表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

親族室使用料35000円(会員価格)延長料1日20000円

 遺体を葬儀場へ移した。私ら家族も一度葬儀場へ向かう。

 葬儀社は祖父、叔父、祖母の時も利用したところである。いつ連絡したのかと思っていたら、病院にいるときにすでに連絡をしたのだそう。

「夜中でも対応してくれるんやね」

「待機してる人がいるみたいやね」

 そういうもんなのか、と感心した。人って急に死ぬからなあ。


 会場は一番小さいところを指定した。警察署から遺体を移すときに、母が葬儀社の人に念のために重ねて言っていた。


 葬儀場へ行き、親族控室に入った。叔父と祖母の時にも使った部屋なので、見慣れている。

 父が奥に寝かされていた。

 葬儀社の人が入ってきて、祭壇を整えていく。


 線香は普通の線香と巻き線香が用意された。巻き線香は、一晩中火が付き続けるというものだった。これのおかげで、線香の火が絶えないようにと寝ずの番をしなくてもいいのだ。

 前回、祖母の時には置いてなかった気がする。

 いろいろと進化しているんだと感心した。


 末期の水の説明を受けて、早速父の口を濡らす。ここでようやく父の顔を見た。

「寝てるみたいやなあ」

 あんまり苦しんでなさそうな顔だった。

「おばあさんに似てるなあ」

「そうやろ」

 父はずっと祖父似だと思っていた。しかし、この寝顔のような死に顔が祖母の時と重なったのだった。

「ここの兄弟、みんなおばあさん似や」

「いや、そんなことないけど」

 叔母は確実に祖母似だとは思うが。叔父の死に顔はやけに祖父に似ていたのだった。

 叔父が死んだとき、もう一人の叔父は弟の顔を見て

「親父に似とるなあ」

 としみじみ言っていたのだ。そして、父と二人して若返った若返ったと繰り返していた。遺体をきれいにする際に数年ぶりにひげを剃られたからだ。


 再び葬儀社の人と話をする。通夜と葬儀をいつにするか。

 この日はすでに14時を回っていたので、通夜を行うことは無理だった。

 お坊さんの都合もある。まずは連絡をと言われる。

 明日、通夜が行えるという前提でさらに説明を受ける。


 明日に通夜を行うと、葬儀の日が友引になる。気になさるのなら日をずらしますかと問われる。

「気にする?」

「気にしない」

「気にしない」

 全員一致で、「気にしない」だった。最短でできることを希望する。


「もうだいぶ涼しくなってきましたので、遺体はそこまで痛まないでしょうが」

「いえ、早い方がいいです」

 母は強く希望した。


「だって、それだけ長く置いたらドライアイス代も余分にかかるし、ここの部屋代もかかるし」

 母は語る。言っていることはよくわかる。


 すでに一日余分に部屋を使うことが決定しているのだ。それからさらにとなると、またお金がかかる。



「……一回家に遺体を戻した方が安かったのか?」

 部屋の使用延長料と霊柩車使用料を天秤にかけてそう思った。

「いいや! そんなことない!」

 母は強く否定した。

 確かに、祭壇を家にも用意して、布団も用意してとなるとお金がかさみそうである。布団も祭壇も使いまわせれば、費用は抑えられるかもしれないが……

 なにより、配偶者の母の希望が通ることが一番である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ