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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第25話 バンパイア

 俺はパーシーとバンパイアの間に入り込んで、振り上げた腕に対して盾を叩きつける。勢いがつく前に盾に当たったため、先ほどと違って衝撃はさほどではない。

 俺が盾で受けた瞬間を狙い、クロエや騎士が切り掛かるが避けられる。


 バンパイアは素早く、致命傷を与えるどころか、かすり傷を負わせるのすら難しい。

 今は人数をかけてバンパイアを疲れさせ、動きが鈍ったところで致命傷を負わせるしかない。

 命をすり減らすような攻防を繰り返す。


 皆で何度もかわるがわるに切り掛かるが、残念ながらバンパイアは疲れる様子は見せない。

 全力で魔力を使っているこちらの方が先に体力が尽きてしまいそうだ。


 バンパイアは少しでも攻撃が緩むと素手で殴ってくる。

 重い打撃は脅威だが、いまだに腰に差しているレイピアを抜く様子はない。

 レイピアを使わないのは強者の余裕なのか、使わない理由があるのか……。


 命をかけた攻防を繰り返していると、徐々にバンパイアの癖がわかってきた。

 全ての攻撃を最小限の動作で避け続けており、囮の攻撃であろうと視覚外からの攻撃であろうと防御する様子を見せない。

 間合いを狂わせるような攻撃であればバンパイアに当たるかもしれない。


「はあああ」


 今まで防御に回っていたが、バトルアックスを振り上げてバンパイアに突っ込む。効率を無視した身体強化により、一瞬でバンパイアに肉薄する。

 狙うは胸。

 バトルアックスの間合に入っても振り下ろさず、さらに近づいて反対の手に持っていた盾を突き出す。


 シールドバッシュ。

 盾では致命傷にはならないが、バンパイアの体を浮かせられれば移動を制限できる。


 今までのようにバンパイアは攻撃の範囲外に出ようと滑るように動く。

 避けられるのは想定済み、さらに前に出て間合いを詰める。

 シールドバッシュは元々致命傷を狙っているわけではない、浮き上がらせて次の攻撃につながりさえすればいいのだ。


 盾に肉体がぶつかる感触。空中に打ち上げるため、抉るように上へと持ち上げる。

 重たい。

 さほど身長が変わらないというのに、見た目以上の重量に戸惑う。痛いほど左腕に力を込め、魔力をさらに込める。


「吹き飛べ!」


 重かった重量が軽くなる。

 バンパイアが中を舞う。


「サンダーニードル」


 パーシーの雷魔法がバンパイアに当たる。


「薄氷」


 パーシーに続いてクロエが魔法を唱えたのが聞こえる。

 俺の横を凄まじい勢いで誰かが飛び上がる。

 後ろ姿はクロエ。

 クロエが持っている大剣から、薄い氷のような刃が伸びている。剣から出ている刃は広範囲を切り飛ばした時より短い。


 クロエは空中に浮いたバンパイアに肉薄する。

 剣が弧を描き振り下ろされる。

 鉄をも両断するクロエの剣は爆発したかのような音を立てる。


 バンパイアが錐揉みしながら地面にぶつかり滑っていく。

 今まで避けられていた攻撃がまともに入った。

 これなら……。


「硬い。切りきれなかった」


 横に着地したクロエから絶望的な言葉が紡がれる。

 飛んでいくバンパイアに追撃を入れないければならない。

 動こうとすると、バンパイアが四肢を使って滑りながら体制を整え、土や石を撒き散らしながら止まる。

 バンパイアが立ち上がると、肩から腰にかけて血が出ている。


「キィギィィイ」


 ガラスを擦り合わせたような叫び声をバンパイアがあげる。

 今までとは様子が違う。


 バンパイアが叫びながら腰に差しているレイピアを抜く。

 バンパイアは姿勢を低くして、俺がいる方向から目を離さない。

 近くにたどり着いた騎士がバンパイアに剣を振る。しかし、バンパイアが消え、空を切る。


 バンパイアを探すと離れていたはずのバンパイアがクロエの前にいる。

 レイピアがクロエに迫る。

 クロエを体で押して位置を入れ替える。


 盾にすぐにくるはずの衝撃がこない。

 盾ではなく、脇腹に違和感を感じる。


「アイク!」


 視線を下ろすと脇腹になぜか赤黒い細い棒が刺さっている。

 棒は盾と甲冑の間に存在している。

 レイピアだ。

 レイピアは盾を突き破って、甲冑の装甲も突き破って脇腹に刺さっている。


「嘘、だろ」


 衝撃がなかったのはアダマンタイトの装甲を紙のように突き刺したから。

 荒くなる息。

 血の気が一気に引いていく。


 後ろに下がろうとするが一歩も動けない。

 右手に持っていたバトルアックスから手を離し、右手でレイピアを引き抜こうと刃を握る。右手に鋭い痛みが走る。

 手の内側を保護する革が切れて手を傷つけたか。

 気にせずにレイピアを抜こうとするが、レイピアは少しも動かない。


 視界が狭まっていく。

 血は流れていないというのに、まるで前世の死んだ時と同じように血がなくなっているよだ。

 ……血が流れていない?

 脇腹と手を切っているのにレイピアは血に濡れていない。


 朦朧としてくる意識の中、バンパイアといえば血を吸うと思い出す。

 手足が痺れ何も感じなくなってくる。

 レイピアから血を吸われている。

 血が、足りない。


 ああ……どうやらまた死ぬようだ。


 ………………。いやだ。

 …………いやだ。

 ……いやだ!

 また死にたくない!


「ああああアアアア」


 死を否定するために叫ぶ。

 叫びに応じるように魔力が脈動する。

 血の代わりに魔力が体を循環すると、体が作り変わるかのような感覚を覚える。

 湧き出してくる魔力で体を強化してレイピアを一気に引き抜く。


「ガアアア!」


 力が溢れてくる。

 意味のない盾を捨てるとバンパイアが見える。


 至近距離にいるバンパイアに右腕を振り抜く。

 バンパイアの顔面に右の拳が突き刺さり、バンパイアが吹き飛ぶ。衝撃でガンレットが破損して破片が飛び散る。

 破損したガンレットがなんだ。

 手放したバトルアックスを拾う。


 吹き飛んだバンパイアに駆け寄り、両手でバトルアックスを振り下ろす。

 バンパイアは手でバトルアックスを受ける。

 刃がバンパイアの手に食い込むと、凄まじい硬さ。

 硬さなど無視。全力でバトルアックスを振り抜く。


 バトルアックスに抵抗がなくなる。

 バンパイアの手から肘までの前腕消えている。


「ギィィイ」


 バンパイアが叫びながら、反対の手に持っていたレイピアを突き出してくる。

 振り下ろしたバトルアックスを掬い上げ、レイピアを狙う。

 バトルアックスがレイピアに当たると火花を散らし、レイピアの剣先が空を向く。

 バンパイアの体が泳ぐ。


 掬い上げた勢いを力ずくで止め、バトルアックスを真横に振るう。

 狙うはバンパイアの首。

 バンパイアはバトルアックスが迫ると泳いだ体をそのままに、体を逸らして宙返りする。

 バトルアックスが空を切る。


 宙返りなどと隙だらけの逃げ方に、前進して再びバンパイアを狙う。

 手首を捻り、バトルアックスを振り上げる。

 最も力の入る体制でバンパイアに肉薄する。


 バンパイアは膝を曲げて着地したところ。

 頭部めがけてバトルアックスを振り下ろす。

 頭部に触れる寸前でレイピアが差し込まれ、バトルアックスを止められる。


 止められようと関係ない。力ずくでバンパイアを倒す。

 さらに力を入れると、バンパイアの頭部へバトルアックスが近づいていく。


「ギッィィイ」

「ガアアアアア」


 バンパイアが牙の生える大きな口を開けて叫ぶ。俺も叫び返す。

 技など関係ない。

 力でねじ伏せる。


 バトルアックスが徐々にバンパイアの顔に近づいていく。

 バンパイアがバトルアックスの刃から避けようと左に顔を逸らし体をひねる。

 バンパイアの頬にバトルアックスの刃が触れる。

 全力を超え、全てを出しつ尽くす。


「アアアア」


 バンパイアの持つレイピアごと押し込む。

 頬、首、鎖骨、肋骨。

 バトルアックスが全てを断ち切って、地面に突き立つ。


 バンパイアは二つに分かれた。

 地面に突き立ったバトルアックスを振り上げ、バンパイアの首を落とす。

 確実に殺した。


「グラァァアアアア」


 空を仰ぎ勝ち鬨を上げる。

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