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第81話 寝取るのも悪くねぇ

これだけ、どうしても書く必要がありました。お許しを。


 都心から離れ、更に住宅街からも大きく外れた街外れの一画は、地元の住民が決して近寄ることのない場所として密かに知られていた。


 都心から大きく離れた場所に建てられたとある高校は、特に素行の悪い不良達の巣窟として名が広まっている。


 その高校周辺では警察騒ぎも日常茶飯事、更に学校内の騒ぎにも先生一同は一切の干渉をしない。ただ学校という体裁を取り繕い、問題児だけを押し込んだ施設とというのが――この学校の正体だった。


 その学校から更に離れた山や森に囲まれた廃墟ビルは、更に危ない場所として周辺に住む人間達は近寄ることもない。そもそも周辺に誰も住んでいないことから近寄る人間も皆無なのだが――


 毎晩、けたたましく鳴るバイクのエンジン音。


 喧嘩も日常茶飯事なのか、男達の罵声が飛び交う。


 そしてビル内から微かに聞こえる、女の嬌声と男達の下品な笑い声。


 こんな騒動が毎日繰り返されれば、自然と周辺に人は住まなくなる。警察も世間から弾き出された場所として、たまに様子を伺っては不良達と小競り合いする程度だ。


 そんな廃墟ビル周辺は、また今日も深夜まで馬鹿騒ぎをしている。


 そしてそのビル内では、今日も一人の男が暴れていた。


「あぁぁぁぁッ‼ クソがッ‼ イライラするッ‼」


 足元に転がる少年を蹴りながら、銀髪の男が怒声をあげる。


 それは頭に包帯を乱雑に巻いた、奇妙な男だった。


 仲間に用意させた市販薬を顔中に塗りたくり、カーゼと包帯で手当てしただけという何ともお粗末な治療だけしかしていない。


 その所為なのか、一向に痛みが収まらない。傷の痛みが酷くなると、決まって近くの仲間を憂さ晴らしに殴るのが、ここ一週間における彼の日常だった。


「あのゴリラが邪魔した所為でッ! あのクソガキが邪魔した所為でぇぇッ!」


 考えれば考えるほど、 銀髪の男の足が強く振り抜かれる。


 先日のデパートで起きた一件で、彼の怒りは常に収まっていなかった。


「拓真さんっ! それ以上はマズイですって!」

「あぁぁッ⁉ 俺が悪いって言ってんのか!?」


 拓真と呼ばれた男の周囲にいた少年達が止めても、彼の一声で黙るだけだった。


 彼を怒らせると手が付けられなくなる。それは拓真を知る少年達の共通認識だった。


 拓真が怒っている時は、関わらないようにしなくてはならない。だが、それでも仲間が死に掛けているともなれば、声のひとつも掛ける。


 そして何度か声を掛ければ、拓真も少しは腹の虫が治まったのか。最後に渾身の蹴りを放つと、近くに置かれた小汚いベッドに腰を落としていた。


「咲茉は見つかったのかよッ⁉」

「いえ、それがまだ……」

「ったく使えねぇなぁッ‼」


 以前から命令していたことも満足に果たせていない仲間に、拓真が舌打ちを鳴らす。


 デパートの一件から1週間が経っても、いまだに咲茉が見つかっていない。


 おそらく探し方に問題があるのだろう。ここにいる少年達は、文字通りの馬鹿の集まりだ。彼等に人並みの成果を求めても、苛立ってしまうだけだった。


「拓真さん……そこまでしてあの女を見つけなくても」

「あ?」


 そんな時、ふと仲間のひとりが呟いた声に、拓真が目を吊り上げる。


 その表情に怯えながら、呟いた少年は続けていた。


「聞いた話だと、あの咲茉って女と一緒にいたゴリラ女……相当ヤバいっらしいっすよ。なんかすげー前に喧嘩でかなりの有名人だったらしいっす」


 すでに拓真も、その話は耳にしていた。


 咲茉と一緒に居た、馬鹿みたいに喧嘩の強い女は、聞くところによると不良達の中では猛獣に近い扱いをされているらしい。


 確かに、あの女の強さは異常だった。男と体格差があっても全く関係ないと倒していく彼女の姿は、まさしくゴリラと言える。


「なにそれ、まさかビビってんの? たがが女一人に?」

「それは……その……」


 拓真に凄まれて、少年が怯えた様子を見せる。


 その姿に拓真が失笑しながら、鼻を鳴らしていた。


「あんな女くらい相手する方法はいくらでもあるんだよ。その空っぽな頭を使え、馬鹿どもが」

「すんません、俺達……馬鹿なんで」


 深々と頭を下げる少年達に、拓真が呆れたと溜息を吐いてしまう。


「あの女とクソガキが居なけりゃ、あの生意気な女と咲茉を好きにできるんだ。方法は俺が考えおいてやる。だからお前達は咲茉を見つけて来い……見つけた奴等には、俺の次に相手させてやるよ」


 拓真がそう言うと、少年達が下品な笑みを浮かべる。


 拓真が話す2人の女を少年達が直接見たわけではないが、数日前に聞かされた彼の話が本当なら、湧き上がる興奮が抑えきれなかった。


 とても高校生とは思えないようなエロい身体。痛めつければ、その分だけ興奮させてくれる反応をしてくれる。


 あの拓真が何度も抱ける女という咲茉を好きに犯せるのなら……そのご褒美が堪らなく楽しみになってきてしまう。


「良いんすか、拓真さん……俺達も楽しんじゃって」

「俺が遊んだ後なら好きにしろ。どうせ遊びきったら、またやり直すだけだし」

「え、それどう言う意味っすか?」


 突然意味の分からないことを話し始めた拓真に、少年の一人が怪訝に首を傾げる。


「ただの独り言だ、気にするな」


 しかし拓真からそう返事が来れば、少年もどうでも良いことだと忘れるだけだった。


 そしてこれから犯せる女達に想像を膨らませて、少年達が楽しそうに騒ぐ。


 どうやって犯すか、なにをして虐めるか、一人何回まで犯せるか勝負しようなど、聞くだけで嫌悪してしまう話を続けていく。


 その様子を見ながら、拓真は苛立ちながらも、どうするべきか考えていた。


「……あの女は、どうにでもなる」


 ポツリと、拓真が呟く。


 あの雪菜と呼ばれたゴリラ女も、所詮は人間だ。手段さえ選ばなければ、排除する方法もある。


 しかしそれよりも、拓真は痛めつけたい人間がいた。


「あのクソガキっ……!」


 思い出すだけで、腹から怒りが湧き上がってくる。


 自分の顔を滅茶苦茶に殴り続けた、咲茉を自分の女だと口走った少年。


 あの少年の顔を思い出すだけで、怒りで頭が真っ白になってくる、


 あのクソガキだけは、絶対に地獄を見せてやる。


「あのガキ……どうしてやろうか」


 ただ殺すだけなら、方法は山のようにある。


 だが、それだけでは足りない。


 あの悠也と呼ばれた少年も、咲茉と同様にタイムリープしている人間だろう。


 咲茉がタイムリープしているのも、あの時の反応を見れば、拓真が察するのも容易だった。


 そして悠也が、タイムリープする前の自分が咲茉と一緒に殺した男だと察するのも簡単だった。


 咲茉を殺した時のことを言っている人間は、一緒に殺した老けた男だけだ。


 まさかあのおっさんが咲茉と同年代だとは思わなかったが、どの道……自分から咲茉を奪おうとするなど許せるわけがなかった。


 どんな手を使ってもあの悠也から咲茉を奪い、そして絶望させなくては――



「……そうだ。良いこと思いついたぞ」



 その時、ふと拓真の頭に名案が思い浮かんだ。


 悠也という男を絶望させるには、当然だが咲茉を使うべきだろう。


 そして自分が人生を楽しむ為に、今まで犯してきた女の中で最高の女だった咲茉が必要になる。


 ならば、それを悠也に見せつけるのも一興だった。


 それもまた、より一層の興奮ができるかもしれない。


「寝取るのも悪くねぇなぁ……」


 その光景を想像して、拓真が下品な笑い声を漏らす。


「やっぱり主人公ならヒロインを寝取るくらい許させて当然だよなぁ」


 また自身のことを主人公だと拓真が思い込んでいる。


 数ヶ月前から自分を主人公だと思い込んでいる拓真に、少年達は密かに呆れていた。


 元々おかしかったが、更にどこかで頭がおかしくなったのだろう。


 彼の姿を見て、誰が彼を主人公だと思えるか。


 しかしそれも、少年達にはどうで良かった。


 今は自分達が美味しい思いをしていれば、それで良い。なにかあれば、あの拓真を切り捨てるだけなのだから。


 そう密かに思いながら、少年達は拓真と一緒に下品な笑い声を漏らしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] あんな目立つとこであれだけの騒ぎ起こして、身元特定されてないわけないのでは? カメラに映ってるでしょうし、あそこに来る前にも騒動起こしてるし…… 雲隠れしてるならまだしも、いくら治安悪い所と…
[一言] 悠也はともかく、この男はどうにかして欲しいですね。彼らと接触する前に怖い人の女に手を出して東京湾に沈められるとかなって欲しいですね。
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