表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートな冒険者ギルドの受付嬢  作者: 秋華(秋山 華道)
チートな冒険者ギルドの受付嬢
3/35

ギルドオープン

朝里ちゃんと嬢ちゃん、二人との挨拶が終わった後、姐さんが何やら複雑な顔をしていた。

そしてその目は、まるで俺をゴミ扱いしているようだった。

「そんな事はないよね」

俺がなんとなくそうつぶやくと、何故か隣にいた姐さんが、今にも俺を殺そうとしているような目をしていた。

あれ?なんで?

「おまえ、あんな事を嬢ちゃんに言ってたけど、責任とれんのか?」

やっぱり姐さんは怖い顔をしていた。

このギルドで働く人たちって、全員ヤバいのではないだろうか。

「いや、ヤバいのはお前だ」

あれ?俺の心の声が読まれた?

しかし俺、そんなに悪い事言ったっけ?

「アレは完全にプロポーズだったろ?おまえもしかして嬢ちゃんファンか何かなのか?」

俺はさっきの挨拶を思い出してみた。

動揺して何を言ったのか完全に忘れている。

「ん~俺?なんて言ったんでしたっけ?」

俺がそう言うと、姐さんはため息をついた。

「やっぱり何を言ったのか分かってなかったのか」

そんな事を言われたら気になるじゃないか。

「なんて言ったんですか?」

「頑張れ‥‥」

聞いてもただ肩を叩かれ、そう言われるだけだった。

まあ過ぎた事をくよくよしていても仕方がない。

俺はとりあえず仕事を頑張ろうと思った。


「さてあいつらが仕事を始める前に、おまえ、南を採用した理由を話しておく」

姐さんは改まって真面目な顔をしていた。

どうしたんだろう?

俺はそう思ったが、とりあえず返事を返しておいた。

「はぁ‥‥」

「実はこのギルドでは二年前、丁度朝里ちゃんが新人スタッフとして入って来た頃だったかな。他に男が二名働いていた」

何が言いたいんだこの人?

「いいから聞け!」

「はいはい」

「しかしその時ギルドマスターだった男、私の父だが、やんちゃな冒険者に殺された!」

「ええ!!」

ちょっと待て。

ギルドマスターってそんな危険な職業なのか?

いや、単なる事故だよね?

「更に一年後、嬢ちゃんが入ってくる前だったが、後を継いだギルドマスター、私の旦那でもあるのだが、又も冒険者に殺された!」

「がーん!」

何それ?

そんなポンポン殺されるもんなのか?

ギルドマスターって?

「そんなわけで、現在ギルドマスターである私は、今度は自分の番ではないかと警戒している」

そりゃ警戒するわな。

「つかなんでそんなポンポン殺されるんっすか?この町そんなに治安悪かったっけ?」

多少治安の悪い町である事は、一応俺の記憶に追記されてはいたが、まさかそんな事がポンポン起こるとは思ってもみなかった。

「いや、単純にギルド職員、特にマスターが危険なだけだ」

「そうなんっすか?それは大変ですね‥‥」

やべぇ~。

マスターじゃなくて良かった。

でも職員も危険だっていってたな。

つかなんでそんなにギルド職員が危険なんだろう。

「この町セカラシカは、実に微妙な位置にある町でな。西にドラゴンの住む山、東に魔王城とその町、北に大陸一危険な森が広がっている」

「マジかよ‥‥」

そんなに危険な町だったのか。

まさかドラゴンや悪魔が襲ってくるのか?

いやさっき言ってたのは、冒険者に殺されたって話だったような。

「それでだ。バカで中途半端に強い冒険者がこの町には集まってくる。そんな冒険者を相手にする仕事だ。常に危険が付きまとうわけだ」

なるほど、なんとなく分かってきた。

強いモンスターを討伐する為に強い奴らが集まってくるのは良いが、その中にはバカも多いという訳だな。

それで『あなたのランクでは無理ですぅ』とか言ったら殺される、そういう事だろう。

「分かりました。つまり冒険者には下手にアドバイスしない方が良いという事ですね?」

「何を言っている。それはしっかりやれるようになってもらわないと困る」

「えっ?」

だったら何が言いたかったんだろう。

「お前を採用したのは、そういうバカな冒険者から、私たちか弱き乙女のギルドスタッフを守ってもらう為だと言っている」

なんだそういう事か。

「ってええ?俺が守るんっすか?」

「当然だろ?お前は男だし、それに強いだろ?」

「そりゃまあ‥‥」

確かに俺は強い。

つってもまだ実戦経験ゼロなんすが。

多分強いとは思うけど、屈強な冒険者がワンサカ来たら、流石に駄目でしょ。

レベル九十九って言っても、嬢ちゃんを見る限りそんなに強いとは思えないし‥‥

「って、俺より強いのいるじゃないっすか。嬢ちゃんなら楽勝っすよね?」

「何を言っている?嬢ちゃんはそんなに強くはないぞ?まあいつもなんだかんだと言いくるめて、上手く対応はしているみたいだがな」

「えっ‥‥はぁ‥‥そうなんすっか」

やっぱりみんなあの嬢ちゃんの事は分かってないんだ。

あんな魔力、普通は隠したりしているよね。

俺もパンピーレベルまで抑えているし。

つまり何故か俺にはあの禍々しいオーラが見えてしまっているのか‥‥

「そんなわけで頼むぞ。私もそんなに弱いわけではないが、この町に来る連中の中には私以上のヤツは五万といる。期待しているからな」

期待されるのは悪い気分じゃないな。

でもこの人、父親と旦那が殺された事を結構簡単に話しているけど、辛かったりしないのかね。

「そりゃ父と旦那が殺されたのは辛いが、今はまず自分の身の安全を確保する事が大切だからな」

また心を読まれてるし。

全く、俺ってそんなに考えている事が分かりやすいのかね。

「私は営業時間中はなるべくマスタールームに引きこもるから、その間は受付と事務仕事を手伝うのが南の基本作業となる」

「はい」

ギルドマスターも大変だなと思った。


しばらくすると朝里ちゃんと嬢ちゃんがやってきた。

もうすぐ仕事開始の時間だ。

仕事は朝の九時から夜の十一時までとなる。

ハッキリ言ってブラック企業だ。

ただ、そこにはいても実際の仕事はそれほど多くはないという話ではある。

もう転職は無理だし、マジでブラックでも俺は死ぬまで社畜をするしかないのだ。

開店時間は朝の十時で、閉店は夜の十時。

併設されている飲み屋は夜中の二時まで営業しているから、そっちの方が仕事は大変だと思う。

正直ギルド勤務で良かったと感じる所だが、まあその辺りの判断はやってから結論を出す事にしよう。

「では嬢ちゃん、南に仕事を教えてやってくれ。去年朝里ちゃんに教えてもらった事をそのまま伝えればいい」

「はい‥‥わかり‥‥ました‥‥」

嬢ちゃんマジで大丈夫か?

こんなでよく冒険者相手に受付嬢なんてやってこられたもんだ。

「じゃあ‥‥教えるよ‥‥」

「おう。よろしくな、じょ、嬢ちゃん‥‥」

俺がそういうと、嬢ちゃんはとてもいい笑顔をした。

禍々しい魔力にはまだ慣れないが、この笑顔があれば逃げ出さないでいられそうだった。

「まず‥‥開店時間までに‥‥仕事の‥‥依頼書を‥‥あそこの‥‥掲示板に‥‥貼り出し‥‥ます」

「おう」

なんか嬢ちゃんの話を聞いているだけで、何もしないまま開店時間を迎えそうだな。

「この‥‥魔法インター‥‥インター‥‥」

「インターネットか?」

「そう、それだ‥‥魔法インターネットに‥‥繋がっている‥‥この‥‥この‥‥」

「パソコンかな?」

「違う‥‥」

違うんかーい!

インターネットは俺の前世の世界と同じ言葉なのに、こっちは違うのね。

嬢ちゃんはマニュアル本を開いて調べていた。

「そう、マジックボックスで‥‥昨日の閉店後から‥‥今朝までに来ている‥‥依頼をチェック‥‥」

ふむふむ。

「それと‥‥入金額を‥‥照らし合わせて‥‥」

この世界ではギルドが銀行のようなものも経営していて、お金を預かってくれたりしている。

預かっているお金からマジックボックスを使って入金が可能のようだ。

「数字が‥‥一致していたら‥‥プリントアウトして‥‥掲示板に貼る‥‥」

「分かったよ。じゃあ俺がやってみていいかな?」

正直嬢ちゃんのスローな動きはじれったかった。

「いいよ‥‥」

嬢ちゃんの返事を聞いて、俺は素早く作業をこなした。

「報酬二百ゴールド、こっちは四千ゴールド、千ゴールド、一万ゴールド、こりゃ割といい仕事だな‥‥こっちは‥‥」

俺はサクサクと仕事をこなし、十分ほどで終わらせた。

「はい終わり!どうだ?こんな感じでいいのか?」

「すごいすごい‥‥私だと‥‥いつも‥‥終わるの‥‥開店してから‥‥」

それは遅すぎだろ。

まあでもこの感じだと仕方がないか。

「で、次はどんな仕事があるんだ?」

とりあえず俺は全部の仕事が知りたかった。

「えっと‥‥受付‥‥仕事と‥‥ギルド登録‥‥」

嬢ちゃんはマニュアル本を見ながら、一生懸命俺に教えようとしていた。

たぶん嬢ちゃんは教えるのが苦手なのだろう。

「嬢ちゃん、ちょっとその本、見せてもらってもいいか?」

「うん。いいよ‥‥」

俺は嬢ちゃんからマニュアル本を受け取った。

開いて見てみる。

マジックボックスの使い方、インターネットの原理、そういうのも書かれていた。

なるほど。

このマジックボックス間で魔力が行き交って、この大陸のマジックボックスが近い所で繋がる事で端から端まで通信ができるようになっているのか。

使い方はパソコンと似たようなもんだな。

受付マニュアルは、ここに書かれている。

何々、カード確認、依頼書確認、本人確認、ランクの確認もあるのか。

ランクは睦月から始まって、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、最高ランクは師走と。

十二段階に分かれているのね。

クエストの成功失敗は依頼内容を十分確認し、お金を支払う。

ギルドの取り分は三割と。

そういえばさっき貼った依頼書の成功報酬は、預かった金額の七割だったな。

後は買取の受付とお金の入出金か。

買取価格はあそこに貼ってあるから、それをそのままと。

偽物か本物か分からない場合は、とりあえず分かる人に聞いて、無理なら今は買い取れないと断る。

後は、仕事のランクが足りない時など、アドバイスの方法などが書かれてあった。

「つか、仕事これだけ?」

「うん‥‥そうだよ‥‥」

マジかよ。

「掃除とかしなくていいの?」

「それは‥‥飲み屋の‥‥店員の‥‥仕事‥‥」

ちょっとまて。

これ、楽過ぎないか?

こんな仕事で給料がもらえるのなら、労働時間は長くても、正直超ホワイト企業に感じた。


さて開店時間が迫ってきた。

時間は九時五十分。

既に外には冒険者らしき者が集まってきていた。

ガンガンとドアと叩く者までいる。

全く、話には聞いていたが、これがおそらくバカな冒険者というヤツだろう。

「嬢ちゃん、アレ、あのまま放っておいていいの?ドア開けてやった方がいいんじゃないのか?」

俺はドアが壊されないか心配で訊ねてみた。

「うん。あまやかすと‥‥調子に‥‥のるから‥‥」

「なるほどね」

俺は心配するのを止めて、ただ開店時間を待った。

十時を前にして、朝里ちゃんもカウンターに座った。

どうやらいつも二人で受付をしているらしい。

そして俺はこれのボディーガード、或いは三人目の受付という事になるのだろう。

受付カウンターは二つしかないので、今日はとりあえず好きにしていて良いという事になっていた。

「じゃあ‥‥南ちゃん‥‥入口‥‥開けてきて‥‥」

俺は嬢ちゃんにそう言われ、カウンター横のスイングドアからフロアに出て、ドアの内側から鍵を開けた。

すると一斉に冒険者たちが流れ込んできた。

「さっさとあけろよ!」

「今日も冒険だぜ!」

「おっ!今日はもう仕事貼り終えてあるのかな。数が多いぞ」

「いい仕事探すぜ」

「ちょっと待て!それは俺が目を付けてた仕事だぞ!」

仕事を取り合う冒険者を見るに、何とも寂しい気持ちになった。

俺は正直もう帰りたい気分になった。

「はぁ‥‥」

冒険者ってこんな感じなのか。

理想はもっと格好いい男たちだと想像していた。

中には可愛い女の子も結構いて、華やかさもあると思っていた。

現実は、むさくるしい男どもがほとんどで、現在女性は皆無だった。

俺がガックリと肩を落としていると、冒険者の一人が話しかけてきた。

「おい兄ちゃん、あんた新米のギルドスタッフかい?今日もドラゴンの討伐がないんだけど、どうなってんの?」

「はぁ、そうですか。あそこに貼ってあるのが現在あるすべての依頼でして、ドラゴンの討伐依頼はないのかと‥‥」

すると今度は別の男が話しかけてきた。

「魔王討伐もねぇぞ!ここは魔王城すぐ近くの町だ。魔王討伐が無いわけないだろ?ああ?」

「そう言われましても‥‥」

本当にバカな冒険者なんだな。

そしてこういう奴の対応を間違えたら殺される、そういう事か。

「おら隠してるんだろ?さっさと依頼書を出せよ!」

男はいきなり俺の胸倉を掴んで体を持ち上げた。

片手で持ち上げる筋力は流石魔王討伐をしようと思う冒険者だけはある。

でも、俺にはそんなに強そうなヤツには感じられなかった。

こいつは小物だな。

この程度ならギルドマスターでも朝里ちゃんでも対処できるんだろう。

でもこういうバカの中に、時々ヤバいヤツも交じってくるんだろうな。

だから此処二年でギルマス(ギルドマスター)が二回殺されているという事だ。

「手をお放しください」

俺がそう言った時、横には嬢ちゃんが立っていた。

ヤバい。

顔が怒っている。

万一この子が怒りに我を忘れたら、鎮める事は不可能だ。

しかし俺もどうしていいのかわからない。

俺は強く目を閉じた。

もう駄目かもしれない‥‥

「あの‥‥暴力は‥‥良くないと思う‥‥それに魔王は‥‥討伐するものじゃない‥‥」

嬢ちゃんが何か言っている。

前半は意味が分かる。

このバカ冒険者に暴力反対を訴えているのだ。

でも後半は?

討伐するものじゃない?

意味は分からないけど、俺の体は何故か床へと下ろされた。

「ああ。すまない。魔王は、討伐するもんじゃ‥‥ないよな」

男はそう言って、フラフラとしながらギルドから出ていった。

もしかしてこいつ‥‥

俺は嬢ちゃんを見た。

嬢ちゃんは不適な笑みを浮かべた後、受付カウンターへと戻っていった。

間違いない。

アレは嬢ちゃんの洗脳魔法だ。

おそらくだが、嬢ちゃんの洗脳魔法をレジストできるモノなんて、まずいないだろう。

俺だって多分、確実にやられる。

少し体が震えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ