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チートな冒険者ギルドの受付嬢  作者: 秋華(秋山 華道)
チートな冒険者ギルドの受付嬢
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最高の誕生日プレゼント

この日も朝、俺は下着姿の朝里ちゃんと廊下で出会った。

流石に今日こそは声を上げるかと思いきや、ごく普通に話しかけてきた。

「おはようございます。今日は嬢ちゃんの誕生日ですから、夜は宴会しますのでよろしくお願いいしますね」

「えっ?そうなの?」

嬢ちゃんの誕生日なのか。

誕生日は流石にチェックしていなかった。

確か初日に何か言っていたような気もするが、初日の朝に挨拶した時の記憶は、何故か俺にはあまりなかった。

何にしても、今日も朝里ちゃんは特に騒ぎもせず、普通に部屋へと戻って行った。


午前のラッシュが終わった後、俺と朝里ちゃんは一緒に休憩に入り、夜の宴会の為に買い出しにでていた。

「普通、誕生日なら誕生日パーティーじゃね?なんで宴会なの?」

朝から疑問に思っていた事を聞いてみた。

「ん?同じじゃないですか。どうせ酒を飲んでどんちゃん騒ぎするだけですよね」

朝里ちゃんの目は、『何言ってんのこの人。バッカじゃないの?』と強烈に伝えているようだった。

俺はこれ以上何も言うまいと思った。

「酒は買った。ケーキも買った。つかこれ以上持てないんだけど?」

酒の量が半端なくて、俺の両手は完全に塞がっていた。

「じゃあ、ドラゴン水晶使えばいかがですか?」

朝里ちゃんはそれが当たり前だと云わんばかりだった。

いやしかし、ドラゴン水晶は貴重で超高価なものである。

それがあれば、確かにどれだけ沢山の荷物でもなんでも、水晶の中に入れてしまっておけるわけだけど、普通に手に入れられるものでもない。

ドラゴンを倒したからと言って手に入るものでもないし、とにかく超絶レアなアイテムなのだ。

「そんなの持ってるわけないでしょ」

俺がそう言うと、朝里ちゃんは何かに気が付いたようで、少し苦笑いをしていた。

「渡すの忘れていましたね。うちのギルド職員には一個配給される事になっているんです」

「えー!」

そうなのか。

そんなに素晴らしいアイテムを、俺はいただけるのですね。

忘れられていた事はこの際置いといて、俺はそれが貰えるというだけでテンションが上がった。

しかし‥‥

それってつまり、嬢ちゃんも朝里ちゃんも持ってるはずだよね。

そりゃそうだ。

家を魔改造した時の材料、どっからか出てきていたけど、アレはドラゴン水晶に入れてあったに違いないのだ。

だったら昨日魔王城に行く時、酒も入れて持って行けたのではないだろうか。

『あ‥‥忘れて‥‥違う‥‥トレーニング‥‥だよ‥‥』

とか言う嬢ちゃんが想像できた。

まあいい。

それよりもその水晶、一度使ってみたかったんだよね。

俺は朝里ちゃんの前に手を出した。

ほれ、そのドラゴン水晶とやらをよこしなさい。

当然朝里ちゃんも持っているはずなのだ。

俺は早く使ってみたかった。

すると朝里ちゃんは、その手の上に手を置いた。

「お手‥‥ですか?」

「ちがーう!ドラゴン水晶持ってるだろ!」

俺はお預けをくらっている犬のようにせかした。

「持っているように見えますか?」

朝里ちゃんは両手を広げた。

そういえば、ドラゴン水晶の大きさは、バスケットボールよりも大きいと俺の脳には追記されていた。

朝里ちゃんがそれを持っているようには見えなかった。

「つか、だったら俺が持ってないのも見て分かったよね?」

この朝里ちゃん、割と人をからかうのが好きな子のようだ。

少しイラっときた。

だけど、クスクスと笑う朝里ちゃんを見て、俺はなんかどうでも良くなった。

「じゃあ一旦ギルドにそのドラゴン水晶とやらを取りに行こうか」

「そうですね」

これ以上荷物は持てないし、どっちにしてもそうするしかなかったわけで、このやり取りはなんだったのだろうかと思わなくも無かった。

でもこういうのも嫌いじゃないと思った。


荷物は自宅に置いて、俺達はギルドに戻った。

そこで俺はドラゴン水晶を手に入れた。

「パパラパッパラー!ど・ら・ご・ん・す・い・しょー」

俺はそれを左手で持ち上げた。

あのアニメの四次元なんちゃらと同じように使えるアイテムとは言え、ちょっと大きすぎる。

こんなのを持ち歩くなんて、無理があるのではないだろうか。

それに嬢ちゃんは、一体どこに隠し持っていたのだろうか。

俺は気になって嬢ちゃんに訊ねてみた。

「嬢ちゃんも水晶持ってるよね?何処にあるの?」

すると付けていたブレスレットを外して、それを俺に差し出してきた。

そこには、ビー玉サイズの水晶が付いていた。

「おお!小さい?なんでそんなに小さいの?」

俺は気になって訊ねてみた。

すると横で聞いていた姐さんが、自分のドラゴン水晶を見せながら答えてくれた。

「ドラゴン水晶はね、持ち主の魔法によって一度だけ小さくできるのよ。それで持ち主を確定させ水晶との契約が成立する。あなたもそのままじゃ使えないから、小さくする魔法をかけてみなさい」

なるほど。

魔法で小さくできるのか。

「わたくしのは、こんな感じですよ」

朝里ちゃんもポケットからドラゴン水晶を取り出して見せてくれた。

やっぱり持ってたんかーい!

俺が複雑そうな顔をしていると、やはり朝里ちゃんはクスクスと笑っていた。

またからかわれていたようだ。

まあそんな事は良い。

三人のドラゴン水晶を見ると、どうやら大きさには個人差があるようだ。

姐さんのはテニスボールサイズで、朝里ちゃんのはピン球サイズ。

嬢ちゃんが一番小さいという事は、おそらく魔法能力が高いほど小さくできるものだと思う。

つまり俺の水晶は、きっと朝里ちゃんと同じくらいか、それより少し小さいくらいの大きさになると思われた。

「じゃあやってみるか」

俺は水晶をテーブルの上に置いて目を閉じた。

転生してから魔法なんてほとんど使った事はなかったけど、追記された記憶には、何度も使用した経験が刻まれている。

なんの問題もなく魔法は発動した。

「あら、凄く滑らかで繊細な魔法を使うのね」

姐さんがそんな事を言っているのが聞こえるが、俺は集中した。

「凄い。これほど魔法に愛されている人は見た事がありません」

朝里ちゃんまで褒めちゃって、悪い気はしないな。

「うん‥‥やっぱり‥‥魔法技術は‥‥南ちゃんが一番だと‥‥思う‥‥」

そういえばそんな事言ってたっけ?

さて結果はどうなるのかねぇ。

俺は魔法を終え目を開けた。

目を開けたそこに、ドラゴン水晶は無かった。

「あれ?どこ行った?俺の水晶?もしかして俺、魔法を失敗しちまったのか?!」

俺は頭を抱えた。

せっかくのドラゴン水晶を、俺は無駄にしてしまったようだ。

テーブルに頭を打ち付けようとした。

すると嬢ちゃんがそれを止めた。

「ここに‥‥あるよ‥‥」

俺の頭を止めた手と逆の手で、嬢ちゃんはテーブルを指さした。

そこには、前世にあったボールペンの先のボールくらいの大きさの玉があった。

「えー!こんなに小さくなったのかよ!」

俺は慎重にそれを摘み取った。

これは小さくなり過ぎである。

こんなの、簡単に失くしてしまう自信があるぞ。

俺は少しガックリときた。

すると嬢ちゃんが声をかけてきた。

「南ちゃん‥‥それ‥‥かして‥‥」

嬢ちゃんが右手を出して、そこに乗せるよう指示してきた。

俺はしょぼくれたまま、そこに摘み取った水晶を置いた。

すると嬢ちゃんが何か魔法を発動した。

嬢ちゃんの水晶から、何かが少し出てきて、それが俺の水晶に絡むようにとりついた。

そして直後、嬢ちゃんの掌の上には、水晶が埋め込まれたシルバーリングがあった。

「はい。これなら‥‥失くさなくて‥‥すむ‥‥」

嬢ちゃんはどや顔で俺に指輪を渡してきた。

俺は嬉しくて、気が付いたら嬢ちゃんを抱きしめていた。

「ありがとう嬢ちゃん!」

嬢ちゃんは少し照れて俺を引きはがそうとしていたが、特に殺されたりはしなかった。

嬢ちゃんを開放した後、俺は水晶が内側にくるように右手の中指にはめてみた。

リングの大きさは魔力によってピッタリとなり、取ろうと思わない限り取れないよう固定された。

「すげぇ!嬢ちゃんマジすげぇ!」

俺はそう言いながら、今晩は飛び切りのプレゼントを用意しなければいけないなと思った。


再び外回りに出た俺とアサリちゃんは、プレゼントを買いに行った。

正直ピンとくるものは見つからなかった。

俺は時間を貰って、自分で作る事にした。

材料はシルバーを少しだけ買ってきた。

後は両親の形見とも言える、宝石らしき物を取り出した。

おそらくそれはダイヤモンドだと思う。

でも違うかもしれない。

ただのガラス玉の可能性もある。

ハッキリ言える事は、昔親父が母親にプレゼントした物だって事だけだ。

こちらの世界でも、俺の設定は前世と似たような感じだ。

両親は死んでいる。

それで形見としてこれだけが残っていた。

俺はその宝石らしき形見に魔力(オモイ)を込めた。

『どうか幸せになりますように』

そしてさっき嬢ちゃんがリングを作ってくれた魔法を、見よう見まねでやってみた。

そこに『祝福のリング』が出来上がった。


仕事の後、もうすぐ日付が変わろうかという時間に、宴会という名の誕生日パーティーが始まった。

「改めて嬢ちゃん、誕生日おめでとう!」

みんなでそう言うと、直後からもうただの飲み会だった。

俺は酔っぱらう前に、プレゼントを嬢ちゃんに渡した。

「誕生日おめでとう。この水晶のリングのお礼も兼ねて、このリングをプレゼントするよ。出来はまずまずだと思う」

俺はそのままのリングを嬢ちゃんの手に乗せた。

「あり‥‥がとう‥‥」

嬢ちゃんが嬉しそうに照れている顔は、凶悪なくらい可愛かった。

ただ、やはり禍々しい魔力オーラは、相変わらずだった。

もう慣れたけどね。

嬢ちゃんはその指輪を、どの指にはめようか悩んでいるようだった。

「特にどの指にはめても問題ない指輪だから、好きにしなよ。どういう効果があるかは俺にも分からん」

ただ幸せを祈っただけのリングだ。

おそらく何かしらの効果は出るとは思うが、『良い事が起こる』以外には分からなかった。

多分、ステータス上昇とか、魔力アップとか、そんな効果になると思う。

嬢ちゃんは迷った末に、左手の薬指にそれをはめた。

いやいや、そこだけはヤバいでしょ。

なんせそこは結婚指輪をはめる場所だからね。

この世界でそんな決まりがあるのかは分からないけれど、俺は何となく嬉しい気持ちになった。

その瞬間だった。

いきなりとんでもない事が起こった。

「うお!なんだ?」

嬢ちゃんが光り輝きだしたのだ。

その光は太陽のように眩しい。

しかしそれはすぐに収まり、光は徐々に消えて行った。

そこには先ほどと同じように嬢ちゃんが座っていた。

俺はそんな嬢ちゃんを見て驚いた。

そこにいる嬢ちゃんの魔力が、禍々しいヤバいオーラから、清々しい清らかなオーラへと変化していたのだ。

魔力のオーラは、ご先祖様や自身の行いが反映されるとされている。

必ずしもそうではないけれど、両親の行いによる所が大きいという認識が一般的だ。

つまり禍々しいオーラを纏っていた嬢ちゃんの両親は、きっと凄い酷い事をしてきた両親だと思われるわけだ。

もちろん違う場合もあるし、それは本人の行いかもしれないとも思われる。

今でこそ嬢ちゃんは魔力を極力隠してはいるが、それができない子供の頃はきっとそれによって差別等されてきたに違いない。

今でも嬢ちゃんの魔力オーラを見る事になれば、俺のように恐怖に震える者がほとんどだろう。

当然自分の魔力がどうなのか、ほとんどの人が気にするものだ。

ちなみに俺のオーラは多少禍々しくもあるが、許容範囲内だからあまり気にしてはいない。

でももし嬢ちゃんのような魔力だったら、俺は嬢ちゃんと同じように、徹底的に隠す方向で生きていく事になると思う。

だから今、嬢ちゃんの禍々しいオーラが清々しいオーラに変わった事は、嬢ちゃんにとっては最高に嬉しい事かもしれないと思った。

嬢ちゃんが抱き着いてきた。

よっぽど嬉しかったんだろう。

何度も何度も『ありがとう』と言っていた。

俺はポンポンと頭を叩いた。

朝里ちゃんは既に酔いつぶれ、姐さんは優しい目で俺たちを見ていた。

こんな日も良いよね。

この後俺は朝まで姐さんと飲んだ。


ちなみに後日、その指輪を別の指にはめてみたら、ただの『祝福(ステータスアップ)』しか発動しなかったらしい。

だから嬢ちゃんはずっとその指輪を左手の薬指に付け続ける事になった。

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