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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第17話 ゴブリン

 ゴブリンは大声を出しながら頭をふる。

 鋭い牙の生えたゴブリンは威嚇するように口を大きく開けている。ゴブリンの持った剣が俺の方を向いており、標的が俺になったのがわかる。

 そこ知れぬ迫力をゴブリンから感じる。


「おお!」


 ゴブリンに負けない大声を出して萎縮しそうになる自分を奮い立たせる。

 低層のモンスターも最初は怖かったが、今では普通に対処できる。ゴブリンも同じであると自分に言い聞かせる。

 怖くない!


「ギャギャギャ!」


 俺の声に反応したのかゴブリンが叫びながら剣を振ってくる。

 剣は乱暴に上から振り下ろされる。思ったよりも剣の速度が速い。

 しかし、見切れないほどの速さではない。

 いける!


 剣に対して盾を少し斜めに構える。

 剣が当たった瞬間に火花が散って凄まじい力が盾から手に伝わる。

 想像以上に重い!

 ゴブリンの力に負けないように盾を構え続けていると、剣が盾の上を滑っていく。

 剣が滑っていくためゴブリンの姿勢が完全に崩れた。


「ギャ!」


 ゴブリンが俺を見ながら口を開ける。


「ふっ」


 バトルアックスを力の限り振り下ろす。

 はからずも振り下ろす攻撃はゴブリンと同じ。

 バトルアックスは間抜けに口を開けたゴブリンの首から斜めに刃が入っていく。ゴブリンの体に刃が入り込むと、石に当たったかのような手応えを感じ、バトルアックスが止まらぬように力を入れる。


 全身の筋肉を使ってバトルアックスに力を込める。

 俺から見て右の首元から、左の脇腹にまでバトルアックスの刃が通り抜ける。

 ゴブリンは血を吹き出しながら、二つに分かれて地面に落ちる。

 体が二つに分かれたゴブリンは即死。


「見事」


 ベアトリクス様の声でゴブリンを倒した実感が湧く。


「倒せました」

「危なげなく、安定していた」


 想像するよりは簡単に倒せたようには見える。

 しかし、想像以上にゴブリンの動きが早く、力が強かった。しかも低層よりも多く魔力を込めていたのに、ゴブリンの体にバトルアックスが当たると石に当たったような手応え。

 魔力を多めに使っていたため対処できたが、同じような魔力を使っていた場合ゴブリンを一撃で倒せたか怪しい。

 見ているだけではわからなかった強さが対峙するとわかる。


「いえ、魔力を多く使わなければ苦戦しました。まだまだです」

「最初から魔力を節約しようとしなくていい。中層のモンスターを倒し慣れれば力の抜きどころがわかってくる」

「はい」


 そうだ、初めての中層で怪我をせずにモンスターを倒せた。今はモンスターを倒せただけで十分だ。

 緊張が解けて、大きく息を吐く。


「アイザック、少し休んでいなさい」

「分かりました」


 指示に従って後ろに下がる。


「クロエも戦ってみるか?」

「いいの?」

「一戦くらいかまわない」

「ならやってみるわ」


 俺と違ってクロエは最初から乗り気。

 魔力量の多いクロエであれば危なげなく倒せるだろう。遠距離魔法の魔力を残す必要があるが、身体強化と武器強化はそう魔力を使わない。

 ゴブリン相手に魔力を多めに使っても誤差範囲。


「油断しないように」

「わかっているわ」


 クロエが身長ほどもある大剣を抜く。

 騎士が一体のゴブリンを連れてくると、クロエが切り掛かる。

 ゴブリンはクロエの大剣を受け止めようと剣を前に出す。俺が相手したゴブリンと違う動き。クロエが小さいため受け止められるとでも思ったのか?

 クロエの身長はそこまで大きくないが、身体強化を使っているため体の大きさと力は関係がない。


 同じ魔力を使うのであれば筋力がある方が勝つが、クロエは常人の十倍近い魔力を持っている。

 大量の魔力を使いこなすクロエの剣が受け止められるわけもなく、ゴブリンは受け止めようとした剣を無視して切り捨てられる。

 あっけない。


「手応えがなさすぎるわね」

「力が上まればそんなものだ。アイクのような戦い方は珍しく、クロエの倒し方が剣を持つゴブリン相手には正攻法とされている」

「そうなの?」

「力で押し切った方が早い」

「なるほどね」


 清々しいほど脳筋……。

 ゴブリンは技とかなさそうな太刀筋だったが、騎士も実はそう変わらないのか……。

 一応、武器の扱い方は学園でも教わるが、最後は力でねじ伏せる。


「さて。皆、順番にゴブリンと戦っておくといい」


 皆というのは、パーシーだけではなく従者たちも含まれているようだ。

 パーシーと従者たちは当然のように頷き、武器を構える。パーシーが倒せるのは当然だが、従者たちも若干苦戦しながらもゴブリンを力で倒し切る。

 俺が覚悟を決めながら戦ったのはなんだったのだろうか……。


「よく鍛えられている」

「ありがとうございます」


 パーシーが爽やかな声でベアトリクス様にお礼を伝えている。


「礼は必要ない。少し早いが第二騎士団に所属する皆を鍛えただけなのでな」


 第二騎士団に所属する?


「ベアトリクス様、自分たちはまだ学園の生徒ですが……」

「アイザックは妾が竜騎士学院に推薦するため、よほどの事情がなければ第二騎士団所属となる。妾が面倒を見ているクロエも国に帰らなければ同様。パーシーはわからないが、パーティーメンバーと分ける理由もあるまい」


 俺たち三人の所属先は決まったも同然なのか。

 それは少し手間をかけてでも俺たちを鍛えるか。


「さて、11層で戦いやすい剣を持つゴブリンが出るのは珍しい、もう少し戦闘訓練と行こうではないか」


 俺が納得しているとベアトリクス様に言われて唖然とする。

 遠距離魔法の魔力目当てで、戦う必要はないって言われたのに……。

 消極的な考えをしているのは俺だけのようで、皆は武器を構えてやる気になっている。これは断れない……俺も盾とバトルアックスを構える。


 一人ではなく皆で戦っていると、ゴブリンは確かにやってやれない相手ではないという感覚になってくる。

 多少硬いが人間と急所が似ているため、逆にやりやすい気がしてくる。

 慣れって恐ろしいな。


「12層に続く入り口」


 遠距離魔法を使わないと言われたため、12層に行くのだろうとは思っていたが、実際に12層へ降りる入り口を見るとなんとも言えない。


「それでは行こうか」


 ベアトリクス様は軽い足取りで12層に向けて歩いていく。

 俺も続いて11層を超えて12層に足を踏み入れる。

 12層に入ったからとダンジョンの中は何か変わるわけではない。薄暗い通路が続いているだけ。


『ガアアア!』


 変わらないと思っていたが、大きな叫び声がダンジョン内に響く。


「この声はオーガかトロールあたりか……。クロエ、後で魔法をお願いする」

「分かったわ」


 遠距離魔法を使うのを即座に決めるモンスターか。

 楽な相手であった11層とは違い、12層は大変な階層となりそうだ。

 騎士たちに守られて俺たちは通路を進む。


 部屋に入ると騎士が3メートルはありそうなモンスターと戦っている。

 筋肉がついているのだが、3メートルもあるからか細身に見える。

 ゴブリンと違い武器は持っておらず、拳で騎士に殴りかかっている。大きな身長から振り下ろされる拳は凄まじい速さ。武器を持っていなくとも強さはゴブリン以上に見える。


「オーガか」

「あれがオーガ」


 俺たちより身長の低いゴブリンと違って、オーガは戦いにくそうだ。


「クロエ、魔法を頼む」

「分かったわ」


 クロエの魔力が一気に活性化して空中に放出される。

 凄まじい勢いで放出されているが、魔力もまた凄まじい勢いで拡散している。


「フリーズ」


 魔力が魔法へと変わる。

 部屋中のオーガが凍っていき氷像になる。

 パーシーの雷魔法とはまた違う圧倒的な威力。やはり俺は近距離で戦うより魔法を使いたい。

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