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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第45話 アックスオッター

 魔石列車が蒸気をあげながらアックスオッターに向けて進む。

 一年で帰ってこようとは思いもしなかった。


「もうすぐアックスオッターか」

「はい」


 ライナスの返事は硬い。

 俺とライナスの故郷であるアックスオッターであるため、今回はライナスも同行している。


「アイクにライナス、大丈夫? 随分と顔色が悪いよ」


 隣に座るパーシーから心配される。

 自分の顔色は自分で見られないため、ライナスの顔色を見る。デレクに毒を盛られた時のように真っ白になっている。

 どれだけ肉体が強くなろうとも、殺されかけたのは精神に深い傷を残す。前世の死により精神的な傷を負った俺にはよくわかる。


「あまりよくはない気がするが、今更王都に帰るわけにもいかない」

「そうなんだけど……」

「そう心配しなくていい。すぐによくなる」


 今回は毒を盛られた時と違い、騎士団と警察が一緒。

 アックスオッターを掌握できていないであろう、デレクが俺たちに何かできるわけがない。

 列車の椅子に深く腰掛け、アックスオッターに到着するのを待つ。


「そろそろ着替えるか」

「列車の中で甲冑に着替えるのは初めてだよ」

「いつも一緒のパーシーが初めてなら、俺も初めてだよ」

「それもそうだね」


 アックスオッターでは何が起きるかわからない。

 デレクが治めるアックスオッターに事前の連絡なく向かっているが、騎士団と警察が大規模に動いていれば事前に察している可能性もある。駅に着いた瞬間から何が起きてもいいように、甲冑を着た状態でアックスオッターに降りると指示された。


 王都から半日ほどでアックスオッターの駅に着く。

 アックスオッターの駅は王都の巨大な駅に比べてしまうと小さいが、地方の駅にしては立派で多くの人が駅を利用している。

 アックスオッターに騎士団がやってくるのはそもそも珍しい上に、甲冑を着た状態で降りてきている。周囲の人々は何が起きたのかと様子を見ている。


「まずは警察が主導か」

「僕たちは後ろからついていくだけだね」

「抵抗された場合に前に出るらしいが、ないといいのだがな」

「アイクに聞いた限り、手加減が相当難しそうだよ」

「甲冑を着ていると余計に難しそうだ」


 アダマンタイトで作られたガントレットは拳よりかたい。

 撫でるだけのつもりで殴っても相手を殺してしまいそうだ。


「……甲冑着ない方がいいんじゃ?」

「着ないで怪我するのも馬鹿らしい」

「それはそうだけど……出番がないのを祈っておくよ」

「俺も出番がないのを祈っている」


 パーシーと喋りながらもアックスオッターの街を進む。

 駅とは反対側にある港から潮風が漂う。

 俺を含めた完全武装した騎士団と警察がアックスオッターの大通りを歩くと、街に住む人々から何事かと視線を浴びる。


 王都よりも階数の低い建物は複数の色彩で彩られ、水都と呼ばれるアックスオッターを彩っている。

 久しぶりの故郷は懐かしく感じる。

 日本とはまた違う風景であるが、転生後の故郷は色鮮やかなアックスオッター。


 アックスオッターの大通りを進むと、生家であるアックスオッター伯爵家の屋敷が見えてくる。

 生家である懐かしさと共に、1年ほど前に毒を盛られた記憶が蘇ってくる。

 苦々しい思い出と共に懐かしさが込み上げる。不思議な気分だ。


「もう戻ってこないとばかり思っていた」

「はい」


 俺の呟きにライナスが答える。


 アックスオッター伯爵家を警察と騎士が完全に包囲する。

 ベアトリクス様が俺を呼ぶ。


「アイザックは妾と一緒に行動する」

「了解しました」


 ベアトリクス様が門の前に進み出る。


「妾はベアトリクス・オブ・スカーレットドラゴン。デレク・オブ・アックスオッターは竜騎士を殺害しようとした。身柄を王家が確保する。直ちに門を開けよ!」


 強制突入になるかどうか。

 緊張して待っていると門が開いていく。

 どうやら門番が門を開けたようだ。


「デレクを探し出せ!」


 警察と騎士団が屋敷の中に突入していく。


「妾たちも向かう」

「了解しました」


 ベアトリクス様はゆっくりと屋敷の中に入っていく。

 屋敷の庭は以前よりも木や物が増えたように思える。

 以前は体を鍛えるために最小限の木しか生えておらず、踏み固められた土が露出していた。今は土ではなく芝生のようなが生い茂り、全体的に緑が多い。学園の成績を見るにデレクは全く運動していないのだろう。

 しかし、アックスオッター家に使える騎士も使う場所だったのだが、今はどこで鍛えているのだろうか……。


 屋敷の中に入ると玄関のホールに金色の壺やら、宝石が埋め込まれた像などが飾られている。以前も煌びやかであったが、今は煌びやかを超えて下品なほど装飾品が増えている。

 短期間でよくもここまで飾る美術品を増やせたものだ。

 しかし、あまりに派手すぎて感性が合わない……。


「趣味が悪いわね」

「そうだな」


 クロエとベアトリクス様にも屋敷が酷評されている。

 王族の二人と同じであれば、俺の感性はそこまで間違っていなかったか。もっとも、俺が完全に趣味に走ると落ち着きすぎそうだが……。


「元はここまでではなかったのですが……。一年という短期間で随分と変わりました」


 一応デレクの趣味であると遠回しに伝えておく。

 生家の趣味が悪いと思われるのは嫌だ。


「どれだけダンジョンから予算を削った」


 ベアトリクス様の声音に怒りが含まれている。

 アックスオッターの予算を詳しくは知らないが、ダンジョンの経費をほぼ削ったのではないだろうか……。


「アイザック、執務室は一階であったな?」


 屋敷の見取り図はすでに伝えてある。


「以前は一階でしたが、想像以上に家が変わっています」

「そうか……以前に執務室があった部屋に案内せよ。違った場合はその時考えれば良い」


 父の執務室であった部屋へとベアトリクス様を案内する。

 俺が毒を盛られてデレクに家督の放棄を迫られた部屋でもある。


 嫌な記憶が蘇りそうになり、気を逸らす。

 玄関のホールに続き、廊下まで派手になっているのに気づく。貴金属は確かに高いが、屋敷に使われている銘木もまた価値があるのだがな……。

 派手すぎる屋敷の中を歩いていると、銃声が響く。


「銃」


 誰も慌てない。

 警察に銃弾が当たっていなければ問題ないだろう。

 銃弾程度で壊れるような甲冑ではない。


「アイザックも銃で襲撃されたのだったな」

「はい」

「銃など騎士の前では意味がないというのにまだ使うのか」


 もしかして俺が死んでいないのを知らない?


「自分が死んでいないのを知らないかもしれません」

「ああ、その可能性があるか」

「デレクが銃を好きな理由にも少し心当たりがあります」

「どのような?」

「テラパワーがアックスオッターで銃を製造していたからでしょうか、他の地域よりも銃が発展しているかもしれません」

「銃の発展。ガトリングか?」


 俺は首を横にふる


「いえ、ガトリングの前に作っていたライフル銃です。テラパワーの設備では生産が間に合わず、威力も随分と低かったため技術ごと売ってしまいました」

「威力が弱い方か」


 ベアトリクス様はライフル銃に興味がなさげ。

 個人的にも連射性能が低く、威力が足りなかった最初の銃は失敗作。

 ハーバートがガトリングを作らねば二度と銃を作ろうとは思わなかった。獣人の能力は優れており、銃を研究するよりも武具の研究をした方がいいと考えていた。


「威力は弱いですが、銃声は前方よりしました」

「デレクがそこにいる可能性が高いか」

「はい」


 アックスオッターの騎士が抵抗するのであれば肉弾戦となる。

 騎士が辞めていくようなデレクは騎士から人望がないだろう。

 学園の成績が低かったデレクが身を守るために使うのは銃しかない。

 デレクは近い。

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