第20話 竜騎士学院への進学許可
パーティーでの鍛錬の前に、教師から呼ばれて職員室へと向かう。
学園で呼び出しは珍しい。俺は比較的真面目な生徒ではあるつもりだが、何かやってしまっただろうか?
心当たりがないと思いながらも学園の職員室へと向かう。
「アイザックです」
「ああ、こちらだ」
自分を呼び出した教師のもとに向かう。
教師は怒っているような雰囲気はなく、むしろどこか嬉しそう。教師を喜ばせるような心当たりもなくなんだろうか?
「おめでとう、アイザック。王立竜騎士学院への進学許可が出た」
「あ。ありがとうございます」
すっかり竜騎士学院への推薦をお願いしたのを忘れていた。
「アイザックは実力があるのに騎士団へ所属するのが積極的ではなかったので心配していたが、竜騎士学院へ進学を考えていたのか」
「はい、推薦を頂きまして……」
行きたくて竜騎士学院に行くわけではないのだよな……。
真面目に竜騎士学院に行きたくて入学を志望している人とは違い、命を守るためにやむにやまれず入学するために推薦をお願いしている。若干、真面目に竜騎士学院へ行くのを狙っている人への申し訳なさがある。
「そうか。アイザックなら竜騎士学院でも素晴らしい成果を上げられる。応援している」
「ありがとうございます」
返答に困り、無難にお礼を伝える。
「呼び出した理由は以上だ。改めておめでとう」
「ありがとうございます」
職員室を退出る。
教師は俺が竜騎士学院に行くのがよほど嬉しかったのだろう、何度も祝福してくれた。
少しは竜騎士としての称号を真面目に狙うべきだろうか……。
悩みながらも廊下を歩いてパーティーに与えられている部屋に入る。
「アイク、呼び出しはなんだった?」
「竜騎士学院の入学が認められたってさ」
「本当!? おめでとう」
「ありがとう」
パーシーは笑顔で俺を祝福してくれる。
「学園を卒業しても一緒になりそうだね」
「パーシーは国の騎士団に決めたのか?」
「僕は国から色々と支援してもらっているからね。それにウォールナットスクワローには父と兄がいるから、何年かは国の騎士団で鍛えるつもり」
「それなら俺と一緒に第二騎士団かな。学園でパーティーが一緒の者は、騎士団が一緒になる可能性が高いとベアトリクス様が言っていたからな」
騎士団に所属してからもパーシーと組めるのは心強い。
組めて嬉しい理由は魔力量の多いパーシーが強いのもあるが、お互いに慣れているため連携が取りやすいのが一番重要。慣れない相手同士でダンジョンを攻略するのは命取りとなる。
「私もスカーレットドラゴン王国に残ろうかしら」
「クロエは残るか自分で選べるのか?」
クロエは割と好き勝手に動いているように思えるが、セレストドラゴン王国の第二王女であるため自分の意思では決められない場合もある。
クロエの進路については俺自身の進路が不確定であったため、あまり深い話を聞かないようにしていた。
「帰還命令は出ていないし、帰還するか残るか好きに選んでいいのだと思うわ。残るのなら第二騎士団に所属ね」
今更だが他国の王族が騎士団に所属しようとするのに違和感を覚える。
「セレストドラゴン王国の王族がスカーレットドラゴン王国の騎士団に所属していいんだな」
「形としてはセレストドラゴン王国からスカーレットドラゴン王国に派遣されている状態ね。留学と同じ形で騎士団に所属するの」
「なるほど」
直接騎士団に所属するわけではないのか。
クロエが形としてはと言っているあたり、制度が形骸化していそうだが友好国であるため問題にならないのかな。
「まだ卒業まで時間があるからスカーレットドラゴン王国に残っていいか尋ねておくわ」
「一緒に騎士団に行けるといいな」
「ええ」
クロエが言ったようにまだ卒業まで時間はあるが、卒業後の進路を話すと卒業が近いのだと実感する。
今世では学校の卒業は初めてであり、感慨深いものがある。
考えに浸っているとパーシーが話しかけてくる。
「そういえば、アイクが以前住んでいたアックスオッターのタウンハウスに人が出入りしているみたいなんだ」
「人の出入り?」
「そう。アイクは出入りしていないんだよね?」
「ああ、俺だけではなく使用人にも近寄らないように伝えてある。おそらくデレクの関係者が出入りしているのだろうな……」
「やはりそうか」
卒業が近いなら入学も当然近い。
俺は今年度で卒業するのが決まっていため、学園でデレクに会うことはない。学園出会う可能性はないが王都で出会う可能性はある。
「しかし、タウンハウスの出入りをよく知っているな?」
「アイクとの付き合いもあるから家のものに調べさせていたんだ。最近になって動きがあったから注意していた」
「そうか。教えてくれてありがとう。しかし、デレクは親族を毒殺するような相手、パーシーも注意してくれ」
「うん」
良い話題の後に悪い話題は気が滅入るな。
ここは気分を変えるような話題を出そう。
「デレクが入学してくるまでまだある。今はモンスターの腱を乾燥させた素材を試さないか?」
「もう乾いたんだ」
「ああ。素材として使うのであれば薬品に漬けた方がいいのだろうが、今回は実験なのでそのまま乾かしたので早かった」
「なるほど」
乾燥させた腱を持って外に出る。
腱に魔力を通すだけなら室内でもいいが、魔法を試したいため広い場所へ移動する。
「まずは魔力効率を確認する」
パーシーに紐のような腱を渡す。
「乾燥前より少し魔力が通りにくいかも……? 僕の感覚でしかないから間違っているかも」
パーシーが何かを思い出すかのように目を閉じている。
以前に試したのが数日前のため、どれほど魔力効率がいいか覚えていないのだろう。そもそも魔力は感覚で使うもので、何か数値で測れるわけではないからな。
なんとなく効率が良いか悪いかがわかる程度でしかない。
「実験とはいえ、そこまで正確でなくていいさ」
「分かった」
プレッシャーになるため言わないが、三人だとパーシーが一番感覚が鋭いため信頼している。
「次は武具に巻きつけてみよう」
パーシーがメイスに腱を巻きつけ、振り回して確認している。
「微妙にだけど魔力の効率がいいかも」
「おお」
「以前にアイクが防具にモンスターの革があるので、若干効率がいいって言った意味がわかったかも。本当に若干違うね」
俺も試してみると、本当に若干だった。
意味があるか微妙なところだが、少しずつ積み重ねて役に立つのを期待するしかないな。
「さあ、次は魔法を使った時に効率がいいかだ」
ここからが俺としては本番。
遠距離魔法が使えるかどうかが一番重要なのだ。
「アイク、どうやって試すの?」
「武具を通しても誤差程度であるなら、腱のみで試すべきだと思う」
「わかった。それじゃ、やってみるよ」
パーシーの魔力が一気に動き、腱を通して空中に出る。空中に出た魔力は凄まじい勢いで拡散していく。
「ああ……」
「予想はできたけど、効率は変わらないね」
「完全に失敗か……」
劇的に減るとは思っていなかったが、少しも変わらないとは……。
流石に肩を落とす。
「完全ではないと思うよ。少なくとも武器や防具に使うにはいいんじゃない?」
「ああ、遠距離魔法以外には使えるか」
「アイクは腱をそのまま乾燥させたと言っていたよね」
「そうだな、そのまま乾燥させている」
「錬金術でさらに素材を混ぜれば効果が上がる可能性はないの?」
「なるほど。試してみるか」
アダマンタイトを作るときに使う素材など、いくつか候補が思い当たる。
しかし、武具前提だと近距離で戦うしかないのか……。
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