第2話 王立魔法学園
本日2話目の投稿です。
久しぶりに王立魔法学園へ登校する。
何事もなく王都へ帰ってきたが、王都の住居はアックスオッター家が所有するタウンハウス。すぐにでも家を出ていく必要があった。
新しい家を決め、引っ越し作業を終え、なんとか日常を送れるようになった。
制服に着替える。
王立魔法学園の制服は軍服のような堅苦しさがある。
学園自体が騎士の養成場であるため、制服の堅苦しさも間違っていない。貴族は例外なく全て騎士である。つまり学園を卒業しなければ貴族になれない。
別腹でしかも庶子だった兄のデレクは学園を卒業していない。いつから学園に来るかはわからないが、伯爵家の当主になるのであれば近いうちに王都にくる。
俺が急ぎタウンハウスから引っ越したのは兄と鉢合わせないため。
「行ってくる」
「いってらっしゃいませ」
引っ越した家の玄関で使用人から見送られる。
アックスオッター家の使用人ではなく、個人で雇っている使用人。人数は少ないが信用している。
魔石を燃料にする自家用車に乗って学園へと向かう。
地球の感覚で見ると車はクラシックというかアンティークというか、随分と古い形をしている。それでもセリアンスフィアでは最新式の車。そもそもアックスオッターでは馬車が主流であり、車は滅多に見ない。
一定の間隔で軽い音を立てながら車は走っていく。
「アイザック、迎えはどうする?」
「いつも通り夕方で」
「了解」
車の運転手は初老の老人。
アライグマの獣人である老人は本来、錬金術師。貴族である俺に錬金術を教えてくれた師匠だ。師匠はライナスと同じくらい信用している。
本当は運転手を別の人にしたいのだが、運転手を譲らないため運転を任せている。
師匠の運転は滑らかで周りを見渡す余裕がある。
車の窓から見える王都の街並みはアックスオッターより発展している。
ビルが立ち並び、多くの人が忙しく行き交う。
産業革命時代を思わせる街並みは活気に満ち溢れている。
車は活気に満ち溢れた王都の中を軽快に走り、学園の前で止まる。
「夕方に迎えにくる」
「頼みます」
俺は車から降り、王立魔法学園の校舎に向かって歩き出す。
校舎は煉瓦造りで赤茶色の大きな建物。
学園の敷地は王都の中でも特に土地が広く、校舎の周りには騎士としての教育に必要な設備が揃っている。
無骨な作りの校舎を歩き、教室へと向かう。
「アイク?」
教室に入るとクラスメイトから登校してきたことを驚かれる。
領地を治める伯爵と後継者である長男が死んだため、そう簡単に戻って来られるとは思われたいなかったのだろう。実際俺もこんなに早く帰ってくるとは思っても見なかった。
事情をクラスメイト全員に話すわけにもいかず、実家は問題ないと伝えておく。
実際は逆の問題だらけなのだが。
「授業を始める」
教師が教室に入ってくると、クラスメイトは真面目に授業を聞く。
一時間座学の授業を受けた後は、ひたすら体を動かす訓練が待っている。
ダンジョン用のアダマンタイトで作られた高重量の鎧を着て、さらに盾とバトルアックスを背負う。学園に入学してから徐々に増やされていった装備の重量は今では100キロ近い。
「アイク、久しぶりで辛いんじゃないか?」
クラスメイトにからかわれる。
「一週間程度で鈍るような鍛え方はしていない」
「それもそうか」
教室から外に出ると昼休みまでひたすら訓練が続く。
訓練は総重量が100キロ近い装備を着て、グラウンドをひたすら行軍する。訓練したことでなれたのもあるが、獣人は前世の人間より力が強くなる。鍛えないと地球の人間とそう変わらないため、入学した当初は本当に地獄だった……。
訓練が終わると凄まじい量の昼食を食べる。
食べるのも訓練に含まれている。
学園に入学して一年もすればマッチョになっている。
昼食が終わると休憩が三時間与えられる。大体は体を休めるため寝て過ごす。
王立魔法学園だというのに魔法のかけらもない。
筋力で全てを解決していく。
休憩が終わるとパーティーに分かれて自由行動。
休憩を早めに切り上げ、パーティーに与えられた部屋に移動する。
部屋には充実したトレーニング用の道具の片隅に机と椅子が置かれている。ここもまた筋肉に支配されている。
「アイク」
声変わりをまだしていない高い声が俺の名前を呼ぶ。
部屋に入ってきたのはパーティーメンバーのパーシヴァル・オブ・ウォールナットスクワロー。パーシヴァルは子爵家次男で15歳の俺より2歳年下の13歳。二つ年下ではあるが同級生。
クラスの中でも最年少であるが特に優秀な生徒。
「パーシー」
愛称はパーシー
パーシーも竜人であり、茶色の角に特徴的な緋色の髪の毛。
将来はかっこよくなりそうだが、今は美少年といった風貌。
「最低でも一ヶ月は王都に戻って来られないと思っていた。」
「俺もそう思っていたよ……」
「え?」
パーシーが首を傾げる。
パーティーを一緒に組んでいるパーシーにはアックスオッター伯爵家で起きたことを話す必要がある。
「少し聞いてくれ」
「うん?」
パーシーはよくわかっていなさそうだが頷いてくれる。
「一週間前、王都で父と兄が死んだと訃報を聞いてアックスオッターに戻ったのは知っていると思う」
「うん」
当然学園に事情を説明してから王都を後にしている。
他にも王宮へ父と兄の死亡したようだと一報を伝えた。
「急ぎ列車に乗って帰ったのだが、父と兄の葬儀はすでに終わっていた」
「え?」
パーシーが戸惑うのも当然。
貴族はダンジョンで死ぬことが多く、遺体がない場合も多い。
葬儀での遺体の重要性は低く、遺体の状態を考慮した葬儀が執り行われることはない。そのため継承権が第二位に当たる俺が葬儀に参加していないのはおかしい。
「アイクって母親も亡くなっていたよね?
「10歳の時にダンジョンで死んでいる」
母の死は地球で生きた記憶がなければ泣いて塞ぎ込んでいたと思う。塞ぎ込んでいたら父が無理やり訓練に連れ出したとは思うが……。動けばどうにかなるというのが父の理論で、良くも悪くも脳筋だった。
母の死は悲しかったが、ダンジョンとは命をかけて向かう場所なのだとよく理解した。
母の死後、ダンジョンという場所があまり好きではない。
「それじゃ、誰が葬儀を取り仕切ったの?」
「兄が取り仕切った」
「兄? 亡くなったんじゃ?」
「異母兄弟がいる」
「アイクって異母兄弟がいたの? しかも兄?」
デレクは最近アックスオッター家の一員になったため、存在自体を知られていない。
「生前、父は遊び回っていたようだ」
「外に子供がいるのは聞かない話ではないけど……」
貴族に限らず竜人は男女問わずもてる。
俺が生まれたスカーレットドラゴン王国の王族は竜人。また生まれながらに魔力が多いのも竜人。
魔力の多さは出世につながりやすく、さまざまな種族から好意を向けられる。
さまざまな獣人が住む世界ではあるが、不思議なことに他の獣人同士でも子供が生まれる。生まれる子供はハーフにはならず、両親どちらかの種族として生まれる。
デレクの母はコウモリの獣人で竜人ではない。
「父が再婚した相手の連れ子が兄なんだが、父の子供でもある。父が再婚すると同時に、兄は竜人であるためアックスオッター家の一員となった」
俺は三男であるが、次男であるデレクは庶子だったこともあり継承権が俺より下に設定されている。俺とデレクの関係はややこしい。
そもそも継承権があったとしても学園を卒業しなければ貴族として認められないのだが……。
「大きくなってから一族に招いたの!?」
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