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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第44話 除名嘆願書

 除名嘆願書には色々と書かれているが要約すると、学習態度が最悪、体力が並以下。しかも訓練の手抜きが酷く身体強化を使う。このまま2年に上がればデレクが死ぬだけではなく、パーティーメンバーが死ぬ可能性があり危険だと書かれている。

 学園での態度以外にも、短期間で学園を卒業させるように命令を繰り返していると記述されいたり、学園を卒業していないのに伯爵であると名乗っており事実に反する言動が目立つとまで記述がある。

 ここまでひどく書かれるのもすごい。


「ひどいですね」


 書類をクロエとパーシーも気になっているようだ。ベアトリクス様の許可を取ってから書類を差し出す。


「学園の書類には書いていないが、王家にも学園を卒業なしに貴族と認めよと手紙が来ている」

「王家は断っているのですか?」

「無論。アイザックほどに成績が優秀であれば、短期間ならば考慮しないでもない。しかし、こうまで成績がひどいものは論ずるに値しない」


 学園を退学する者が出るように、獣人の中でも得意不得意はある。しかし、学園初年度の体力作りは獣人が真面目に取り組み、訓練を続ければ乗り越えられない課題ではない。

 しかもデレクは獣人の中でも体が強く魔力が多い竜人。

 ただ怠けているだけだろう。


 訓練を怠けているデレクがダンジョンの討伐を優先するとは思えない。

 王家は王族が先頭に立って、ダンジョンの侵略から民を守っている。そんな王家がダンジョンの討伐ができないであろうデレクを貴族にするわけもない。


「しかもデレクはすでに学園に通っていないようだ」

「学園を退学したのですか?」

「いや、退学もしていない。そのため除名嘆願書が学園より提出された」

「なるほど」


 除名は最後の手段というわけか。

 学園に入学して間もない状況で除名を願われるとはすごいな……。


「想像以上にひどいわね」


 除名嘆願書を読んでいたクロエが眉をひそめる。


「学園も相当苦慮していたようだ。遠回しの注意から始まり、最終的には退学勧告に至っている」

「そう……ダンジョン軽視から態度が悪化しているのかしら?」

「おそらくはそうだと思われるが、段階を踏むもので悪化しすぎな気がしなくもない」

「他にも要因があるのかしら?」


 クロエとベアトリクス様の会話から、確かにデレクの存在は違和感があるのに気づく。テラパワーの共同代表になってから会社を経営する人に会ったりしているが、話の通じる相手が多い。


「アックスオッターを調べているが、領地の経営も下手なようだ」

「下手なの?」

「度を越して貴金属を集めている」

「どこからそんな収入を?」

「ダンジョンの予算を減らしているのであろう」


 家督を奪っておいてまともに領地を運営できないのか……。


「それとアックスオッターに所属する騎士が短期間で土地を離れている」

「私とアイクが友人だという感情を抜きにしても、スカーレットドラゴン王国はよくデレクを排除しないわね?」

「まだ一年もたっていないのでな。評価を下す前に状況が悪化している」

「そういえばそうだったわ」


 調査後、評価して判断を決める間にアックスオッターは随分と悪化している。

 そこまで悪化するとは国としても想定外か。


「さて、アイザック」

「はい」


 改めベアトリクス様に名前を呼ばれ背筋を伸ばす。


「このような状況で訪ねたくはなかったのだが……アイザックはアックスオッターを継ぐ気があるか?」

「アックスオッターを継ぐ?」

「そうだ。アイザックは家督を放棄したというが、王家としてはそんなものはどうでも良い。アイザックに継ぐ気があれば伯爵に命ずる」


 今更ながらに俺は騎士になっているため爵位を継ぐ、もしくは叙爵される立場なのだと思い出す。

 継ぐ気の一切なかったアックスオッター伯爵。

 今でも貴族であるより錬金術師として生きたいと思ってしまう。


「伯爵という身分は自分にそう魅力があるようには思えません」

「アイザックの生き方からすると、そうであろうな」

「しかし、望郷の念がないとは言えません」


 デレクが荒らしたアックスオッターを放置すれば荒廃するのは目に見えている。荒廃する前にスカーレットドラゴン王国が手を出して建て直すではあろうが……。

 俺はどうしたいのだろうか。

 答えが見つからない。


「もしアイザックが断るのであれば近い親族が伯爵候補になる。アックスオッターが一気に全てが変わるわけではない」

「自分の親戚ですか」


 完全に無関係の人がアックスオッターで一から足場を固めるよりも、基盤がある状態で統治をした方が楽か。

 デレク以外の親戚は父や兄に似た性格で、俺よりアックスオッターらしい。


「そうだ。誰が伯爵にふさわしいか調べている」

「調べて……」


 俺の身辺調査がまだされていたのは伯爵を継げるかどうかを調べていたのか。


「まだ少しだけ余裕がある。悩んでおきなさい」

「はい」


 今すぐという話ではなかったか。

 しかし、俺の襲撃を考えると、そう余裕がある話でもなさそうだ。


「聞き取りは以上。今日のところは帰り休みなさい」

「了解しました」


 ベアトリクス様の部屋を退出する。




 一週間、ベアトリクス様から呼び出される。


「アイザックを襲撃したスラムに巣食うギャングは潰した」


 たった一週間で襲撃してきたギャングのアジトを見つけ、潰してしまったようだ。

 本気になったスカーレットドラゴン王国は容赦がない。


「自分を襲撃するよう依頼した者にはたどり着けましたか?」

「デレクで間違いない」


 今回は証拠を残したようだ。

 デレクは終わりか。


「デレクを捕まえたのですか?」

「いや、デレクは王都にいなかった」


 デレクもすでに対処されているかと思ったが、そうではなかった。


「王都にいない?」

「どうやらアックスオッターに帰ったようだ」


 デレクは学園を卒業して貴族になるため王都に来ていたはず。卒業する見込みがないのであれば王都にいる必要はないか。

 考えてみれば納得できるが、それならば俺をギャングに襲わせる意味がなさそうだが……。いや、俺が襲われたのは家督を破棄したとはいえ、継承権が上というだけで十分な理由になるか。

 実際ベアトリクス様から伯爵になる気はあるかと尋ねられた。


「アイザック、アックスオッターに向かう準備せよ」


 俺が襲われた意図を考えているとベアトリクス様の命令に顔を上げる。


「自分もアックスオッターに?」


 警察でない自分が行ったところで意味がないように思える。

 前回ギャングを倒して気づいたが、一般人を相手するには力が有り余りすぎている。下手に殴れば相手が即死する。


「アイザックだけではない。第二騎士団を連れていく」

「第二騎士団を?」


 何の意味が?

 俺ほどは力が有り余っていないかもしれないが、一般人相手からすれば騎士は誰でも似たような者だと思う。力加減を失敗すれば相手が死ぬ。


「元アックスオッターの騎士から嫌な情報が入った。どうもデレクは魔石の生産量を増やすため、ダンジョンを討伐せずにいるようだ」


 顔が引き攣る。

 ダンジョンを放置とか何を考えている!

 ダンジョンを無視すれば領地の収入は大きく増える。しかし、ダンジョンが中層、深層と成長してしまうと収入以上の損出を被る。しかも人的被害まで追加される。

 領地の経営に疎い俺にでもダンジョンを軽視してはいけない理由がわかる。

 いや、放置していたとしても一年程度。一年では中層になったばかりで、今ならそう問題にはならない。


「いくつかの中層ダンジョンがあるのですか」

「その可能性が高い。これ以上成長させるわけにはいかない、騎士団が討伐する」

「了解しました」

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