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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第22話 2日かけての移動

 4日が経ち、俺を含めた学園の生徒は王都の駅に集まる。

 今回は専用列車が複数用意されているが、今日移動するのは学園の関係者が大半。

 騎士団や他の人員は数日前から現地で準備している。


 深層ダンジョンの討伐には非戦闘員が数千単位で動員されている。

 深層ダンジョンがある場所は未開拓であるため、事前に準備しなければ大規模に人を動かしても寝る場所がない。非戦闘員は深層ダンジョン近くに拠点を作り、戦闘を支援するために集められた。


 戦闘員と非戦闘員の人数を合わせると、今回の深層ダンジョンに動員される人数は一万人を超えているらしい。

 人を動かすだけでも大変だろう。


 大変だったのは俺も同じ。

 列車に乗り込み、椅子に座ると安堵する。


「準備が間に合って良かった」

「4日だと実質準備できるのが2日で大変だったね」

「ああ、装備持っていくだけなら良かったんだろうが、装甲車を送るなら2日前と言われて大変だった……」


 あまりの忙しさに、パーシーに色々と手伝ってもらった。


「今日は列車に余裕がないみたいだね」


 普段のダンジョン実習とは違い、学園の関係者だけでもすごい人数がいる。

 専用列車が複数ないと運べないのも納得の人数。

 人数は多いが、椅子に座れるようには配慮されている。


「準備は間に合ったのだし、あとは現地近くの街まで座っているだけか」

「その座っているのが長いんだけどね」

「朝から出て到着予定は夜だったか」

「専用列車でなければ泊まらないと1日でたどり着けないね」

「未開拓の場所は当然遠いか」


 1日乗っているだけで着くのだ、未開拓の場所にしては近い方だと思っておく。

 パーシーと喋っていると列車が動き出し、順調に速度を上げていく。




 通る駅を全て無視して、列車はスカーレットドラゴン王国を西に進む。

 昼食、軽食、夕食と食事が出たところで目的地である列車の終着駅へと到着する。


「あー」


 伸びをすると体の骨がバキバキと鳴って少し楽になる。

 列車に乗っていた皆が同じように体を伸ばしている。


「真っ暗だね」

「予定通りだろ」


 星空がきれいだ。


「確かに予定通りだけど、ここから予定通りに行くかな?」

「どうだろな……」


 早めに寝たいところだが寝床はどこにあるのだろうか。

 列車の駅はあるが、王領として開拓されている小さな街に全員が泊まる場所はないだろう。

 いつものようにテントに泊まるとは思うが、暗い状態で移動がうまくいくのだろうか。


「明日は深層ダンジョン近くの拠点まで移動するだけとはいえ、早く休みたいよね」

「そうだな」


 列車は暇で寝たりもしていたが、横になれたわけではないからな。


「明日の移動は半日程度だったか」

「馬車らしいよ」


 線路がなくなってからの移動方法は意外にも車や馬車。

 未開拓の土地であるため道路すらないかと思っていたが、整備された道路があるため乗り物に乗っていればいいようだ。今は暗くて見えないが、明日には道路が見えるだろう。


「装甲車はもう現地まで行ってしまったらしいからな」

「僕たちだけ車に乗るわけにもいかないよ」

「それもそうだな。しかし、歩きよりはいいが、体が固まってしまうな」

「明後日は休みらしいから体をほぐすしかないね」


 移動が長いためか、休みが1日用意されている。

 しかし、装甲車の確認やらガトリングの運用方法など話し合う必要が色々とある。王都でも多少話はしたが、現地でもう一度話し合いを予定している。


「俺は明後日の休み、休めるのかな?」

「……がんばれ」

「うん……」




 いつもより少し遅く起床して、テントから外に出る。

 大量のテントに簡易の家が建てられた急拵えの拠点。

 移動は全て終わり、深層ダンジョンの近くに用意された拠点までたどり着いた。


「アイクも起きたんだ。おはよう」


 パーシーの近くにはクロエがいる。


「パーシー、クロエ、おはよう」

「顔を洗ってくるといいよ」

「ああ」


 拠点内を流れている水で顔を洗う。

 拠点は川から水を引いており、好きに水が使える。

 近くには頂上付近には木が生えていないほど高い山があり、山から水が流れてきているようだ。山とは反対方向には海があるのだが、かろうじて見える程度でかなり距離がある。

 拠点は山と海の間にある平地に作られている。


 顔を洗い終わるとライナスに付き合ってもらいストレッチ。

 2日間の移動で体が固まってしまったため、体をほぐす。明日は戦いになるので、いつも通りに動けるようにしておかなければいけない。

 体をほぐした後はパーシーとクロエに誘われて朝食を食べる。


「しかし、すごい人だな」

「拠点全体だと一万人を超えているらしいからね」


 朝食をとりに行くと、料理を作っている料理人が大変そうだった。

 俺たちの戦場は明日だが、料理人の戦場は今もか。


「この後はベアトリクス様に会いに指定された場所に行くか」

「どこを指定されたの?」

「拠点の外だと聞いている」

「外?」

「なぜか外を指定された。大きな建物が少ないので、集まるのが難しいのかもな」


 簡易の家は非常に少なく、騎士団の寝床にしても数が足りていないのではないだろうか。

 話し合いをするための場所が限られていそうだ。


「僕も一緒に行っていいのかな?」

「いいんじゃないか? 早めに出るつもりなので、食べ終わったら行こう」

「うん」


 食事を終わらせると拠点から外に出る。

 指定されたのは堀の近く。拠点は簡易的な堀が作られて水が貯められている。

 指定された場所に向かうと、ベアトリクス様はまだいない。

 のんびりと待っていると、車が近づいてくる。


「あれは装甲車じゃ?」

「テラパワーで見た車だね」


 装甲車が滑らかに目の前で止まる。

 車の中から降りてきたのはベアトリクス様。

 ベアトリクス様は軍服のような騎士の制服を着ている。騎士団の制服と装甲車が似合うな。


「待たせたか」

「いえ、拠点内にいても暇でしたので早めにきておりました」

「拠点には娯楽になりそうな施設がまだ何もないからな」


 拠点の中はとても暇。

 荷物は最小限のため持ち込んだものは少ない。散歩すら邪魔になるため、友人と喋っている程度しか暇つぶしがない。


「ところで装甲車をお使いになられているのですか?」

「ああ、すまないが借りていた。この車は走破性がいいな、普通の車では止まるような場所でも走れる」

「車の設計が荒地を走行できるように作られたものですので、普通の都市内を走る車とは設計が違います」


 師匠が作った装甲車は四輪駆動になっている。

 普通の車とは運転の仕方が違うのだが運転に慣れた人がいるようだ。先行して輸送するため車の操作方法を記入した紙を用意しておいたため、読んで覚えたのだろう。


「装甲車を量産できるか?」

「量産ですか……この装甲車は実験用に作られた車両でして、商品として売る気は無いのです」

「売る気がない?」

「ええ、四輪駆動の操縦が難しく、このまま売るのは無理だろうと」


 操縦が難しいのは構造が複雑であるため起きている。

 しかも構造が複雑だと、製造する部品が増える。部品が増えると価格にも上乗せされ、車両価格が上がる。師匠が売るのは絶望的だと説明していた。


「乗りこなしているぞ?」

「そのようですね……結構難しいと思うのですが」

「では適性があるものを集めれば問題ないな」


 数日で乗りこなす人がいるなら適性がある人はいるのだろうな。

 操縦が無駄に難しく、高い車を買う人はいないと思っていたんだけどな……。


 しかし、車両の量産か。

 後ろにいるライナスを見ると顔を強張らせている。

 通常の生産にガトリングときて、装甲車。どう考えても生産追いつかない。


「ベアトリクス様、正直申し上げますとテラパワーの生産能力ではすぐに車両を量産するのは難しいと思います」

「ふむ」

「装甲車の量産についてはまた今度お話しいたしませんか」

「分かった」


 本来のガトリングの運用などの話し合いに戻る。

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