてやったではないか」
デレクが騎士の持つガトリングを見る。
「その銃をよこせ!」
「渡してやれ」
ベアトリクス様が拒否せずに許可を。騎士がガトリングを地面に置く。
デレクが飛びつくようにガトリングに近づき、ガトリングを持とうとするが微動だにしない。
「ふざけるな、なんだこれは!」
鍛えていないデレクでは100キロ近いガトリングを持ち上げられないようだ。
ベアトリクス様がガトリングの使用許可を出した理由が分かった。デレクにはガトリングが持てないと分かっていたのだろう。
「ジャイアントラビットがくるぞ」
後ろ足を打たれたとはいえ、動きが遅くなっただけでジャイアントラビットはまだ健在。
俺は巻き込まれないよう距離を取る。
「ああああ」
デレクの魔力が活性化。ほぼ全ての魔力を使うような身体強化がされる。
全力の身体強化によってガトリングが持ち上がる。
しかし、デレクの善戦はガトリングを持ち上げたところで終わり。
ジャイアントラビットによってデレクはガトリングごと弾き飛ばされる。
デレクがボールのように地面を弾んでいく。
「ガトリングを撃てすらしないか。ジャイアントラビットを始末せよ」
手負いのジャイアントラビットは騎士によって切り捨てられる。
動きの遅くなったジャイアントラビットなど敵ではない。
「なぜ私がこんな目に遭わねばならん」
ボロボロになったデレクが立ち上がる。
全力で身体強化していたためか生き残ったようだ。
「まだ元気そうであるな。もう少しジャイアントラビットと戦わせればよかったか」
「ふざけるな」
デレクがベアトリクス様を睨む。
「ふざけてなどおらぬ。ダンジョンで一番弱いジャイアントラビット程度も倒せぬとはな」
「ダンジョンの核を与えればいい」
まだダンジョンに核を与えればいいというのか!
思わず前に出そうになり、パーシーとクロエに止められる。
「ダンジョンの核を与え続けるといつか効果がなくなる。そして核を一度でも与えたダンジョンは通常のダンジョンよりもモンスターが強くなる。ジャイアントラビットは其方が使った銃でも倒せる相手、今はガトリングでも倒せぬ」
本来なら1層のモンスターは騎士でないギルドでも倒せる相手。
それが今は騎士が苦戦するほどの強さにまでなってしまった。
「バンブータイガー共和国ではダンジョンの管理に成功している」
「今は成功しているだけであろうな。魔石などのために国を滅ぼすとは度し難い」
「滅びてなどいない。スカーレットドラゴン王国はダンジョンを恨み、そう思いたいだけだ」
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