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第67話 両方するでしょ?



 服越しでも、柔らかいふとももの感触が心地良かった。


 本当は直に触れたいと思うのが、どうしようもない男心というものだろう。


 膝枕されている悠也の手がふとももにそっと触れると、少し恥ずかしそうに咲茉がはにかんだ。


「ゆーや? そんなに私のふともも、好きなの?」

「ふとももってより、咲茉が一番好き」

「もぉー! ゆーやったら!」


 出来心で悠也がふとももを優しく撫でると、くすぐったそうに咲茉が身じろぎする。


 たとえ恋人でも、あまり度を越したことをするのは控えた方が良さそうだ。


 そう思うと、悠也は渋々と撫でるのをやめた。


 やはり咲茉を大事にすると決めたからには、下手なことは控えなければ……


「あんまり動いたらダメだよ? 今から耳掃除してあげるんだから?」


 それに、今から咲茉に耳かきをされるなら動くのも危ない。


 なにげなく悠也が視線を向けると、笑顔の咲茉が耳かきを見せつけていた。


「動いたら、めっ! だからね? 私も上手じゃないからゆーやの大事なお耳に傷つけたら嫌だもん!」

「動かないよ。でも、痛かったら動くかも」

「そうならないように、ゆっくりするから~」


 悠也の返事ににこやかに頷いた咲茉の手が、優しく彼の頭に添えられる。


 そしてゆっくりと悠也の頭を撫でるなり、咲茉の頬がだらしなく緩んだ。


「よしよし~、動かなくてえらいね~。可愛いからいい子いい子してあげる~」


 まるで子供みたいな扱われ方だった。と言うよりも、咲茉の言動が子供相手のソレである。


 しかし子供扱いされても、不思議と悪い気はしなかった。むしろ何か変なものに目覚めてしまいそうな心の疼きが、無性に悠也を不安にさせた。


「え、えま……? あんまり甘やかされると、変な性癖に目覚めそうなんだけど?」

「そんなこと言われても、今日は悠也の誕生日だもん。ゆーやが私のこと、もっともーっと好きになるくらい甘やかさないと!」

「もう好き過ぎて上限超えてるんだけど?」

「それなら、その更に上に限界突破! なんてね!」


 そんなことを笑顔で言われたら、悠也も何も言えなくなった。


 本当に可愛い。この子が、本当に自分の彼女だと思うと、気を抜くと泣きそうになった。


 もう心を決めよう。


 咲茉のふとももの感触に脳内が痺れて、耳元から聞こえる咲茉の声にまた脳が痺れそうになるが、すべて甘んじて受け入れよう。


 その結果、新たな性癖に目覚めても構わない。どうせ生涯、咲茉と一緒に居ると考えれば、どうでも良いことだった。


 きっと彼女なら、どんな自分でも受け入れてくれる。


 そう思うことにして、悠也は意を決して咲茉の耳かきを待ち受けることにした。


「じゃあ、早速入れるね~。動いたらダメだよ」

「わ、わかった……!」


 そして咲茉から耳かきをされた瞬間、悠也は動きそうになった身体を強引に抑え込んだ。


 分かってはいたが、自分でするのと誰かにしてもらうでは、あまりにも違い過ぎた。


 耳の中を、咲茉の耳かきが優しくなぞっていく。


 身体の中を触られる感触は、普段触れ合う時よりも鮮明に感じられて。


 咲茉のふとももに触れながら、彼女に身体の中を触られる。


 その未曾有の感覚が、否応なく悠也の身体を襲い続けた。


「こらー、動いたらだめだよ」

「だって、なんかくすぐったくて」

「危ないからだめ。そのうち気持ち良くなるはずだから」


 くりくり~と口ずさみながら、咲茉が耳かきを動かす。


 耳の中を全体的に掻いたと思ったら、たまに一か所を集中して掻いていく。


「あっ、ちょっと取れた」

「汚いからあんまり触るなよ?」

「汚くないよ? だってゆーやの身体から出たものだよ?」

「……」


 その言い方は、ちょっとマズイ。


 心が荒ぶる咲茉の発言に悠也が動揺していることも気づかず、順調に耳掃除ができていると咲茉が嬉しそうに鼻歌を歌う。


 人の気も知らないで……


 そう悠也が思っていても、上機嫌な咲茉の耳掃除は当然終わることはなかった。


「くりくりして、なでなでして。たまーにふーってして~」

「ちょ!」


 前触れもなく耳に息を吹きかけられて、思わず悠也の身体がビクッと震えた。


 その様子に、少し咲茉が驚くが、すぐ嬉しそうにはにかんでいた。


「あっ、もしかしてゆーや。耳が弱い?」

「そ、そうかも……自分でも知らなかった」


 自分の弱いところなど、知る機会なんてなかった。


 小さい子供の時ならともかく、お供になってから耳に息を吹かれることなんて、一度もなかったはずだ。


「こんな風に耳かきされたこと、今までなかったし」

「じゃあ、私がゆーやのはじめて?」

「そういうことだな」

「ふふっ、やった。ゆーやのはじめて、もらえた」


 また勘違いされそうなことを言い出している。


 流石に指摘しようと思う悠也だったが、嬉しそうな咲茉を見ると、思うように言葉が出なくなる。


 今の楽しそうな彼女を邪魔するのは、やはりできそうになった。


「で、次は綿の部分でくりくりするよ~」


 耳かきの綿で、細かい汚れを取り除く。


 優しく、ゆっくりと耳の中を綿でなぞられると、また違った心地良さが悠也を襲った。


「ぐっ……!」


 最初はくすぐったくて仕方なかったが、慣れてくると気持ち良さが増してきた。


 背筋を駆け抜けるような心地良さに、悠也の顔が少し緩む。


 その表情に、自然と咲茉の目が輝いていた。


「ふふっ、今のゆーや、とっても気持ち良さそう」

「めっちゃ良い。ちょっと慣れてきた」

「よーし、じゃあ私もたくさん頑張っちゃうからね!」


 綿で汚れを取った後、また耳かきで取り切れなかった汚れがないか咲茉が確認していく。


 息を吹いて、また耳かきでなぞって、そして綿で最後の仕上げをする。


 その心地良さを悠也がしばらく耐えると、ようやく咲茉が満足げに微笑んでいた。


「うん! とってもキレイになった!」

「はぁ……やっと終わった」


 心地良い時間だったが、このままだと精神が持たないと思う悠也がホッと胸を撫で下ろす。


 しかし、そんな彼に、咲茉が無慈悲な言葉を告げていた。


「じゃあ次は反対だから、ゆーや? くるって反対向いてもらえる?」

「へっ……?」

「なんで驚いてるの? 耳かきって両方するでしょ?」


 そう言われて、悠也は戦慄した。


 耳は、ふたつある。


 つまり、今起こったことをもう一度されるということになるわけで。


「い、いや……片方だけで良いぞ? 咲茉も疲れただろ?」

「疲れてないよ? むしろ可愛いゆーやをたくさん見れて、すっごく幸せ!」

「あっ……!」

「だから反対側も、ちゃーんとやるからね!」


 満面の笑顔を見せる咲茉に、悠也は何も言えなかった。


 これも、受け入れるしかなさそうだ。


 咲茉が幸せそうでなりよりだが……


 この仕返しは、必ずすると悠也は静かに決意していた。



本当にお久しぶりです。かなり更新が遅くなってごめんなさい。


12月で体調を崩して書けなくなり、1月に別コンテストの締切が迫ってることで新作を死ぬ気で執筆していたせいで、こちらの更新が遅れました。


更新がなかった時期も、当作に評価やお気に入りが増えて感謝の言葉しかありません。ありがとうございます。

これからも更新は続けますが、ちょっと不定期更新になるかもしれません。


何卒、お許しください。時間見つけて書いていきます。

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