第36話 新しい武具
モンスターのコアは魔石に変えても列車を動かせるほどの膨大なエネルギーを秘めており、魔石も適当には破棄できない。山積みにして放置すれば何かの拍子に爆発する可能性は否定できない。
おそらく王家が所有する魔石も厳重に保管されているだろう。
「余っているはずの魔石ですが、ライナスから魔石の価格が上がっていると聞いております」
「ああ、魔石は近隣の国向けに輸出量が増えていると報告を聞いたな」
スカーレットドラゴン王国があるのは、輪のような形だと言われるノースリング大陸。大陸最大の国家がスカーレットドラゴン王国で、王国の周囲に小さな国が点在している。
またノースリング大陸の南側にはサウスリング大陸があり、サウスリング大陸にセレストドラゴン王国がある。セレストドラゴン王国もサウスリング大陸最大の国家。
国の規模からしてスカーレットドラゴン王国の魔石が余るのは理解できる。だがダンジョンの発生率というのは小さな国でも変わらないと思うのだが……。
「隣国も魔石は余っていそうなものですが?」
「魔石の価格がスカーレットドラゴン王国ほど安くはないそうだ」
国土あたりの討伐しているダンジョンの数がそもそも違い、価格の差になっているのか。
もしかしたら小さな国では魔石を国が使うと、一般流通させる数にさほど余裕がないのかもしれない。
「このまま値が上がり続けるのであれば、弾薬の価格が想定よりも上がりそうです」
「テラパワーであれば王宮から直接魔石を買い取れば良い」
「よろしいのですか?」
「魔石は弾薬に使うのであろう? 弾薬は騎士団が使用する武器であるからな、許可は簡単におりよう」
スカーレットドラゴン王国のダンジョンに対する重要性はお金以上、ベアトリクス様のいう通り、簡単に許可が降りるだろう。
王都に帰ってから申請しておこう。
低層を抜け、ダンジョンの中層にたどり着く。
ダンジョンができて間もない低層であれば良かったが、そうはいかないようだ。それでも低層は大半の敵をガトリングで始末できている。魔力の消耗は少なく、まだ余裕で戦闘は継続できる。
11層のモンスターは斧を持ったオーク。
分厚い皮下脂肪に守られたオークは、致命傷を負わせるのが大変そうだ。斧という武器はオークの戦い方にあっており、11層の相手としては強い分類に入る。
「アイザック、武具の確認がしたいと言っていたな、好きに暴れよ」
「はい」
盾とバトルアックスを構え、獣化する
魔力が血のように巡り、尻尾が生えてくる。甲冑で見えないが、体は鱗で覆われている。
尻尾で甲冑が壊れていないか確認する。
甲冑を新調した時に獣化しても問題ないか試したのだが、甲冑の中に尻尾が生えて窒息しかける悲しい事件を経験した。窒息する前に甲冑の留め具が先に壊れて無事だったが、なかなか怖かった。
現在は形状が変化する金属に変えている。ヘルムに使われる金属で、尻尾の形状に金属が変形する。
「装備に問題なし」
まずは身体強化を使わず、オークに襲いかかる。
身体強化を使っていないのに、バトルアックスはオークの硬い皮下脂肪ごと体を両断する。
中層のモンスターですら身体強化を使わずに倒せる。
仲間が上半身と下半身に分かれたのが衝撃だったのか、オークからの攻撃が途絶える。
モンスターのオークも驚くのか。
俺はオークの中に入り込んで、バトルアックスを思いっきり振るう。
「ガアアア!」
叫び声を上げながらバトルアックスを振って一回転する。
軽い抵抗は感じたが、バトルアックスは振り抜かれる。
一度に10体のオークが上下に分たれた。
戦闘の興奮を抑えながら、冷静に状況を読み取る。
オーク数体を切ったところで動きが止まるかと思ったが、止まらずに一回転できてしまった。クロエのように身体強化を使って切り捨てるのであればわからなくもないが、俺はまだ身体強化を使っていない。
想像以上に自力がある。
「前へ進む」
クロエとパーシーに伝えるように呟く。
騎士にバトルアックスが当たらぬように奥へと進む。
「私もいくわよ」
俺と同じように武器を新調したクロエがオークに突っ込んでいく。
クロエの魔力量からすると、中層のモンスター相手でも余裕で立ち回れる。
どれほどのオークを倒したかわからないほど切り捨てたところで、ダンジョンの部屋にいたオークを倒し切る。
倒したオークを鞄にしまっていく。
「アイクの倒した数の方が多かったわ。抜かれたようで、少し悔しいわね」
「クロエも以前と変わらず倒しているじゃないか」
モンスターの群れに突っ込み倒すのはクロエの立ち位置。
俺は今も別にやりたくてやっているわけではない。
「それで武器はどうなの?」
クロエに言われてバトルアックスを見る。
アダマンタイトにバンパイアの素材を入れたところ、金属にうっすらと赤みがついた。
見た目の悪役感が増した気がする。
「今のところは刃が欠けたりしていないが、身体強化をしたらわからないな」
バンパイアを相手した時、バトルアックスの刃が完全に潰れてしまった。
アダマンタイト以外の金属でバトルアックスを作る案もあったのだが、硬さに特化している金属の最上級であるオリハルコンはなかなか手に入らない。
オリハルコンまでになると、お金があれば買えるものではない。
「最悪、鈍器として使えばいいんじゃない?」
「鈍器前提でバトルアックスを使うなら、パーシーのようにメイスを使う」
「メイスにかえる?」
力で押し切るのであればメイスも悪くはない選択ではある。
しかし、今更武器を変えるというのも気が進まない。
「慣れた武器を手放す気にはならないな。それよりオリハルコン手に入らないかな」
「私もミスリルが欲しいわ」
ミスリルはアダマンタイトよりも魔力に対する抵抗がある。全てミスリルで大剣を作れば、クロエが全力で魔力を込めても自壊しなくなるだろう。
「オリハルコンとミスリルどちらも探しているが、流通量が少ない」
「セレストドラゴン王国でも秀でた騎士に少量渡す程度で、全てミスリルで作った武器は国宝級ね」
国宝級とはいうが、普通に使うのだがな。
武器の国宝は飾りではなく実用品。
「アイク、クロエ、そろそろ移動するよ」
オークの片付けが終わるようだ。
俺とクロエも喋りながら片付けていたため、怠けていたわけではない。
オークがいた11層を抜け、18層まで進んだところで20層を超えている可能性を考慮する。
帰還のために魔力を節約しなければならない。
「しかし、18層は斧持ちのミノタウロスか。まだ余裕はあるが、強い相手が多いダンジョンだな」
なぜか斧持ちのモンスターが多いダンジョン。
俺もバトルアックスという斧を使っているが、モンスターに親近感は湧かない。むしろ厄介だとすら思う。
「背が高いとやりにくいのよ。小さくなりなさいよ」
「モンスターに文句を言っても意味ないぞ」
「2回切る必要があって魔力が節約できないのよ」
150センチを超えているクロエの身長が特別低いというわけではない。
ミノタウロスの2メートルを超える身長だと、正直俺もやりにくい。首を落とそうとせずに、胴体を力任せに切り飛ばしている。
力に任せてバトルアックスを振り抜くのは楽。
……いや……力任せな使い方をしているとバトルアックスの刃が潰れる。
危ない。今、脳筋に染まっていた気がする。
「そうだな。魔力を節約して、丁寧に倒さないとな」
バトルアックスの刃がこぼれないように、振り抜く軌道を安定させる。力任せで雑になっていたバトルアックスの使い方をいつも通りに戻す。
先ほどまでと違い、少しの力でミノタウロスが上半身と下半身に分かれる。
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