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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第27話 深層ダンジョン討伐

 バンパイアを倒した翌日、医者に診察のため体を触られる。


「うん、見た限りは健康だね」

「良かった……」


 回復していないね、と言われなくてよかった……。


「もう獣化を解いて構わないよ」


 今まで維持してきた獣化を解く。

 人の姿に戻る方法は固まった魔力を解放するだけなのだと医者が教えてくれた。


 獣化は魔力が実体化して姿形を変えているらしい。バンパイアにレイピアで刺された時、魔力が血の代わりに循環して、体が作り変わった気がしたのは獣化したためだったようだ。

 つまり獣化というのは魔法の一種だったわけだ。

 身体強化しかり、使える魔法は近距離に特化したものばかりだな……。遠距離魔法をください。


「戻れました」


 魔力が空中に拡散すると、1日ぶりに鱗のない体に戻る。

 尻尾がないのが寂しい。


「体に違和感はないかい?」


 医者に言われて体を改めて確認してみる。

 レイピアで切れた右手を目の前に持ってくるが、手のひらには傷跡すらない。尻尾が入らなかったために着ていた大きめの服をたくしあげ、脇腹を確認すると傷はない。


 気になるのは腹筋が大きくなったように見える。しかも腹筋周りに皮下脂肪がほぼなく、筋肉の筋繊維が見えるほど痩せている。筋繊維の上に血管が浮き上がっている。

 筋繊維が出るまで痩せた状態は、大会に出場するボディービルダーのようだ。


「筋肉がついて痩せた?」


 普通は脂肪が減ると筋肉も多少減ってしまうのだが、むしろ増えている。

 ボディービルダーのように減量をしたわけではないため、普通とは違う状態ではあるが、痩せて筋肉が増えるのは俺の常識と違う。


「獣化すると筋肉が増えるね。痩せたのは血を失いすぎたんじゃないかな」


 筋肉が増える原理は不明だが、痩せた理由は納得できる。

 しかし、いきなり太れないとはいえ、一万カロリー以上食べた気がするのだがな。


「起きている間は一日中、肉を食べていたんですが……」

「昨日言っただろ、獣化を解いたら死ぬと。アイザックさんは一生懸命食べて、痩せている程度なんだよ」


 医者の説明に血の気が引く。

 皮下脂肪の溜まりやすい腹部に脂肪が見当たらない状態は、地球であれば痩せすぎと言われるほどの体脂肪率。今の状態でも飢餓状態と言われるような体なのに、さらに痩せていては死んでもおかしくない。


「よく生きていたな……」

「魔力が実体化する獣化は魔力が体を補完してくれるのさ」


 普通なら死んでいるような状況で生きていられる獣化はすごい。

 獣化でなく遠距離魔法が使いたいという考えは贅沢すぎた。

 心の中で獣化に土下座する。


「油断しないように、今日も食べ続けます」

「そうだね。見たかぎり脂肪が落ちている以外の問題はなさそうだけど、戦いに出るのはやめた方がいい」

「分かりました」


 医者にお礼を言ってテントから退出する。

 昼過ぎで日がほぼ真上にある。


 医務室として簡易に作られたテントの前には怪我人であろう人たちが集まっている。

 ある程度の怪我は身体強化で治してしまえるが、ひどい怪我を負うと俺のように医者に診てもらう必要がある。身体強化は治っているように見えて、治っていない場合があるためだ。


 忙しそうに動く人には道を譲り、拠点内を人にぶつからないようのんびり歩く。

 俺は武具を失ったため、よほどの問題が起きなければ戦闘への参加はない。

 今は休んで体調を戻すのが仕事。

 忙しそうに動く人を見ると若干申し訳なさを感じるが、ユニークモンスターを倒しただけでも十分に仕事はした。


 また食堂として開放している場所に行き、肉を食べる仕事をする。

 食べるのも仕事である。顎が疲れるため魔力で顎を強化して咀嚼する。

 昨日のうちに味変する手段もなくなり、ひたすら口に肉を運ぶ。


 肉を食べ続けていると日が暮れて夜になってくる。戦っていた騎士が交代時間になったようで、食事を食べに疲れた様子で騎士が食堂にやってくる。

 騎士で混み始めたため、邪魔にならないよう食堂を出てテントに戻る。

 テントには皆が戻ってきていた。


「パーシー、クロエ、おかえり。どうだった?」


 パーシーとクロエは怪我がないため戦闘に参加していた。

 パーティーの盾役である俺がいないため、代わりに盾を使えるライナスを二人につけた。

 俺は拠点から出ないため、ライナスがいなくともどうにかなる。


「今日はモンスターがまばらに出てくる程度で少なかったよ。昨日の戦闘で大半を倒したんじゃないかな」


 パーシーの甲冑はそう汚れておらず、戦闘が少なかったのが見ても分かる。


「クロエも最後までいたんだな」

「ええ、借りた剣でもどうにかなる程度でよかったわ」


 2本の大剣を壊したクロエは拠点にあった剣を借りて戦いに行った。

 体に合っていない武器であるため、魔法を放つだけ放って帰ってくる予定だったが、結局最後までいたようだ。


「アイクはどうだったの?」


 パーシーが尋ねてくる。


「見ての通り生きているよ」


 腕を広げて全身をパーシーとクロエに見せる。


「なんか……やつれた?」

「気づいたか」


 医者から聞いた話を二人に伝えると引いている。


「獣化がすごいのか、そんな状態でも獣化したアイクがすごいのかよくわからないよ……」

「ああ、確かに死にかけで獣化した俺も珍しいのか」


 諦めてしまうような状況ではあるな。


「しばらく安静か」

「どちらにせよ防具と武器がないから戦えない」

「それもそうだね。十分過ぎるほどの成果を出したんだ、ゆっくりしていてよ」

「ああ、そうする」




 深層ダンジョンの討伐が始まって5日目。

 1日目で死にかけた俺は拠点でのんびりと養生している。

 拠点も1日目と2日目ほど慌ただしくはない。俺ほど暇そうにしている人は滅多におらず、何かしらの仕事で動き回ってはいる。


 俺は食べ続けた成果が出て、やつれた状態から多少脂肪がついた。鏡で見ると頬がこけていたのだが、随分と改善した。

 まだ1日五食ほど食べているが絶え間なく食べ続ける必要は無くなった。


 五食目の夕食を皆で食べていると人が走り込んでくる。

 何か問題があったのかと緊張が走る。


「ダンジョンが討伐された!」

「おお!」


 昼食を食べていた皆が腕を上げて喜ぶ。

 俺も一緒になって腕を振り上げる。

 拠点のそこかしこから喜びの叫び声が聞こえてくる。


 夕食を中断して皆で移動する。

 ダンジョン討伐後は集まって話があるもの。

 人の流れに沿って拠点の外に出る。


 拠点の外に見えてきたのは人の背丈ほどもある大きな頭部。

 小さければ犬や狼のように見えるが、恐ろしいほど大きく鋭い牙が違う生き物であるのを理解させる。

 初めて見るがおそらくバーゲスト。

 バーゲストは牙の間からだらりと長く伸びた舌が出ており、死んでいるのがみて取れる。


「諸君、我々はダンジョンに勝利した!」


 バーゲストの前に立っている人が大声で話し始めた。

 聞き覚えのある声。出陣の時に演説をした第一騎士団の団長である王太子殿下であると気づく。

 遠目に見える王太子殿下の甲冑はひどい状態で半壊してしまっている。防具としての役目をほとんど果たしていない。

 王太子殿下が前線に出て戦っていたのがわかる。


「我々が勝利をしたのはこの場にいる全ての者たちが力を出し切ったからだ。ダンジョンの中で戦ったものだけではなく、荷を運び、拠点を作り、戦うものを補助するものたちがいたからこそ成し遂げられた。この地をダンジョンから解放したのは皆の成果である!」


 王太子殿下の演説に、拠点にいる一万人の人が歓喜して叫ぶ。

 俺もまた同じように叫ぶ。

 皆の叫び声が合わさり、空気が揺れて体を揺さぶられる。

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