第14話 ダンジョンの中へ
準備が大変だとしてもダンジョンを壊すためならスカーレットドラゴン王国はやる。
「なるほど。ところでベアトリクス様は自分に用事があったのでは?」
「ああ、一層が片付き次第ダンジョンに向かう。戦ってしまったため、装備を確認しておくように」
「了解しました」
俺の返事を聞くとベアトリクス様は移動していった。
皆で血で汚れた武器や甲冑を確認する。
装備の確認が終わった後、鞄が無事か確認する。
船から飛び降りる際に船に置いたままだったのだが、全ての荷物は船から下ろされていた。
鞄を確認する。
「あ、ガトリングがあったな。使えばよかったか?」
「アイク様、乱戦では使えません」
「それもそうか」
事前に知っていれば使えたかもしれないな。
ただ、地上に現れるモンスター相手には弾丸の威力が過剰か。
「アイク、何か新しい物を持ってきたの?」
新しい物好きなパーシーが反応する。
「テラパワーの錬金術師が新しい銃を作ったんだ」
「どういうの?」
「説明が難しいな」
ガトリング砲を鞄から取り出して見せる。
「銃じゃないみたいだね」
「ああ。銃身が6つついているからな。変わるがわる打つことにより、熱で銃身が歪むのを防いでいる。弾薬をまとめるのも帯状につながるベルトリンクという物がある」
今までの銃と比べると、技術的に何世代か飛ばしている気がする。
以前に銃の構想という形で伝えてはいたが、話だけでガトリングを作ったハーバートはすごい。
その理解力で銃を作らないという話も覚えておいて欲しかったな……。覚えていても興味の前に無視されそうだが。
「弾薬大きいね」
パーシーが弾薬を見ながらいう。
弾薬の大きさは指よりも長く太い。鉄板を撃ち抜けるほどの威力を出すためには大きくするしかない。
「この弾薬なら低層のモンスターなら倒せそうじゃないか?
「確かに」
「後で実験したいからパーシーも手伝ってくれ」
「分かった」
ガトリングを再び鞄の中にしまう。
持ち運んで動くには重すぎて大きすぎる。それに俺たちの出番はもう少し後になるだろう。
装備の確認が終わると手が空いたため、休んで体力を回復させる。
ダンジョンは休める時に休む。
モンスターの血で汚れていない場所で休んでいると騎士団の動きが変わり、ベアトリクス様が近づいてくる。
「ダンジョンへ移動する」
地面に置いていた鞄と脱いでいたヘルムを持ってダンジョンへ向かう。
緩やかな上り坂を登るとダンジョンの入り口が見えてくる。
大きな口を開けたようなダンジョンは奥がぼんやりと光っている。ダンジョンという存在を知っているためだろうか、何度見ても不気味に見える。
騎士たちが次々とダンジョンに飲み込まれるようにして入っていく。
俺も騎士に続いてダンジョンの中へと進む。
ダンジョンはうっすらと全体が光っている。光があるため暗闇ではないが、薄暗く全体が詳細に見渡せるほどではない。
甲冑に錬金術で作った道具を下げて自分の周囲を照らす。
「ベアトリクス様、拠点はどこに?」
「拠点は二層手間の部屋にしたようだ」
ダンジョンには通路と部屋と呼ばれる場所がある。
通路は細いと一人が武器を振れる程度だが、広いと二人から三人が武器を振れるような広さまで色々。部屋は体育館のような広さで、モンスターがいなければ百人以上の人が入れる。
前を進む騎士に続いて薄暗い通路を歩く。
一つの部屋を抜け、二つ目の部屋に多くの人が集まっている。
部屋の中は錬金術で作った道具の光が至る所に置いてあり、部屋全体が明るい。明るい部屋の中は安心する。
一層のモンスターは徹底的に倒されているが、ダンジョンという場所はモンスターに襲われる場所だという意識がある。しかも薄暗いため緊張を強いられるため、明かりがあるだけでも緊張の度合いが違う。
「少し待っていてくれ」
ベアトリクス様が俺たちにそういうと離れていく。
騎士たちの前に立ったベアトリクス様は声を張りあげる。
「第二騎士団副団長、ベアトリクス・オブ・スカーレットドラゴンである。ベアーレイク男爵領にできたダンジョンは中層だと予想されているが、深層である可能性も捨てきれない。深層であると分かった場合、帰還して派遣する人員を再編成する。帰還するために、魔力を最後まで振り絞るのを禁ずる」
ベアトリクス様が言葉を区切って騎士を見回す。
「モンスターを倒し、ダンジョンを潰す!」
騎士たちが叫び声を上げる。
広い部屋とはいえ、大人数が叫べばとても響く。凄まじい迫力。
「進め!」
ベアトリクス様の合図で騎士たちが二層を降り始める。
演説を終えたベアトリクス様が戻ってくる。
ヘルムをかぶって顔は見えなくなっている。俺たちもヘルムをかぶる。
「待たせたな。行こう」
「はい」
ベアトリクス様に続いて二層へ降りる。
二層以降は全てのモンスターを倒さないため緊張感が違う。武器をいつでも使えるようにする。
とはいっても学園の生徒が先行しており、騎士が前を進むためモンスターが出てくる可能性は低いのだが。
「学生はすでに五層まで到達している」
「随分と早い。あたりを引きましたか」
ダンジョンは迷路のようになっているため、正解を引き続ければ最短で階層を降りられる。
「それにしても早い。今年の学生は当たり年と聞いていたが、想像以上に優秀なようで嬉しい」
「当たり年なんですか? 初めて聞きました」
クロエとパーシーがため当たりなのは間違い無いだろうが、ベアトリクス様の言い方からして他も優秀という意味だろう。
「ここ数年、学生の技量が上がっている」
「自分も学生のため知りませんでした」
「鍛える方法が増えたためだろう。器具を売っているテラパワーも関係している」
「あ、なるほど」
持久力は以前と変わらないトレーニング方法しかないが、筋力を伸ばすのであればテラパワーが売っているトレーニング器具は優秀だと思う。
筋力を伸ばして、持久力を上げるのに注力できるのあれば短期間で技量が上がるか。
ベアトリクス様と話しながらも警戒してダンジョンを進む。
時々騎士が戦っているのを見るが、魔力も使わずに数の力で倒している。魔力の節約もすごいが、ダンジョンの中に入って魔力なしで戦って勝てるのが驚きだ。
到達していると言われた五層を抜ける。どうやらさらに奥までいったようだ。
戦う魔力がなくなったのか引き返す学生の集団とすれ違いながらも先を進む。
七層にまでくると学生が戦っているのが見えてくる。
戦っているモンスターはサーベルタイガー。
ダンジョンのモンスターは大量にいるため、とんでもない数のサーベルタイガーが群れをなしている。
共食いをしてくれればいいのだが、モンスターは普通モンスター同士戦わない。
「学生はまだ随分と残っているな」
「半分程度でしょうか?」
「今年は三年間で卒業する生徒が多そうだ」
学園は卒業資格を手に入れるまで卒業できない。
最短が三年間。六年ほどいて卒業資格が取れないと諦める場合が多い。
「自分たち以外にも一組卒業資格を持っています」
「期待できる」
ベアトリクス様は声を弾ませながら背負っていた巨大なハルバートを抜く。
俺もバトルアックスと盾を抜いて握る
「皆、魔力の無駄遣いはしないようにな」
「はい」
ベアトリクス様がそう言い残すと、すごい勢いで突撃していく。
ハルバートが振るわれるとサーベルタイガーが真っ二つになる。
ベアトリクス様の魔力は動いていない。つまり魔法を使っていない。魔法を使っていないというのに、俺が身体強化を使っているのと変わらない動き。人間離れしている。
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