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お布施の金額は地域と宗派によってだいぶ違うので臆せずに聞け

 葬儀社の人から冷蔵庫内の飲料について説明を受ける。飲んだらお金がかかるんですね。はいはい。と思いながらうなずく。

 酒を飲むのは恐らく叔父一人だろう。前回は父と叔父で大分飲んでいたが。


 葬儀社の人に住職の当てはあるかと聞かれる。いつもお世話になっている町内の寺の住職に頼むと母が答える。

 お布施についての話になる。どのくらい包まれるかと尋ねてくる。

 それに対して母がこのくらい、と額を言う。

「そんな安いわけはないです。直接お尋ねになってご確認した方がよろしいかと……」

 葬儀社の人の言葉に母はショックを受けていた。


 お布施の金額はどこ情報かと思えば、あのキレたおっさん父の従兄からである。


 とにもかくにも、通夜と葬儀の時間をはっきりさせなければいけない。寺に電話をかける。


 住職はすぐに出てくれた。父の死を告げる。

「えっ? ヒデオさん⁉」

 父の死は予想外だったのか、驚かれる。明日に通夜を行いたいが、都合は大丈夫かと尋ねる。


「あー、実は旅行の予定が入ってたんですけどね」

「ええ!」

 こういう時はどうすればいいんだ⁉ 誰か別の住職を紹介してもらえるのか? などと高速で思考が回る。

「ですけど、大丈夫です。行けます!」

「ええ! いいんですか⁉」

 キャンセル料とかかかるんじゃないの⁉ いいの?

「はい。大丈夫です。旅行と言っても、研修旅行のようなものなんです」

 尚更いいのか? と疑問が尽きない。


「枕経はどうしましょうか」

「まくら……?」

 母があっと声を上げた。代わってと言われたので、電話を代わる。


 枕経とは、遺体を納棺する前に読経することらしい。


 叔父や祖母の時は枕経の現場を私は見れていない。そのため、知識が欠落していた。

 住職はこの後すぐに来てくれるらしい。


 その時に、時間の詳細を決めることになった。お布施の金額もその時に聞く。午前中に葬儀を希望ということは告げた。


「住職、旅行の予定が入ってたんやって」

「ええ!」

 母も妹も驚いていた。それでも、こちらを優先してくれると。

「その旅行、あんまり行きたくなかったんじゃないの」

「そうかもね」

 母と妹は結構勝手な予想を言う。


 葬儀社の人に住職との連絡がついたと話すと、火葬場への予約も早めにした方がいいと言われる。火葬場が混むと希望通りの時間に葬儀も上げられなくなるとのこと。


 火葬場へは妹が連絡した。病院の手続きなど、妹がいろいろとやってくれている。

「火葬場いつでも行けるってよ」

 友引なので、空いていたのかもしれない。


 叔父に連絡を取る。正直、逃げたい気持ちでいっぱいだ。誰かに変わって欲しくてしょうがない。

「お久しぶりです。Aです」

「おお、久しぶりやなあ。そろそろ婆さんの三回忌やな」

 叔父は父の携帯から私が連絡したことに違和感は覚えなかったようだ。そして、祖母の三回忌の連絡だと思っていた。

「あの、父が亡くなりました」

「えっ」

 叔父は絶句した。こういう時、なんと声をかけていいのかさっぱりわからない。


「あの、明日に通夜を行って、葬儀は明後日にします。細かい時間は、まだ決まってないので決まり次第ご連絡します」

「……うん、わかった。行くわー……」

 叔父の声は明らかに力がなかった。おそらく、私ら家族と同等にショックを受けていると感じた。

 ここで、母に変われと言われたので変わる。なら最初から母が連絡して欲しいと思った。

 母は叔父に仕事の予定とかあるだろうに、すいませんと謝っている。急なことで私らもびっくりして~と話を続けている。

 こういう時、相手を気遣う言葉がなんでもいいから出せればと思う。母はそれができるのだ。母の取り繕える外面が私には身についていない。


 母が祖父の方の親戚への連絡を叔父に頼んでいる。詳細がわかってから改めてと結んでいた。


 父の従兄、あのキレたおじさんHの弟から連絡が来た。この二人の従兄には先に連絡をしていた。ごく近所に住んでいるからだ。昨夜の救急車も、うちの家の方に停まったな、と推測できるくらい近距離に住んでいるのだ。だから、黙っておくことなど無理だと連絡をしていたのだ。

 父の従兄Sは葬儀場の場所を聞いてきた。祖母の時と同じ場所だと教える。


 住職が来た。前後して、父の従兄Sさん夫妻も来た。枕経をあげてもらう。


 それぞれが急な訃報への感想を言う。母が頃合いを見て、住職にお布施のことを聞く。いつ聞こうかと思ってたら、母が切り出した。

「~万円ですね」

 住職は屈託なくすっと答えてくれた。特に嫌そうな表情もない。

「Hさんには~万円だと聞いていて」

「さすがにそれはないわ」

 Sさんが自分の兄の意見を否定する。母は天然なのか、こういう時にうっかり真実をそのまましゃべる。……本当に天然なのか?


 明日の通夜の時間と、葬儀の時間を決めた。


 葬儀社の人が来て、時間を確認した。ついでに、お布施の値段を聞いたか確認してくる。

「~万円だとおっしゃいました」

「それは、随分お安いですね。ここらは~万円ほどですよ」

 桁が違った。安くて本当にありがたい。あと、お車代、食事代をお布施と一緒に渡すようにとアドバイスが入る。Sさんも同意するように口を添える。


「兄は来とらんのか?」

「……喧嘩したんですよ~」

「誰と?」

「私と」

 多少、笑い含みに話した。何というか、あんまり真剣に話したくなかったのだ。Sさんはため息交じりに聞き、Sさんの奥さんは私に同調してくる。

「負けたらあかんでー」

 Sさんの奥さんはそう言って自分とHさんとの間にかつて起こったバトルを話して帰っていった。

 帰るときに、父方祖母の関係の親族への連絡を母が頼んでいた。


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