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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第39話 魔法とは

 ミノタウロスを倒した翌朝。

 今日は魔法の練習。昨日は今日を楽しみにして寝た。

 テントから出るとすでに日は登り、眼下に雲が少しある程度。上空には青空が広がっている。

 天気は良好で雨が降る様子はない。

 山の天気は変わりやすいというため絶対ではないが、数時間は持つと思われる。


「この天気なら魔法の練習ができそうだ」


 魔法は広い場所が必要になる。

 雨が降ってしまうとテントの中で練習するわけにもいかず、練習自体が中止になってしまう。そのため、昨日は雨が降るなと祈りながら寝た。


「アイク、おはよう。調子はどう?」


 天気を確認していると、緋色の髪に寝癖を付けたパーシーが起きてきた。


「パーシー、おはよう。魔力もほとんど回復して、疲れもほとんど残っていない。調子はいい」

「それは良かったけど……」

「けど?」

「昨日は歩き回って、ダンジョンで戦って一晩寝ただけでよく回復するね」


 よくみればパーシーは起きたばかりだというのに、疲れていそうな顔をしている。

 俺は力だけでなく、体力が有り余っているのを思い出す。

 以前は俺もダンジョンの討伐が終わると疲れて倒れるように寝ていた。


「パーシー疲れているなら休んだ方がいいんじゃ?」


 疲れているパーシーに無理やり魔法を教えてとは言いにくい。


「疲れてはいるけど、魔法を教える程度なら問題ないよ」

「それならお願いしたいが……本当に大丈夫か?」

「うん、運動するわけじゃないから問題ないよ」


 パーシーが両手をあげて、大きく伸びをする。


「軽く柔軟すればもう少し楽になるよ」

「それじゃ、一緒に柔軟するか」

「うん」


 パーシーと二人で固まってしまった筋肉をほぐす。

 収縮した状態で固まってしまった筋肉を伸ばすのは気持ちがいい。

 武器を振るために可動域を維持するために柔軟は重要。俺とパーシーは普段から柔軟を取り入れているため、かなり体が柔らかい。


「しかし、騎士は皆疲れた顔をしているな」


 ゆっくりと体をほぐしていると視界に色々と入ってくる。

 普段は背筋が伸びた騎士たちだが、今は若干猫背気味で動きがゆったりとしている。同期の新人騎士だけでなく、先輩に当たる騎士たちも同じように疲れているのが一見しただけでわかる。


「アイクみたいに元気な騎士は珍しいね」

「そうだな」


 どれだけ鍛えようともダンジョン討伐は疲れるようだ。

 パーシーが完全に足を開いた開脚から流れるように立ち上がる。


「よし、少し楽になった。朝食を食べてから魔法の練習しよう」

「ああ」


 食事を終えると拠点としている場所から少し離れる。


「まずは習っているけど、魔法の使い方からかな」

「よろしくお願いします」


 学園でも魔法の使い方は少し教えてくれはするが、さわりを教わって終わり。

 攻撃に使えるような魔法を使える人の方が少ないため、詳細に教えても意味がない。魔法の詳細な使い方は個別に教えられる。

 俺が教わった範囲以外をパーシーが教えてくれるわけだ。


「魔法は強い意思で魔力を変化させておきる」

「習った時から不思議だったのだが意思とは何を指すんだ?」


 学園でも同じように教わるが、いまいちよくわかっていない。

 攻撃ではない小規模なら魔法なら俺も使えるのだが、小規模な魔法だと意志の強さが関係しているとは思えない。


「意思は想像とも言い換えられるかな。しっかりと想像できる状態を維持すると、魔法が発動する。想像しやすい事象が得意魔法につながる場合もある」

「想像。パーシーだと雷魔法が想像しやすいのか?」

「僕が生まれたウォールナットスクワローは木が多くて、雷の落ちやすい場所だったから雷を想像しやすかった」

「なるほど」


 静電気では大規模な魔法にしても意味がないが、雷であれば大規模な魔法になるか。ただ、雷が落ちるのをなん度も見て想像できる状態でなければいけないわけだ。


「俺は何を想像して魔法を使うべきか……」


 想像しやすい大規模に効果がありそうな魔法……。

 俺の場合は自然現象以外にも日本で生きた想像も使えるのか? 日本の知識まで使えると、逆に選択肢が多すぎて選ぶのが大変だな。


「得意魔法ばかりは人によるから、練習を繰り返して相性がいいのを探すしかないよ」


 得意魔法の探し方をちょうど聞こうとしていたのだが、パーシーから探し方がないと言われてしまう。


「効率的に見つけ出す方法はないのか」

「傾向はあるけどね。クロエのように氷魔法のセレストドラゴン王国。スカーレットドラゴン王国の場合は火魔法が得意になりやすい」

「そうなると俺は火魔法?」

「僕の得意な魔法が雷魔法なように、傾向であって絶対ではないよ」

「そういえばそうだな」


 雷魔法が得意なパーシーに言われると確かに傾向でしかないのを理解できる。


「得意魔法は時間をかけて調べるしかないから、次は呪文と詠唱について話そう」

「魔法の発動前に唱えているものだな」


 パーシーのサンダーストームやサンダーインパクトが呪文。


「そうそう。どちらも役割は同じで想像をしやすくするための言葉だね。想像の補助でしかないから、呪文と詠唱は何を唱えても構わない」

「なんでも良かったのか」

「うん、呪文は自分の中で魔法を使うと切り替えるための動作に近い。体の外に放出した瞬間から消えていく魔力をできるだけ早く魔法に変えるんだ」


 大規模な魔法でも発動するのに必要な魔力量は実際のところそう多くはない。

 ただ、魔力が消えてしまうがために、必要量の10倍以上の魔力を放出しており、魔力の消える速度が速くなければ一般人でも魔法を使えた可能性がある。

 消えてしまう魔力を極力減らすために呪文が存在しているのか。


「詠唱は随分と長いが、あれは魔力が拡散してしまわないか?」

「難易度が高い魔法を使う場合は魔法を使う前に精神集中するんだ。精神集中のために唱えるのが詠唱だよ」

「精神集中のためにあえて長いというわけか」


 詠唱を唱えている場合は集中して守る必要があるわけか。


「さて、座学はこのくらいにしようか」

「次は?」

「もちろん魔法の実践だよ」


 実践!


「得意魔法を探すのか?」

「そうなるね。最初は無難に火かな。僕とクロエがいるから雷と氷も試してみたいね」


 スカーレットドラゴン王国の住人である俺は火魔法が得意な可能性が高い。パーシーとクロエの雷魔法と氷魔法も想像はしやすい。

 しかし、俺の魔力は1日に一度程度しか大規模に魔法を使えない。


「わかった。火から試してみる」

「生活に支障がない程度に魔力を残してね」

「わかった」


 魔力を放出する前に練習として、燃え盛る炎を想像する。

 何度か繰り返して、問題がないと思ったところで魔力を一気に放出する。


「ファイア」


 細かく指定しないで魔法を使う。

 俺の目の前に人の背丈以上に大きい火の玉が浮かび上がる。


「おお」


 失敗するかと思っていたが、一度で成功した。


「成功したね」

「ああ」


 楽しみにはしていたが、魔力が霧散して終わりかと思っていた。


「でも火にしては色が変わっているね?」


 言われてみれば少々炎が黒い


「普通の炎を想像したんだがな? 黒いというか、闇のようだな」


 闇と言った瞬間炎の色がさらに濃くなったように見えた。

 黒いというよりも、炎だというのに暗い。


「言葉に魔法が反応したように見えた。アイクの得意魔法は闇魔法かも……」

「闇魔法?」

「そう。僕も魔法の研究者じゃないからどんな魔法かまではわからない。次に魔法を試すときは闇を意識してみるといいかも」

「わかった。闇を意識してみる」


 しかし、獣化した俺は黒い鱗で黒竜ぽい上に、闇魔法って邪竜ぽいな……。

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