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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第12話 遠征

 早朝、学園に登校すると騒がしい。


「アイク、ダンジョン実習が決まった。昼に専用列車が出る」


 偶然通りかかったクラスメイトから騒がしい理由を教えられる。

 詳しい時間を聞いて、お礼を伝える。

 装備を取りに行くと、パーシーはすでに装備を鞄に詰めている最中だった。


「昨日話したと思ったら、実習が今日になったな」

「そうだね。昼から出発だと予想通りに二泊になりそうだ」


 錬金術で作った鞄に全ての装備を詰め込んでいく。

 容量以上に荷物が入り、重量まで軽減される魔法のような鞄。必要とするモンスターの素材が貴重であるため鞄を手に入れるのが難しいが、ダンジョンを攻略する人には手に入りやすいよう国が調整している。


 俺と従者のライナスは別々の鞄に装備を詰めていく。

 さらにハーバートが開発したガトリング砲が入った鞄が別にある。容量の問題以外にも重量が重すぎるため別の鞄に分けている。

 荷造りが完了すると学園の事務へ移動して、家にダンジョン実習だと連絡を入れてもらう手続きを済ませる。


 教室へ向かうと教師が出席を確認しながら指示を出している。


「準備が終わったものは順番に駅へ移動する。学園の校庭に車が用意されているので乗るんだ」


 毎回そうだがダンジョン実習は慌ただしい。

 列車を使用する場合は普段以上に慌ただしい。集団が乗り物を乗り換えるというのは時間がかかるため、仕方がなくはあるが大変だ。


「アイク行くわよ」


 いつの間にかクロエが近くにいる。


「クロエも準備が終わったのか?」

「ええ」


 パーシーを含めて三人で教師に出席を確認してもらった後、教室から校庭へ向かう。

 幌のついたトラックが校庭に並んでおり、学生と従者がトラックに詰め込められると発進する。

 座れはするが荷物もあって狭い。


「クロエは今回の行き先を聞いているか?」


 王族であるクロエなら事前に説明されているかもしれない。

 車に同乗している皆も興味があるのか、聞き耳を立てているのがわかる。


「行き先はベアーレイクだそうよ」

「ベアーレイクといえば男爵だったか」


 男爵にしては領地が大きいが、湖があるため実質の領地は平均的な男爵領以下だと記憶している。穀物を育てるには適しているが、人口はそこまで多くなかったのではなかったかな。


「ダンジョンの発見が遅れたようで中層まで育ってしまい、スカーレットドラゴン王国に支援を依頼したようね」


 ダンジョンの発見が遅れた上に。人口の少ない領地。ダンジョンが中層になってしまうと対処が難しいか。


「中層だと今回は騎士団と共同作戦か」

「ええ。騎士団は第二騎士団の一部が出るみたいよ」

「第二騎士団が出るのか」


 俺たちは騎士団が中層に進むための露払いが仕事になりそうだ。


「トリスも来ているようよ」

「ベアトリクス様まで来ているのか」


 クロエと喋っているとトラックのエンジンが唸る。

 学生と従者、そして装備を乗せているため重たいのだろう。幌の隙間から王都をゆっくりとは走っているのがわかる。


 トラックが止まると、惰性でつんのめる。

 幌の隙間から外を確認すると駅が見える。

 幌がめくられ学園の教師が顔をだす。


「降りるんだ」


 教師の指示に従って、乗っていた学生は素早く順番に降りていく。全ての学生が馬車から降りるとトラックは走り去る。おそらく学園に戻って学生を回収しに行ったのだろう。


「待機場所は十番ホーム。移動を開始しろ」

「はい」


 指示された待機場所に向けて駅構内を一塊になって移動する。

 王都の駅はとても混み合っており、間違って武具の入った手荷物を人に当ててしまうと相手を吹き飛ばしかねない。

 慎重に駅構内を歩いて十番ホームへたどり着く。

 十番ホームにはすでに騎士団がいて、大量の荷物を積み上げている。


「列車が来るまで待機か」

「騎士がいるから、列車はすぐに来るんじゃない?」


 クロエのいう通り、列車はすぐに来た。

 学園のために割り振られた車両に乗り込んでいく。

 列車は一等車両のように個室ではないが、学生だけではなく従者が座れる余裕がある。


 全員の点呼が完了してしばらくすると、列車は動き出す。

 蒸気を引いて列車は王都から離れていく。




 軽快に走っていた列車は甲高いブレーキ音を立てて停車する。

 ベアーレイクに近い駅に着いたようだ。

 止まった列車から降りて、駅前に用意された馬車に乗り換える。人数が多いため、乗り換えに時間がかかる。


「ここからは馬車か」

「地方はまだ車が少ないからね。騎士団と学園の生徒を乗せられるほどの数がなかったんだと思う」

「数か。アックスオッターも似たようなものだったな」

「ウォールナットスクワローもそうだよ」


 地方出身のクラスメイトが同意する。

 馬車の順番が来ると乗ってベアーレイクへと向かう。

 車に比べると揺れる上に遅い馬車は、喋るか風景を眺めるくらいしか暇を潰す方法がない。


 そろそろ夕方になろうかという時間にベアーレイクに到着する。

 ベアーレイクは湖のほとりに栄えた小さな街で、レンガと木で作られた二階建て程度の一軒家が並んでいる。自然がすぐ隣にある街は居心地が良さそうだ。


「居心地の良さそうな街だな。だが今夜の宿は期待できないか」


 ダンジョンの攻略は一緒に行動する人数が多い。

 ダンジョンを攻略する騎士以外にも食事を出すためのコックや、必要なものを揃える事務も帯同している。そのため騎士団だけでも三百人を超えている。学園の生徒や従者も合わせると五百人は超えている。

 街が小さすぎて五百人全員が泊まる場所はなさそうだ。


「僕たちは野営かな?」

「だろうな。宿が優先されるのは明日の主戦力である騎士団だろう」


 日帰りできない場合はテントを張って泊まる。

 学園で野営の仕方は教わるため、騎士は野営に慣れている。

 旅する一般人の大半は宿に泊まるが、貴族は仕事でも宿に泊まらないで野営する。普通は貴族が宿に泊まるのではないかと思うが、実際には逆になっている。

 セリアンスフィアの貴族は本当に大変。


「街の広場で野営するテントを建てるぞ!」


 教師が叫ぶ。

 やはり野営のようだ。

 テントを素早く張って食事が用意されるまでゆっくりとする。ダンジョン実習で何度もやっているため慣れたものだ。

 のんびりしていると教師から呼ばれる。


「アイザック、パーシヴァル、クロエ、騎士団から呼び出しだ。ベアーレイク男爵の館へと迎え」

「了解」


 騎士団の呼び出しでベアーレイク男爵の館。

 クロエがベアトリクス様が来ていると言っていため、呼び出したのはベアトリクス様だろうと想像がつく。

 三人で街の中心にあるベアーレイク男爵の館へと向かう。


 館の前で警備している兵士に騎士団から呼び出されたと伝える。すぐに別の兵士が来て館の中に通される。

 案内された部屋にいたのはやはりベアトリクス様。


「学生の皆を呼び出してすまない」

「今回は共同作戦です。お気になさらないでください」


 普通は学園と騎士団が作戦を考える。

 学生を直接呼び出すのは珍しい。


「早速本題に入ろう。三人は騎士団の指示に従ってもらいたい」

「学生ではなく騎士団の一員として参加しろという意味ですか?」


 騎士団には国民に強制する権限がある。


「騎士団の一員とまでは言わない。中層に少し付き合ってほしい」


 ダンジョンの低層と呼ばれる場所と中層では難易度が大きく違う。

 中層と呼ばれる範囲は低層より随分と広く、中層の中でも奥まで行くとモンスターが桁外れに強くなる。


「自分たちではお役に立てるか……」

「無理に接近戦をしろとは言わない。クロエとパーシヴァルが魔法を使い敵の数を減らしてほしい」

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