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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第48話 変貌したダンジョン

 不気味なダンジョンの入り口から内部に入る。

 ダンジョン内部は普通と違う。

 いつもは薄暗い通路から始まるダンジョンが、最初から大きな部屋があり部屋の中が明るい。地面には草らしきものまで生えている。


 明るい空間にはジャイアントラビットらしきモンスターが動かずに止まっている。ジャイアントラビットは通常大型犬ほどの大きさだが、牛ほどの大きさがある。

 通常の倍近い大きさにまでなったジャイアントラビットが数千羽はいる。


「ダンジョンに核を与えているのは間違いないか……」


 いつもとは異なるダンジョンの様子から核を与えているのが間違いないのはわかる。しかし……。


「なぜ、ジャイアントラビットは動かないのですか?」

「ダンジョンの核を与えて一定期間はモンスターが動かなくなる。動かないだけではなく、体の強化もしていないのか倒すのも比較的楽らしい」


 倒すのが楽?


「試してみても?」

「構わない」


 盾を構えて慎重にジャイアントラビットに近づいていく。至近距離になってもジャイアントラビットは動く様子を見せない。ジャイアントラビットにバトルアックスを振り下ろすと、抵抗なくバトルアックスはジャイアントラビットの頭を落とす。

 拍子抜けするほどに弱い。


「通常のジャイアントラビットより弱い」

「文献通りか。ジャイアントラビットを排除せよ」


 騎士たちがジャイアントラビットを倒し始める。

 身体強化もなしに次々に倒していく。

 ダンジョン内は死を覚悟するような状況だと思っていたが、覚悟していた状況とは違う。


「このままジャイアントラビットは動かないのですか?」

「いや、ダンジョンの核を与えた一定期間だけ動かない。核の効果が切れれば動き出す」


 動かないままなどという都合のいい話はないか。


「モンスターが動かないのであれば、無視して進んでは?」

「無視してダンジョンの核を持ったボスを倒そうとしたそうだ。結果は全滅だったようだ」


 全滅……。


「何が起きたのです?」

「文献通りであれば、倒し続ければ復活するのが見られる」


 復活とはどう言う意味かとジャイアントラビットが倒されるのをみていると、ダンジョンの地面から黒い霧が出てきた。近くにいた騎士は飛び退いて剣を構える。

 黒い霧は徐々に塊になっていき、塊がジャイアントラビットになる。


「……ジャイアントラビットが生まれた?」

「通常一ヶ月は復活しないモンスターが数分で復活する。奥に行けば行くほど復活速度は速くなるようだ」


 モンスターが数分で復活する?


「モンスターを倒しても数が減らないと?」

「そうらしい。しかも一定以上モンスターを倒すと動き出すが、復活速度はしばらく変わらない」


 倒しても倒してもモンスターが復活する。

 ジャイアントラビットならまだしも、強いモンスターが倒してすぐに復活してくるのは悪夢でしかない。


「ジャイアントラビットの復活速度が落ちるまで倒し続けるのですか?」

「そうなる。短期間で核を20個も与えた状態ではどれほど倒せばいいかわからないな」


 ジャイアントラビットは今も倒され続けているが、一向に動く様子は見せない。

 1層で動かないジャイアントラビットをひたすら倒し続ける。




 どれほどジャイアントラビットを倒しただろうか。

 途中から交代で倒すようになったが、ジャイアントラビットは丸2日倒し続けても動きがない。

 1日経つと他の騎士団が集まり始めて余裕が出てきた。


「アイク、あまり思い詰めないのよ」

「思い詰める? そんなつもりはないが……」


 交代で食事を食べているとクロエに注意される。


「いえ、普段と違って適度に休めていないわ。肝心な時に動けなくなるわよ」


 そんなつもりはないと言い返そうとして、休みなく必死にジャイアントラビットを倒していたのを思い出す。相手は動かないジャイアントラビットとはいえ、倒し続けていれば疲れる。

 普段ならばもう少し体力の温存に気を配っていたはず。


「確かに動きすぎか」

「故郷の危機に焦らないのは無理なのはわかるけれど、それでも私とパーシーを頼りなさい」

「分かった」


 クロエの忠告に頷く。


『ジャイアントラビットが動き出した!』


 ダンジョンの前から叫び声が響く。

 思わず立ちあがろうとしたところでクロエに捕まれる。


「まだ動き出しただけ。私たちの交代までまだ時間があるわ」

「ああ……」


 座っていた椅子に再び腰をかける。


「もう一度言うわよ。私とパーシーを頼りなさい」

「分かった」


 完全に焦っていると自覚した。

 焦った状態でダンジョンに挑めば死ぬ。俺の焦りによってクロエとパーシーに迷惑をかけてしまう。

 ダンジョンの討伐が本格的に始まるまで意識して休んだほうが良さそうだ。


 残っていた食事を全て食べ終え、ゆっくりと仮眠をとって休む。

 数時間すると意識して休んだおかげだろうか、気分が多少落ち着いたように思える。


「少しは顔色が良くなったわね」


 どうやら顔色まで悪かったようだ。

 自分の体調すらわかっていないのでは焦りを完全に無くすのは無理そうだ。


「クロエ、危ないと思ったら止めてくれ」

「任せなさい」


 自分で管理できない場合は友を頼る。




 再びのダンジョン。

 跳ねるように動き回るジャイアントラビットが騎士を襲っている。

 普通のジャイアントラビットであればそう強くないため、騎士ならば苦労せずに倒せる。しかし、核を与えられたダンジョンのジャイアントラビットはそうはいかないようで、騎士たちは身体強化までして倒している。

 騎士の倒し方からしてジャイアントラビットの強さが違う。

 ただ大きいだけではないようだ。


「アイク、魔力を節約するわよ」

「ああ」


 ジャイアントラビットを急ぎ倒そうとしない。

 自分に言い聞かせる。


 魔力は休めば回復するが、回復量が一定ではない。

 疲れれば魔力の回復は遅くなり、睡眠量が不足しても回復量が減る。

 今のような緊張状態では魔力の回復量がいいとはいえず、魔力の無駄遣いは極力避ける。


「一羽ずつ丁寧に倒すわ」

「わかった」


 今まさに復活したジャイアントラビットにバトルアックスを叩きつける。

 不意打ちをしたつもりであるが、ジャイアントラビットは素早い動きで避ける。

 大きさに見合わず動きが素早い。

 ジャイアントラビットが避けた状態からターンして戻ってくる。


 ジャイアントラビットが速度を上げたまま俺に突っ込んでくる。

 速度は速いが、直線的に突っ込んできている。

 盾をジャイアントラビットがくる方向に構える。

 速度を上げたうえに、牛並みのジャイアントラビットは重いのがわかりきっている。覚悟を決めて受け止める。


 盾に凄まじい力が加わる。

 押されて滑るが、それでもジャイアントラビットを受け止めるのに成功した。

 受け止められてもジャイアントラビットは押し続けているようで、力が消えない。


「いくわよ!」


 クロエが大剣を振り上げながら飛び上がる。

 大剣を勢いよく振り下ろされ、盾の向こうにいるであろうジャイアントラビットに斬りかかる。

 クロエの大剣が振り下ろされると、盾を押していた力がなくなる。

 盾を退けてジャイアントラビットを確認すると、頭部が落ちている。クロエは身体強化を使わず、大剣の勢いと重量で押し切ったようだ。


「低層から中層の間程には硬いわね」


 1層のモンスターはライフル銃で対処ができた。かなり強くなっている。


「大きい上に素早いのが問題か」

「止まっていれば問題ないけれど、動かれると攻撃が当てにくいわ」

「足を潰すか、盾で受け止めるしかないか」

「まずは足を潰すのが良さそうね」


 機動力さえなくなればジャイアントラビットは倒せる。

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