最近の冒険者マジでヤバい
この日、俺と嬢ちゃんは北の森に来ていた。
目的は、冒険者がどういう風に仕事をしているのか確認する為。
最近、とにかく冒険者の死亡率が高くなっている。
元々セカラシカは高レベルの冒険者が集まる町だったわけだが、勇者効果でそうではない冒険者も集まるようになった。
一応ランク相応の仕事をさせているつもりではあるが、それ以来何故か死者は増えている。
その理由を確認したかったのだ。
でもそれは、一瞬で理解できてしまった。
「うっそぉ~ウケるぅ~!毒であんたフラフラじゃん?」
「いやマジやべぇわ!俺死ぬのかな。はははは~」
「私幻覚が見えるよぉ~面白い~ナニコレ?」
「早く、毒消し草誰かくれ!」
「ちょっと待ってぇ~!独消し草見当たんないんだけど、幻覚で見つけられないや」
何という危機管理意識の無さだ。
こんなヤツらが冒険者とかやっていたら、そりゃ死者も増えるだろう。
確かにこいつらの能力なら、この程度の仕事、楽にこなせるレベルだ。
しかしこれでは今日生き残っても、この町でやっていくならすぐに死ぬ事になる。
「嬢ちゃん、どうする?」
俺は正直どう対応していいのか分からなかった。
「人間‥‥生きるも‥‥死ぬも‥‥自由‥‥」
確かに嬢ちゃんの云う通り、此処で俺たちが何かをする必要はないのかもしれない。
でもギルドの事を考えれば、手が減るのはマイナスだ。
冒険者をやる人間はいくらでも出てくるが、減る方が早ければいずれ手が足りなくなってくる。
世界の雑用係が減れば、色々な意味で俺がしんどくなるのは必至だ。
「一言だけ言ってくる」
俺は一つため息をついた。
「じゃあ私も‥‥行く‥‥」
嬢ちゃんもついてきた。
「すみません冒険者の方々。ギルド職員の者ですが、大丈夫ですか?」
「あっらぁ~?ギルドのお兄ちゃんじゃないですかぁ~!私は大丈夫ですよぉ~」
「ははは。俺も毒で死にそうだけど、多分大丈夫」
「どう見ても大丈夫じゃないんですけどぉ~!」
一人女魔法使いだけは大丈夫そうだが、頭が大丈夫には見えなかった。
「クレリックの仲間もいたと思うんですが、どうしたんですか?状態異常耐性魔法を定期的にかけてもらわないと、この森ではやっていけませんよ?」
「あ~あいつぅ~?そこにいるじゃん?あれ?二人になったぁ~」
女戦士は木を指さしていた。
幻覚はかなり酷そうだ。
「さっき喧嘩して別れたんっすよ。ヤバい。ギルドの人、毒消し草ください」
「料金いただきますよ。なんの毒にあたったんですか?」
「お金取るんですかぁ?じゃあいらない。毒消し草毒消し草‥‥」
男の戦士は鞄の中をあさり始めた。
どうやら持っているようだ。
「忠告しておきますが、直ぐに森から出た方がいいですよ。でないとみんな死にます」
「ご忠告感謝します!でもこの人たち、私のいう事きかないんですよねぇ」
女魔法使いはそう言って敬礼した後、少し苦笑いをしていた。
「とにかく忠告はしましたからね。仲間を死なせたくなかったら、あなたが二人を無理にでも引っ張って帰ってください」
俺がそう言うと、女魔法使いは笑顔で手を振った。
「はいはーい!頑張ってみます」
俺は心配で何度も振り返りながら、更に森の奥へと進んだ。
「大丈夫?」
嬢ちゃんに心配され、肩をポンポンとされた。
あの冒険者よりも俺の事を心配する嬢ちゃんが、悪魔のような天使に見えた。
この後も俺たちは森の中で冒険者を見て回った。
正直危なっかしい冒険者も多かったが、最初の奴らよりマシだったのは救いだった。
ギルドに戻って来たのは、既に陽が沈んだ後だった。
入り口を入って中を見ると、最初に見つけたパーティーの女魔法使いが酒場の方で酒を飲んでいた。
テーブルの向かいには、あの時はいなかったクレリックの男が座っていた。
二人の顔に笑顔は無く、涙がうっすらと見えた。
「死んだか‥‥」
俺はなんとなくそう思った。
スイングドアから受付カウンター内に入り、奥の部屋に入ってマジックボックスで確認したら、やはりあのパーティーの二名、死亡届が出ていた。
助ける事はできたかもしれない。
でも、あんな風に死ぬ奴は、この町だけでも月五十人だ。
世界中で見たら一体何人が亡くなっているのだろう。
それが必要な仕事もあるけれど、できる人にできる仕事をしっかりと割り当てられたら、死なずに済む人がどれだけいるだろうか。
俺は悔しくて、報告の際姐さんに自分の考えも提言しようと決めた。
「そんなわけで、このギルドのランク、見直しませんか?」
「いきなりどうしたの?今日の報告を先にして頂戴な」
俺は気持ちが先走りすぎて、結論から先に言ってしまったようだ。
「正直、今のままだと死者は増えます。冒険者ランクと魔力だけで判断するのは危険です。命がけの仕事という意識が足りません。他の森と似たようなモノだと思っているのでしょう」
俺は思いつくままに報告をした。
「ギルドとしても沢山死者を出しすぎるのはマイナスなのよね。『セカラシカギルドで仕事をしたら死ぬ』なんて噂が広がったら困るもの」
「今までも十分受付で注意はしているはずです。他との違いも説明しています。それでも駄目な以上、強制的に仕事のランクを下げる必要があると俺は思いますよ」
「ん~‥‥一応ギルド協会には相談してみるわ。でも一律ランクは揃えられているから、それを無視して仕事させるさせないってのは難しいわね」
そうは云っても、ギルド協会だって冒険者の死者が増えるのは望ましくはないはずだ。
俺はなんとか対応してくれる事を願った。
次の日、ギルド協会が対応を伝えてきた。
それは正直面倒なものではあったが、悪くはなかった。
「ギルド協会の提案は、北の森での初仕事をする冒険者に、ギルド職員がついっていって死亡事故を防ぐようにだってさ」
堂々と助けられるのはありがたい。
その時に限って言えば、蘇生も回復魔法も使っていいのだ。
「一応手当として協会側から金が出るみたいよ」
助けられて、しかも金が出るのなら文句は言えない。
「でもやっぱ面倒だよなぁ」
今は次から次へと『この町へ初心者』がやって来ている。
しばらく北の森の案内係をするのが俺の役目になるのだと思った。
しかし、この後続く姐さんの言葉がそれを否定した。
「その他森の見回りも付ける。人員が必要になるだろうからって事で、協会が冒険者を三人雇っているみたいよ。既にこちらに向けて出発させたらしいわ」
「おっ!それはすげぇ助かるな!」
やったー!
これで俺は今まで通りの生活が続けられるぜ!
「ただセカラシカまで来るには一週間はかかりそうだから、それまでは南、よろしくね」
「了解しました!」
一週間くらいなら問題ない。
ただ、それでも俺には不安があった。
あの森で冒険者ガイドのできる能力の高い人材が本当にいるのかという事だ。
この町に元々集まっている冒険者なら、自分たちがクエストを行う分にはなんとかできていた。
しかしこの仕事は、足手まといを守らなければならないのだ。
最低限必要なレベルってのがある。
俺の知る人物で上から見て行っても、『嬢ちゃん』『俺(南)』『剣心先生』『朝美先生』『勇者』『朝里ちゃん』『卑弥呼』くらいだろう。
卑弥呼クラスでギリギリ問題ないレベルだ。
俺は既に王都を含め、いくつかの町を訪れてはいるが、このクラス以上の人たちに会った事がない。
ハッキリ言ってうちの冒険者ギルド職員はチートの集まりであり、セカラシカの町がチートなのだ。
最も危険な所にある町だから当然なのだが、本当にやれる人材が送られてくるのかが気がかりだった。
心配しながらも、それから俺は北の森に初めて入るパーティに付き添った。
「森に入る前に、まず各耐性魔法をしてください」
「そんなに危険なんっすかぁ~?」
「俺結構大丈夫なんだぜ?」
「油断はしない方がいいですよ。やられたら死亡率は半分くらいあると思ってください」
「そんなにあるんだぁ~?嘘っぽ~い!」
「でもぉ~、ギルドの人が云うんだからぁ~、一応ちゃんとやっておきましょう~」
俺は死亡率が半分といったが、ノーガードの場合はもっと高くなると見ている。
対策しておけばリスクはほとんど無いが、しなければ死と考えて気を付けて欲しいものだ。
当然受付嬢の嬢ちゃんや朝里ちゃんはその辺りちゃんと説明している。
でも本当に聞かない冒険者は多い。
最初に一度痛い目を見てもらった方が良いかもしれないと思った。
俺が付き添ったパーティーに限っては、この日はなんとかミッションコンプリートできた。
他はクエストを達成できなかった所もあるが、死者はなくて良かった。




