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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第18話 魔力の実験

 ダンジョン実習が無事終わり、2日間の休日を終えて学園に登校する。

 今回のダンジョン実習は想定外にも中層まで行って大変だった。クロエとパーシーの魔力が無くなってからは、同じように魔力がなくなった騎士に守られながら1層まで戻り、第二騎士団の帰りをまった。

 ベアトリクス様たち第二騎士団はダンジョンの核を壊せ、ダンジョンは消滅している。中層は29層まであったそうで、6年以上ダンジョンが放置されていた可能性があるようだ。


 ベアーレイクで一泊した後、王都に戻ってくると休み。

 休みとはいっても、休日はひたすら寝て過ごした。

 ハーバートにガトリングについての話をしに行かなければと思いながらも、動く元気がなく寝ていた。


 まだ疲れが抜けきらない気はするが学園は休めない。

 教室に着くと椅子に座って机に覆い被さる。

 このまま寝てしまいそうだ。座学は一時間しかないのに寝ずに耐えられるだろうか……。


「アイク、まだ疲れているの?」


 声からクロエだとわかる。

 伏せていた顔を上げると、元気そうなクロエがいた。


「クロエは平気そうだな」

「ええ、もう元気よ」

「若さが羨ましいよ」

「私と2歳しか変わらないでしょう」


 クロエと俺は前世を合わせた精神的な年齢はともかく、肉体的な年齢はそう変わらないはず。なぜここまで体力の回復に差があるのか……。

 魔力量の差が体力の回復にも関係しているのか?


 授業が始まるまでクロエと喋っていると教師が教室に入ってくる。

 一時間の授業を寝ずに耐えきり、バカみたいな運動量の訓練を受け、山盛りの昼食を食べて昼寝。

 昼寝から起きるとパーティーで使用する部屋へと移動する。


「朝に比べると元気になったわね」

「昼寝したらすっきりした」


 訓練が実習後だったので軽かったのもあるだろうか。軽いといっても100キロ近い装備をつけて数時間走らされたのだが。

 感覚が変になってきている気がする……。


「さて、今日は何をするか」

「アイク、モンスターで魔力の実験しない?」

「ああ、試さないと肉が腐るな」


 クロエが凍らせたオーガをもらってきた。

 魔法で凍っているため簡単には解けないが、あまり放置すれば溶けて肉が腐ってしまう。


「部屋でオーガの解体はできないから、校庭の一部を借りに行こう」

「そうだな」


 教師に相談しにいくと場所を指定された程度で簡単に借りられた。

 学園でモンスターの解体方法を実践で教わるため、血で汚れても問題ない場所が用意されている。

 指定された場所に移動してオーガを取り出す。


「改めて見ても大きい」


 3メートル近いオーガは大きい。

 生きたまま凍らせているため彫像のように立体的。

 口を大きく開け、今にも襲いかかってきそう。死んでいるのは分かっているため、襲われる心配はいらない。


 早速解体を始める。

 まず欲しいのはアキレス腱周り。

 オーガの足元を解体していく。

 足は丸太のように太く、体脂肪が少ないのか筋肉の筋まで見える。とても硬そうに見えるが、死んでいれば案外簡単に解体できる。解体自体は何度もやっているため、皆で協力して作業してしまう。


「オーガのコアがあった」


 素早く魔石転換液が入った大きな瓶を取り出す。


「パーシー、変わる」

「お願い」


 モンスターを解体する時に注意しなければならないのがモンスターのコア。

 緑色の石に見えるコアは傷をつけたり魔力を流せば結構な威力で爆発する。身体強化していれば耐えられないほどではないが、あえて失敗したくはない。コアに傷をつけないよう周囲の肉を大きく切って慎重に切り離していく。

 コアの分離が成功すると魔石転換液へとつけ込む。緑色の石の透明度が若干上がる。


「よしこれで簡単には爆発しない」


 コアは錬金術で作り出した液に漬け込むと魔石へと変わる。

 魔石は様々な燃料として使われており、小さな魔石でもとんでもないエネルギーを溜め込んでいる。銃弾の火薬としても混ぜられており、硝煙が緑色なのは魔石由来の色。


 今は使い道のあるモンスターのコアだが、昔は使い道がなく厄介な存在だったと聞いている。破棄するコアの数が増えるととんでもない爆発を起こすため、処理が大変だったようだ。

 ダンジョンに捨てて爆発させたりもしていたようだ。


 魔石となったコアを鞄にしまって、解体を再開する。

 後は爆発する部位はないため、解体はすぐに終わる。


「見事な赤身肉」


 パーシーがオーガの足から取り出した肉を持っている。


「美味しそうだけど、今は食べる目的じゃないからな」

「肉でも武器強化ができるか試してみる?」

「試すだけ試してみるか」


 肉を強化してなんになるのかという問題はあるが、魔力が拡散しないかどうかはわかるだろう。


「魔力を込めてみる」


 パーシーの魔力が赤身肉に流れ込んでいく。


「どうだ?」

「あー……自分の体を強化するほどではないけど、武器を強化するより魔力の効率がいいかも」

「おお、成功か」


 一発目から成功とは幸先がいい。


「でも肉では戦えないよ」


 肉が硬くなっても所詮は肉。

 刃のついた武器のように切れ味が上がるわけではない。


「骨も一応試してみるか。力を入れて振るえば砕けそうだが」

「そうだね」


 オーガの大腿骨をパーシーに渡す。


「うーん、肉より若干効率いいかも?」

「部位で結構違うものなのか」

「そうみたいだね。振ってみるよ」

「ああ」


 パーシーが数回素振りをした後、近くにあった岩に向けて大腿骨を振り下ろす。

 鈍い音がして岩が砕ける。


「ヒビが入っている。もう数回振ったら砕けそうだ」

「やはりダメか」


 期待していなかったが、実際に使えなさそうだとわかると残念だな。


「骨だけで一度は耐えられるのなら、モンスターの死体を振り回せば武器にはなる?」

「よほどの緊急事態なら良さそうだが、そんな状況になりたくないな」

「それもそうだね」


 次は本命のアキレス腱などの筋を使う。


「肉と同じように筋だけでは使い物にならないか」

「武器に巻きつける?」

「生の筋を自分の武器に巻き付けたくないな……」

「せめて乾燥させたいね」

「武器に巻きつけるのは今度にして、魔力が通りやすいか確認するか」

「それもそうだね」


 今まで実験していたのがパーシーであるため、筋をパーシーに手渡す。


「パーシー、どうだ?」

「骨とそう変わらないかも」

「使えそうだな。乾燥させて使えるかはまだわからないが、試す価値はあるか」


 どちらにせよ生の状態で使うわけにはいかない。


「他の部位も試そうよ」

「ああ」

「まずは——」


 試した結果、ほとんどの部位が魔力を通しやすいのが分かった。

 特に貴重な素材として使われるオーガの角や鋭い爪が魔力効率がいいようだ。アダマンタイトなど錬金術で使われるのも魔力効率が関係しているのだろう。


「肉も使えたが使い道に困るな」

「誤差な気もするけど、効率のいい部位が食べられない場所が多かったのが大きいね」

「モンスターは大量に狩られるから、効率のいい部位だけ集めてもあまりそうだ」


 あえて肉を使う意味はあまりない。

 3メートルの巨体から取り出された肉をどう処理するか。


「アイク、お腹が空いたわ。オーガの肉を食べない?」


 実験に付き合っていてくれたクロエの発言に戸惑う。


「二足歩行のモンスター食べるのか?」

「オークをよく食べるじゃない」

「それもそうか」


 実際に動いているのを見たためか、忌避感が出てしまったようだ。

 しかし、中層のモンスターでも肉は普通に売っていて、好き嫌いはあれども普通に食べられている。俺も今までに何度も食べており、今更気にする必要はないか。

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