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定住

「おはようございます。」

「あら、ずいぶん早起きだね。」

身支度を整えたあと、ビオラさんのもとへ行った。

「そうでしょうか?」

「ルーナはお客なんだから、もっとゆっくりしててもいいのさ。」

あの家での生活は使用人のものよりひどかったし、朝早くから家のために働いて、夜遅くまで動き続けるようだったし体に早起きが染み付いてしまった。

「迷惑でしたか?」

「まさか!そんなことは全くないね。」

(良かったわ。迷惑になっているならここを出ていかないと行けないものね。)

「ビオラさん、少し相談があるのですが…」

「なんだい。」

「私、旅をしているのですが、そろそろ安定した生活を送ろうと思っているんです。宿屋を営んでるビオラさんならどこかいい国を知ってるかも知れないと思って。」

本当は旅を始めたばかりだけど、ぶらぶら生活しているわけにもいかない。お金だって無限にあるわけではないし、どこかにとどまって安定した生活を送らないといけない。ビオラさんなら、色々な情報をっているだろうし、どこかいい場所を教えてくれるかもしれない。

「そうだねぇ、あたしが知る限りでは、この国はかなりいい場所(ところ)だと思うよ。魔力の強弱に関する差別も少ないし、皆、魔法に頼ってばかりじゃない。自分にある知識、人脈、そういうのを使って生活している人が多い分、魔法はおまけみたいなものさ。あとは、南の方にあるアイテールなんかもいいと思うね。」

「そうなんですね。」

「よく聞く話じゃ、隣のカーリタースなんかは最悪だから行かない方がいいみたいだね。」

カーリタース……………私のいた国だ。

「カーリタースのお偉いさんは力が全てみたいな考え方で、あの国は魔力の強弱に関する差別がひどいみたいなんだよ。貴族がいい生活をしている分、国民はかなり辛い生活を送っているって話だよ。遊びい行こう、なんて話しはまずでないし、仕事だろうと行きたがらない人は多いからね。」

私は一日中家に閉じ込められて、社交の場には出たことがないから知らなかったけれど、カーリタースがそんなに悪い国だなんて思いもしなかった。

「カエルムさんは仕事でカーリタースに行っていたんでしょうか?」

「あぁ、カエルムは物好きだからね。自分から好んで仕事をしに行くよ。」

(カエルムさんは不思議な人ね。)

使用人たちの会話から、私のいた家がひどい場所だということはなんとなく分かっていたけれど、国まで悪いところだったなんて本当に呆れる。

「ところで、ルーナ安定した生活を送りたいのかい?」

「えぇ。」

「じゃあ、あたしのところで働いてくれないかい?」

「え?」

「今この宿はあたしだけで経営していてね。やっぱりひとりだと色々大変なんだ。どうだい?もちろんお給料は出すし、あの部屋はルーナのものとしていいからさ。」

(どうしようかしら……)

仕事を貰えるなんてとてもありがたい話だけど、私なんかが宿屋の仕事をこなせるかどうか分からない。

「えっと……ご迷惑になりませんか?」

「ハハハ!そんなに気を遣わなくて平気だよ。むしろ頼んでるのはあたしなんだから。」

(……私はもうあの家の人間ではないわ。)

「お仕事させてください。」

「よし!それじゃあさっそく始めよう!」

あの家に縛られていては私は『幸せ』にはなれない。もう、役立たずの私とはさよならしよう。

私はビオラさんのところで働くことにした。

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