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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第24話 次々に現れるモンスター

 俺は魔力を節約するため、盾でゴブリンの体制を崩してからバトルアックスを振るう。時間はかかるが魔力の消費が少なくていい。

 クロエとパーシーは魔力が多いため、力で押し切ってゴブリンを倒している。

 多い魔力が羨ましい。


「ゴブリンに混じっている低層のモンスターが邪魔だな」

「モンスターが増えすぎて、連携しているように攻撃してくるね」


 モンスター同士は共食いをしないが、連携もしない。

 それでもモンスターの数が増えれば連携を取る意図がなくとも、同時に攻撃してくれば連携しているようなもの。


 モンスターの数が想像以上に多い。

 低層のモンスターは学生でもどうにかなるが、中層のモンスターであるゴブリンは俺たちや騎士が積極的に前に出るしかない。


「ゴブリンが持っている武器がメイスでよかった」


 モンスターの数は多いが、パーティーで連携して倒しているため、喋る余裕はまだある。


「うん。持っているのが槍じゃなくて良かったよ」


 中距離から攻撃する槍だった場合、低層のモンスターが前衛となり非常に戦いにくかっただろう。

 ゴブリンが出てくるのは嬉しくないが、まだ対処できる武器でよかった。


「アイク、魔法を使うわよ」

「クロエ、もうか?」


 まだ余裕があると思っていたのだが、クロエの考えは違うのか。


「押されてきているのよ。このままでは負傷者が増えてしまう」


 クロエに言われて周囲を見ると、林の入り口が近づいてきている。

 最初は前進していたが、モンスターの圧力で徐々に後退してしまっていたようだ。最前線にいる俺たちが後退すると後ろの学生に負担が増える。

 負担が増え、負傷者が増えれば前線を維持できなくなってしまう。


「分かった。魔法を使おう」

「準備に時間のかかる広範囲魔法を使うわ。魔法が完成したら絶対に私の前に出ないで」

「分かった。魔法を準備する間、俺たちがクロエを守る」


 周囲の騎士にも魔法を使うと声をかけ、クロエを囲んでモンスターを倒す。

 モンスターの圧力に負けて後退しないように素早くモンスターを倒していく。魔法を準備するクロエは動けない、後退すれば魔法の準備がやり直しになる。


 クロエの魔力がうねるように動く。

 大量の魔力がゆっくりと大剣へと吸い込まれていき、魔力の形が大剣の形へと変わっていく。


「我、セレストドラゴンの子なり。凍てつくドラゴンの息吹は全ての敵を凍らせ、盟友を守護する盾となる」


 クロエが魔法の詠唱を始めた。

 魔法の詠唱は集中力を上げるために唱えられるもので、難易度の高い魔法を使う場合に使われる。魔法自体が珍しいため、詠唱を使う機会もそうないためとても珍しい。


 クロエの魔力に反応して大剣が薄い青に変わっていき、パキパキと凍るような音を立て始める。

 止まっていたクロエが動き出す。


「薄氷」


 クロエが大剣を横向きに構えると、大剣から薄い氷の刃が伸びていく。

 水平方向に大剣が振るわれると、何の抵抗もないように大剣は振り抜かれた。

 今まですごい勢いだったモンスターが固まったように動かなくなる。


 一瞬の静寂の後、風がふく。

 風に揺られた木が、風に押されて倒れていく。将棋倒しのように次々倒れていく木は地面に倒れると凄まじい音を立てる。

 木が倒れた衝撃でモンスターがバラバラになる。


「すごい……」

「威力はすごいのだけれど、武器が持たないのよね」

「……え?」


 クロエの大剣はヒビが入ってしまっている。

 凍るようなパキパキという音は剣が耐えきれずに壊れていた音だったのか。


「クロエ、この状況で武器がなくなるのはまずいだろ」

「これ以前に作ってもらった大剣よ。新しいのは別で持ってきているわ」

「ああ、古いのを使っていたのか」


 以前に持ち帰った中層の素材や、腱を使った魔力効率の良い武器を新調している。

 見た目はそう変えていないため、古いものだとは思わなかった。


「もう何本か作ってもらった方が良さそう」

「帰ってから発注しよう。今は新しい剣に変えてくれ」


 クロエは鞄の中から新しい大剣を取り出す。


「随分と減ったからこれでしばらくは問題ないわ」

「見晴らしも良くなって敵がいるかよくわかるよ」


 モンスターの亡骸と切り株が前方にある。

 切り株の向こうにある林からモンスターが出てくるかと見いていると、人型の何かが出てくる。服らしきものを着ており、身長は高くもなく低くもない。身長の高いオーガや身長の低いゴブリンには見えない。


「人……? いや、だが服?」

「林の奥から人が出てくるわけないでしょう」

「だよな? でもあれは?」


 俺が盾を地面に突き刺して、人らしきものに指をさす。


「あれは……何?」


 クロエが認識した瞬間、凄まじい勢いで人らしきものが走ってくる。

 身体強化をかなり強くしているのか、とんでもない速度で走っている。

 慌てて地面に突き刺した盾を持って、相手が人でない場合に備える。


「甲冑を着ていないのが不審すぎる。モンスターだと思って対応する」

「ええ」


 短い会話をしたと思ったら、何かはすでに目の前にいた。

 何かはクロエに拳を振り下ろす。


「早い」


 モンスターだという認識でいたため、何とか盾が間に合う。

 軽く殴っているように見えたが、凄まじい威力。踏ん張りが効かずに盾ごと後ろに下がってしまう。


「アンデッドよ!」


 クロエの声に殴ってきた者の顔を見ると、青白い顔に裂けた口。口から大きな牙が生えている。白目のない黒い瞳は人ではない。

 近くで見ると人には一切見えない。


「グールか?」


 確か中層のモンスターにアンデッドのグールがいたはず。


「違う! ユニークモンスターのバンパイアだ!」


 周囲にいた騎士が悲鳴を上げるように叫ぶ。


「ユニークモンスター!?」


 中層のモンスターが出てくるとは聞いていたが、ユニークモンスターまでダンジョンの外に出るのかよ!?

 部屋の主としてダンジョンに篭っていろよ!


「距離を取れ! 生半可な実力では即死するぞ!」


 叫んだ騎士に従い、慌ててバンパイアから距離をとる。

 距離を取ったところで、先ほどの速度で走られれば多少の距離など意味がないのは分かっている。しかし、他に手立てが思いつかない。

 なぜかバンパイアは俺を殴った場所から動かず、距離を取るのに成功する。


「なぜ襲ってこない?」


 バンパイアは俺たちを見回している。

 バンパイアが来ている黒いロングコートが風で煽られ、音を立てる。コートの中にはレイピアらしき剣があるのが見える。


「武器があるのに素手で殴ってきたのか。こちらを試しているのか?」

「最悪の趣味ね」

「クロエに同意する。だが趣味のいいモンスターがいるとも思えないがな」


 今はクロエと話せているが、バンパイアを襲えば絶望的な戦闘が始まるだろう。

 震えそうになる手を押さえ込むため、盾とバトルアックスを痛いほど強く握り込む。

 戦いが始まるのが怖い。


「魔力を使い切るつもりで戦うわよ」

「ああ」


 クロエの言葉に皆が一斉に魔力を活性化させる。

 この場にいる全員から、うねるような魔力が感じられる。

 バンパイアは魔力が蠢いているのが感じられないわけではないだろうに、まだ余裕を持ってこちらを見回している。


「私を舐めているのを後悔させてあげる!」


 クロエが踏み込むと土が舞い上がる。

 クロエが消えたと思ったら、バンパイアの右前にいる。クロエが大剣を振り下ろすと、バンパイアは剣の範囲ギリギリで避けた。


「シッ!」


 クロエの反対側からパーシーがメイスを振り上げる。

 頭部を狙ったメイスはバンパイアが直前で避けたがかかすって、少量の血が舞う。


「ギイィィ!」


 初めてバンパイアは怒ったように腕を振り上げる。

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