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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第11話 ガトリング

「人ではなくモンスターで実験するのか。だけど人と同じように行くかな?」


 もっともな質問。

 人とダンジョンから発生するモンスターは違う。


「実はすでにパーシーもモンスターの素材を使っている」

「僕がすでに使っているの?」

「パーシーが使っているのは甲冑だ。甲冑にはモンスターの革が使われているからか、武器より若干魔力が通しやすい。言われないと気づかないほどだがな」

「そうだったっけ……?」


 パーシーは自信なさげ。


「よほど感覚が鋭い人でないと魔力の通しやすさは気づかないと思う。俺も自分で武具を作った時に確認していて偶然気づいただけで、何か確証があって試していたわけではない。錬金術の知識と合わせて仮説にたどり着いただけだ」

「なるほど」


 甲冑にモンスターの革を使っているのは強度の問題であり、魔力効率が良いために使っているわけではない。


「革より効率の良い部位があると思うんだ」

「骨を武器にするとか?」

「骨では魔力効率がよくともすぐ壊れそうじゃないか?」

「確かに。だけど骨以上に硬い部位って?」

「硬いというか、頑丈という意味でアキレス腱などの腱はどうだろう? 武具に巻きつけるんだ」


 地球では弓の弦には動物のアキレス腱などを干して撚り合わせたものが使われていた。強度がかなりあるはず。


「なるほど。他の部位も試したいから、今度の実習でモンスターを売らずに持ち帰ろうよ」

「それはいいな」


 モンスターは必要な部位ごとに解体されて売られる。部位ごとに売る相手が違うため、全ての部位を実験するには買い集めるのが大変になる。

 売らずに持ち替えれば実験がしやすい。


「そういえば実習そろそろだよね?」

「ああ。今回の実習は遠くになるかもな」

「そうだね」


 ダンジョン実習はダンジョンの発生に合わせるため急に予定が決まる。

 ダンジョン自体は毎日のように世界のどのかで発生しているが、距離的な問題からいけない場合もある。近くに発生した場合でも、一度の実習が終わってから最低でも二週間の休息期間が取られているため、合わない場合もある。

 前回の実習から二週間以上経っており、いつ実習になってもおかしくはない。


「遠いと専用列車を出して移動か」

「今回は二泊かも」


 列車が通る以前は遠距離のダンジョン討伐は難しかったらしいが、今は列車で二泊程度の距離であれば遠征する。

 前回はできたばかりのダンジョンだったが、遠距離となると日数が経っており成長したダンジョンの可能性が高い。学園だけではなく騎士団と合同のダンジョン討伐になるかもしれない。


「休みは多めにもらえるが遠征は疲れるんだよな」


 肉体を酷使する学園には当然休みが存在する。

 定期的な休みとは別に実習後は一日休みとなる。遠征の場合はもう一日増えて二日間休み。

 休みとはいっても疲れ切っていて大半を寝て過ごすのだが。


「アイク、パーシー。雑談ならトレーニングするわよ」


 クロエから言われて俺とパーシーは顔を見合わせる。

 確かに作るための相談から雑談に変わってきているか。


「そうだな。二人とも相談に乗ってくれてありがとう」

「気にする必要はないわ。私にも随分と利益があるんだもの」


 クロエの返事に同意するようにパーシーが頷いている。




 学園が終わるとテラパワーへと向かう。

 車の中でクロエとパーシーから聞いたアイデアを運転している師匠に話す。師匠のアライグマの耳が片方こちらに向いている。


「器具の改造とホエイを精製してプロテイン製造はテラパワーの社員に任せようと思います。俺がやるのはモンスターでの実験ですね」

「いいんじゃないか?」

「師匠はどれかに興味を持ちましたか?」


 師匠が運転席からバックミラー越しにこちらをみるのがわかる。


「慣れないな」


 急に慣れないと言われて困惑する。


「何がです?」

「師匠呼びだ」

「ああ、今までジェームス呼びでしたからね。錬金術師として活動できるようになったのですから師匠と呼ばせてください」

「慣れないだけだ。呼び方はどちらでも構わない」


 俺を貴族扱いしない師匠はやりやすい。

 師匠は元々、ライナスが錬金術を覚えるために呼んだ教師なのだが、ライナスの横で授業を聞いている俺にも事情を察して錬金術を教えてくれた。


「それなら師匠と呼ばせてください」

「好きにしろ」


 バックミラー越しに師匠が渋く笑う。


「それで師匠は何をしたいですか?」

「ダンジョン向けなら無限軌道を作りたい」

「無限軌道。ああ、装甲車を以前に構想していた時に話しましたか」

「ダンジョン内は無理でも外を乗り回すにはいいだろ」

「そうですね」


 ダンジョンが村や街の近くにできたときはまだいい。僻地にできると徒歩での移動が大変になる。100キロを超える装備は、長時間歩くだけで疲労困憊になってしまう。

 ダンジョンにまで行ける車があれば疲労を軽減できる。


「ダンジョンといえばトリガーハッピーなうさぎが銃を作っていたぞ」

「え? 銃ってテラパワーの規模だと量産できないんだけど……」

「また技術を売るしかないんじゃないか?」

「研究費の元取れるかな……」


 銃関係の知識はそう多くはないが、オタクゆえに多少は知識がある。

 今までなかったライフリングを作り出したのだが、会社が銃を量産できるほどの規模ではなかった。少数作って売っていたところ、大手の会社から技術を買い取りたいとの申し出があった。技術を売るかどうかは迷ったが、結局は売ってしまった。


 ダンジョンで銃を使った限り、限界を感じている。

 低層を攻略するには、鉄板を打ち抜けるような弾薬を連射できる銃が必要になりそうなのだ。低層から中層になれば銃という形では効果がないだろう。

 銃の開発をやめた理由は説明したというのに、なんで開発しているんだよ!


「研究費それほどかかっていない可能性もある」

「絶対かかっています。テラパワーに行って問い詰めます」


 師匠がハンドルを握りながら肩をすくめる。

 車はテラパワーの社屋へと走っていく。


 王都の郊外にあるテラパワーの社屋は工場、研究棟、実験棟があるため広い。

 アックスオッターにも社屋はあったがすでに閉鎖した。残しておくと何をされるかわからない。

 研究棟の中を歩いてトリガーハッピーのうさぎ人であるハーバートの元へ向かう。


「ハーバート!」

「おお、アイザック様! 新しい銃ができました!」

「俺、今後銃を作るの止めると説明したよな!」

「すごいんですよ。これならダンジョンの低層でも使えます」


 聞いちゃいない。

 誰だよこんなの雇ったの! 俺だよ、クソ!

 優秀な錬金術師は癖が強すぎる。

 ハーバートの説明は止まらず頭を抱える。


「使えなかったら銃の的にするぞ」

「ははは。アイザック様、銃の的はモンスターですよ」

「とりあえず実物を見せろ」

「もちろんです」


 ハーバートが見せてきたのは巨大な口径のガトリング。

 銃身が巨大で航空機や軍艦に取り付けられるような大きさ。


「こんな大きい銃、一般人持てないだろ」

「ダンジョン用ですから、一般人用ではありません。アイザック様なら持てますよね?」

「持てるわけ……あるか」


 何キロあるか知らないが、100キロくらいなら持てる。

 ガトリング砲を試しに持ってみると重いが取りまわせないほどではない。


「これ弾は?」

「特注で一万発ほど用意しました」

「少し撃ってみたい」

「試射用の的を用意しております」


 実験棟で少し撃ってみて使えそうなのがわかる。


「使えそうだな。ハーバート、今度のダンジョン実習で使ってみるけどいいか?」

「もちろんです。使用した感想お待ちしております」


 ハーバートを的にするのは次回になりそうだ。

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