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さよなら

使えない、役立たず、我が家の恥、生まれてこなければ良かった、敬う価値もない、死んだ方がまし、唯一の汚点、穢らわしい、邪悪な子


さんざん吐かれた罵詈雑言はもう心に傷を負わせることもない。

結局、他者の評価だけが欲すべきもので、それを貰えないなら、生きてる価値すらない。そんな世界だ。

「もう、お前は必要ない。」

「そうですか。では、私はこれで。」

実の家族すら愛情はくれなかった。

(私が火属性の適正を持ってたら少しは態度が違ったのかもね。)

家のために家族すら見殺しにする。そんなところにいたら私までおかしくなってしまう。早めに見切りをつけてくれたことを感謝するほどだ。

「あれ、お姉ちゃん!」

「あぁ、いたの。」

妹、なんて名ばかりの存在。自分に価値があると信じてやまない、不思議な子。

「そんな言い方しなくてもいいじゃん!そんなだから、みんなに嫌われちゃうんだよ!!」

「そう。で、話しでもあるの?」

「お姉ちゃん、家を追い出されちゃったんでしょ?」

そんなことだろうと思った。顔を会わせることがなくなる前にたくさん言っておこう、なんて本当に性格が悪い子だ。

「そうね。良かったわね。」

「お姉ちゃん、悲しくないの?」

「悲しい?どうして?」

「だって、お父さんもおかあさんも、誰もお姉ちゃんが出てくのを止めてくれないんだよ!そんなのひどいと思わないの?」

「だったらあなたが止めてくれればいいじゃない。」

「違くて!!」

意味が分からない。私を一番追い出したかったのはあなたじゃない。イイコぶって、一番私を貶めようとしてたのはあなた。父親は一切の接触を避け、母親は穢らわしい物を見るように私を見た。でも、2人は特になにもしてこなかった。暴言は数えられないほど聞いたが、実害はない。けど、あなたは違う。使用人を使い、お金と権力を使い、力を使い、さんざんな事をしてくれたのはあなた。私はあなたが世界で一番嫌い。

「何が違うの?私を一番嫌っていたのはあなたでしょ。」

「私はお姉ちゃんがいつも一人でいるから…」

「だから、私の服を燃やし、私の部屋を燃やし、私のお金を盗み、私の悪い噂を広め、被害者ぶってご友人に私の最悪な評価を植え付けたの。」

「え?」

「全部バレていないと思った?」

「私、そんなことしてないよ?」

「そう。もういいかしら、早く荷物をまとめて出ていかないとまた怒られるのよ。」

本当にバレていないと思っていたのね。だとしたら頭が悪いなんてものではない。私はそこまで嫌われる心当たりがないけど、この家(この世界)では、仕方がないというものなのだろう。

「うざ、はやくいなくなれよ。」

「あら、それが本性?」

「お前なんか生まれてくる価値すらないゴミなのに!私に楯突いてくるなよ!」

「そう、ごめんなさいね。」

結局、普通より少し力があるからと甘やかされて育ったからこうなるのね。過保護も、甘やかすのも、この子にとって勘違いを誘うだけだった、それだけのこと。私には関係ない。

「さよなら。」

「っ!!!」

もう関わることすらないのに、なぜ、突っかかってくるのかしら。



「たいした荷物もなかったわね。」

「はぁ、さっさと出ていってください。」

この人もあの子の使用人。一応私も『お嬢様』なのに。

「ごめんなさいね。あなたのご主人様が私の部屋を荒らしたせいで荷物が見つからなかったのよ。」

「わたくしの主を馬鹿にするのですか?」

「あら、すぐに怒るところはそっくりなのね。」

さんざん私を馬鹿にしたのはあなたたちよ。自分のことを棚にあげて人のことを言えるなんて、とても図々しい。

「それと、私は仮にもこの家の長女だった。それなのに、次女ごときの使用人が私をさんざん馬鹿にして。どう責任を取ってくれるのかしら?」

「な、なにを……」

「舌を切って二度と馬鹿に出来ないようにしてあげましょうか?それとも、手足をもいで、あの子の言うことを聞けないようにする?命令を聞けない人形なんて、あの子は欲しないでしょ?」

「ひっ!!」

この程度で怖がるなら私に喧嘩を売ったりしなければいいのに。

「はぁ、どうせ私はもうここを出ていくから、そんな無駄なことはしないわ。」

「ぁ、あの…」

「さよなら。」



「あぁ、いやぁなお姉ちゃんがいなくなってくれて嬉しい!!」

「あら、お出迎えかしら。」

面倒な子。最後まで私を傷つけたいのね。

「お姉ちゃん、さっさと死んでね!生きてるってだけで価値なんてないんだから!」

「………可哀想な子。」

「!!!!」

また、怒った。また、燃やされるかしら。別に痛みすらもうないけど。私はかまわず歩き出す。私の人生で一番最悪な場所から、やっと解放される。

これで、ようやく新しい人生が始められる。

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