第15話 ガトリングの試射
ベアトリクス様と同じようにはできないが、俺たちも魔力を節約しながら戦う必要がある。魔力の節約ができそうなガトリングを使いたいが、学生が戦っている上に、騎士団が参戦したため人が多い。
「ガトリングは使えそうにないか」
銃を撃っては味方に当たってしまいそうだ。
「パーシー、クロエ、俺たちは魔力を使わないように皆を補助する」
「分かった」
ライナスを含めた従者たちが前に出る。
クロエの従者ルイーザとルイーズ。パーシーの従者モーリス。
従者たちがサーベルタイガーを次々に葬っていく。
ライナスを含めた従者たちは、学園の生徒になれるほどの力量がある。
クロエとパーシーの従者は国から派遣された従者であるため、強いのは当然。むしろ国から派遣された三人に食らいついていけるライナスがすごい。
「ライナス、無理するなよ」
「この程度、問題ありません」
ライナスはバトルアックスと盾を持って守りながら戦う。
ライナスの戦闘方法は俺に似ている。教わったのが父やアックスオッターの騎士からなので、似ているのは当然か。
俺、クロエ、パーシーは魔力をほとんど使わずに、7層、8層と進んでいく。
7層から戦闘に参加したライナスはまだ余裕そうだが、学園の生徒たちは魔力が足りないのか戦線を離脱るす数が増えてきた。
それでも9層にまで数組のパーティーが来ている。
「9層はブラックウルフか」
ブラックウルフは黒くて視認性の悪い狼。
四つ足のモンスターは姿勢を低くされると攻撃が当てにくい上に、ブラックウルフは頭がいいのか連携を取るのが上手い。
力任せに倒せない分やりにくい相手な上に、時間をかけると魔力の消費が多くなる。
「アイク様、ガトリングを使いませんか?」
「ああ、人数も減ってきた、ちょうどいいか」
鞄からガトリングを取り出して弾薬を装填する。
「パーシー、すまないが護衛を頼む」
「分かった」
大きなガトリングを構える。
狙いを定めるのが難しいため、撃ちながら狙いを定めていく。
人に当てないように、人のいない位置へと移動する。
「射線上に人はなし。撃つ」
引き金を引く。
ガトリングから凄まじい音が鳴り響く。連続した銃声はダンジョンの狭い部屋に反射しているからか、テラパワーで試射した時よりもうるさく聞こえる。
意識して銃口を下向きにしていたため、弾丸がダンジョンの地面を削る。
徐々に銃口を上げていき、射線上にいるモンスターを狙う。
ブラックウルフのモンスターに弾丸が当たると弾かれることなく相手に打ち込まれる。ライフルの弾丸だと弾かれるが、ガトリングの弾丸は大きいだけあって威力はなかなかのものだ。
ブラックウルフに弾丸を何発撃ち込んでも肉が弾ける様子がないが、倒れて動かなくなる。
倒れたモンスターに撃ち込んでも弾の無駄になるため、一度撃つのをやめる。
「想像以上に音がうるさいね」
パーシーの感想はガトリングの威力ではなく、音のうるささだった。
「音はどうしてもな。威力はどうだ?」
「見た感じは使えそうじゃない?」
弾丸の撃ち込まれたブラックウルフは動いていない。
「良さそうだな」
「次のブラックウルフを狙ってみよう」
「ああ」
ブラックウルフに弾丸が撃ち込まれていく。
ダンジョン内にガトリングの連射した音が響く。
硝煙から独特の甘い匂いを感じる。弾薬に使われている火薬はセリアンスフィアで開発されたもので、地球の火薬とはまた違う。
硝煙は匂いだけではなく、薄い緑色で独特な色合いをしている。
連続してガトリングを撃っていると、ガトリングが脅威だと思ったのかブラックウルフが寄ってくる。
向かってきてくれるのなら、逆に打ちやすい。
皆に守られながら、人に当てないようガトリングを撃ち続ける。
「アイク、この部屋はこのくらいでいいんじゃない」
弾を無駄にしないよう引き金を何度も離しているとパーシーに止められる。
ブラックウルフの数を確認すると想像以上に減っている。
「こんなものか」
ガトリングからバトルアックスに持ち替えてブラックウルフに立ち向かう。
部屋のブラックウルフが全て倒されると通路を進み始める。通路にもモンスターは出るが、後ろに下がっている。
「アイザック」
「ベアトリクス様」
前線に近い位置で戦っていたベアトリクス様が俺たちの場所まで下がってきた。
「先ほどの武器は?」
何を聞きたいかはわかる。
「ガトリングと言います。テラパワーに所属する錬金術師が開発した試作品です」
「ほう。試作品か」
「大口径の弾薬を連続して撃つための武器です」
「連射ができるとこれほどの威力だったか」
大口径の弾薬自体は珍しいが売ってはいる。
ただガトリングのように連射する武器がないため、あまり必要とされていない。
「はい、しかし、低層が限界だと思います」
「そうかもしれん。しかし、低層だけでも十分に役に立つ」
ベアトリクス様の反応が想像以上にいい。
すぐに売れと言われないように先手を打つ。
「ガトリングは試作品であるため、現在試験中です。量産して実際に売りに出すのは先になると思います」
「そうか。楽しみにしている」
開発を止めるわけにはいかなくなったな……。
「開発者に伝えておきます」
ベアトリクス様が頷く。
ガトリングを量産するには会社の規模が足りない。会社を大きくしたいとは思っているが、騎士団が求める数を納品するほどにはすぐになれない。
前線へ戻っていくベアトリクス様の後ろ姿を見ながら悩む。
「ライナス、ガトリングを完成させるしかなくなってしまった」
「この威力であれば致命的な欠陥がなければ作ってもいいかと」
「テラパワーの生産能力が問題だな」
「騎士団への納品数を試算していただきましょう。数が絶対に売れるのなら、やりようがあります」
「なるほど」
さすがライナス頼りになる。
テラパワーが予想外に大きくなってしまい、表に出る機会が増えてしまったライナスは商人としての動き方が分かっている。
「今はガトリングの問題を洗い出すのに集中すればよろしいかと」
「分かった」
量産や売るのはライナス任せて、俺はハーバートがガトリングを完成させられるように欠点を探る。
「次の部屋でまた試しましょう」
通路を進み部屋にたどり着くと再びガトリングを取り出す。
「撃つので護衛を頼む」
射線を管理しながらガトリングを撃つ。
耳栓が欲しくなるようなうるささは嫌になる。難聴になりそうだが、ダンジョンで耳栓を使うわけにもいかない。ダンジョンから出たら身体強化で耳をしっかりと治しておいた方が良さそうだ。
地球でも耳栓を使うのが普通たったため、発砲音を減らすのは相当難しいだろうな。
「アイク様、弾薬がなくなりそうです」
「もうか。王都で試射したとはいえ、一万発あったのだが……」
地球にあるガトリングほどは連射速度が速くないと思うのだが、それでも一万発を打ち切るか。
連射速度を遅くしてはガトリングの意味が薄れる。
実際にダンジョンで使う場合、大量の弾薬が必要になりそうだ。
「残りの弾薬は中層で試してみては?」
「牽制程度にしかならないと思うぞ」
「試すだけ試してみましょう」
「分かった」
ガトリングを鞄に入れ、代わりにバトルアックスを握る。
9層はガトリングがあったからか、俺は魔力をほぼ使わない状態で10層に下る通路を見つける。
「予定より魔力が残っています」
「ライナスもまだ魔力に余裕があるか」
「ええ、10層のモンスター次第ですが、中層についていけそうです」
「そこまでか」
途中から参戦したというのもあるだろうが、ガトリングの効果は随分とあるようだ。
ベアトリクス様がガトリングを欲しがる理由がわかってきた。
そこまで魔力の節約ができるのなら、多少お金がかかってもガトリングが欲しい。
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