この転生は成功?失敗?
俺の名前は上杉南。
年齢は先日高校を卒業したばかりの十八歳だ。
趣味はゲームを少々するくらいで、好きなものは猫である。
特に性格が良いわけではなかったが、面はまあまあ評価されていたし体格も平均値以上だったので、自分で言うのもなんだけど少しはモテる方だったと思う。
このまま人生を歩んでいけば、そこそこ良い会社にも入れそうな学力はあったし、それなりに楽しい一生をおくれたに違いない。
だが今日、俺は突然死んでしまった。
こういう話によくあるパターンの死に方だった。
道路に飛び出した子猫を助ける為、俺の体は咄嗟に動いていたんだ。
子猫は無事助けられたと思う。
でも俺は走ってきたダンプカーにはねられた。
気が付いたら俺は、どうやらお決まりの所に飛ばされていた。
「お主は死んでしまった。さあどうする?!」
『さあどうする?!』とかいきなり聞かれても、意味が分からないんですけど?
目の前にはいかにも偉そうな、仙人みたいな人が立っていた。
いやよく見ると椅子に座って超リラックスしていた。
多分神様だと思う。
「ほら、よくあるじゃろ?死んだら転生するって話。お主はそれに見事当たったんじゃよ。良かったのぉー」
いや、そんな事言われても、マジですか?
最近お決まりの転生に、俺が当たった?
当たったのはダンプカーだったような。
「さあ、どうするんじゃ?転生先は色々あるぞ?地獄とか天国とか遊園地とか」
「じゃあ遊園地で」
なんとなく魅かれたので、俺は遊園地と答えてみた。
「ばっかもーん!冗談に決まっておるじゃろ!遊園地に転生とかありえんのじゃ!」
なんだこの神様?
いやぜってー神様じゃねぇだろ!
ただのジジイに決まっている。
「なんだよ冗談とか紛らわしいんだよ。だったら天国でいいよ」
「天国でいいよとは何様のつもりじゃ?!お前の行いじゃ天国なんて行けるわけないじゃろが!」
全く、お前が言ったんだろうが。
「つか地獄しか残ってねぇじゃねぇか!」
俺がそういうと、ジジイは吹けもしない口笛を吹いてしらばっくれていた。
「地獄は嫌だ!もっと普通のないのかよ。だいたい俺、子猫を助けて死んだんだぞ?普通はもう少し良い所に転生させるもんじゃないのか?」
俺は決して天国に行けるような善人ではなかったかもしれない。
かといって地獄に落とされるほど悪い事もしてこなかったはずだ。
「子猫はあの後、5秒してからショックで死んだぞ?つか今お主、悪い事はしてこなかった、とか思ったじゃろ?嘘をつくな!」
子猫死んじゃったのかよ。
だったら俺は何のために‥‥
涙が出てきた。
「つか嘘じゃねぇよ!勝手に心の中を読むな!」
油断も隙もねぇジジイだな。
「嘘じゃの。親の金を盗んでアイス買った事あったじゃろ?」
「えっ?いや、あったかもしんねーけど、何時の話だよ!時効だよ時効!」
「時効?十五歳の頃にやった事が時効になるとでも思っておるのか!」
あれ?そんなに最近だったけかな。
言われてみると確かにそんな記憶もあるな。
「いやまあ、でもそんなの可愛いもんじゃねぇか。それで地獄に行くなら、世の子供のほとんどが地獄に落ちるぞ?!」
「そんな事は無いぞ?地獄に行くのは約二割くらいじゃな」
えっ?マジで?
そんなに親の金を盗むヤツって少ないの?
「まあ適当じゃがな」
「適当なんかーい!」
くっそ。俺に嫌なツッコミさせやがって。
いい加減こいつと話してるのが嫌になってきた。
いや最初からむかつくヤツなんだけど。
「ほら行きたい世界、さっさと決めんかい」
「あー。じゃあお決まりのRPGみたいなファンタジー世界で良いよ」
お決まりだからな。
流石にコレが無いとは言わせないぜ。
「なんじゃ普通じゃのぉ。でもそこは競争率が高いから、残っておるかどうか‥‥」
えー?
転生ってそんな感じなの?
残ってないとその世界には転生できないの?
神様らしきクソジジイは、資料をパラパラと見て探しているようだった。
「おおあったあった。ん~‥‥三つしか残っておらんの」
「三つあるならいいじゃん。そのどれかに転生させろ!」
どうやらようやく俺はファンタジーな世界に転生できるようだ。
「条件を聞かんでもええのんか?」
「条件?」
そんなのがあるんだ。
「まず一つ目は‥‥魔王が支配する世界で、ほぼ一週間以内に死亡が確定している世界じゃの?」
「そんな世界に行けるわけないだろうが!」
「余っている世界なんじゃから、そう期待されても困るぞ‥‥」
くっそ。
ファンタジー世界は諦めた方がいいのか?
「他は?」
俺は一応聞いてみた。
「次は‥‥普通のファンタジー世界じゃが、スライムか蜘蛛になって転生じゃな」
「それ駄目だし。ネタかぶってるし!著作権で訴えられるかもしれないし!」
「結構良いと思うんじゃがのぉ」
なんなんだ。
こんなのしか残ってないのか。
つかこれでいい方なのか?
俺は一応最後の一つも聞いてみた。
「で、もう一つは?」
「ん~‥‥これは結構普通じゃの」
「おっ!普通のがあるのか?だったらそれでいいよ」
なんだあるんじゃないか。
だったら最初からそれにしてくれよ。
「でものぉ‥‥冒険者とは限らんぞ?」
どういう事だろうか。
ファンタジー世界への転生と言えば冒険者が基本だが、そうではないという事だろうか。
「いやでもさ、別にどんな人に転生してもさ、冒険者をやろうと思えば転職もできるんだろ?」
そうそう。
例えば酒場の従業員に転生してもさ、冒険者がやりたければできるはずだ。
職業選択の自由くらい普通あるよね。
「うんにゃ。この世界は終身雇用の世界でな。七十歳までに転職すると死ぬ設定になっておる」
「えー?!」
何その設定?
つか設定って何?
何処の世界に設定なんてあるんだよ。
完全にゲームの中の世界じゃねぇか。
「それで、この世界がええのんか?」
くっそ。
とはいえ別の世界を探して良いのがあるとも限らないし、このジジイとこれ以上話すのも鬱陶しい。
「冒険者になれる可能性はどれくらいなんだ?」
「そうじゃのぉ~壱パーセントにも満たない感じかの」
そんなに少ないのか。
「他にはどんな職業になる可能性があるんだ?」
もしかしたら冒険者よりも良い職業になる可能性もあるじゃないか。
「王様、貴族、大商人‥‥」
「おっ!そんなのもあるんだな」
「辺りが当たるのは天文学的数字じゃの。大抵は町で働く誰かになるじゃろ」
そうなのか。
少し期待したけど、それならまあ前世とそう大して変わらないのかもな。
「分かった。もうその世界で良いよ」
「やっと決めたか。じゃあ説明するぞ。転生前にお主には、此処にあるガチャを一回ずつ回してもらう」
神様がそう言うと、目の前にガチャマシーンが二個現れた。
「ほう」
「それによって、お主のステータスと職業が決まる事になる」
なるほど、これは面白い。
俺はこう見えてガチャは大得意なのだ。
ソシャゲはそれなりにするが、大抵リセマラしても最初に引いたヤツが一番良かったり、だいたい二番目くらいに良いヤツを引き当てるのだ。
って、それって良いのだろうか。
俺は少し自分の運を疑った。
「安心するがよい。ステータスに関しては、ほぼ平均以上の数字が出るようになっておる」
「そうなのか?」
だったら問題ないか。
でもファンタジー世界って、普通に安全な世界でもないよな。
ある程度強くないと、即死亡もありえるんじゃねぇか?
「まあそんな事もあるじゃろうな」
またこのジジイ心を読みやがって。
「レベルは壱から百まである。だいたい五が一般平均男性のレベルじゃ。平均以下が出る事はほとんどないじゃろ」
確かにジジイの言う通りだが、五パーくらいは平均以下が出る。
そんなのを引いたら洒落にならないぞ。
「魔力はだいたいレベル壱に付き、倍になるようになっておる。レベル五とレベル六だと魔力は倍違うというわけじゃ」
「そんなに差がつくの?じゃあレベル百とかもう完全にチートじゃねぇか」
これはヤバい。
なんとしても百を引きたい。
一度やってみたかったんだよね。
『俺無双』ってヤツ。
俺は少しワクワクしてきた。
「じゃあ一応他の説明もしておくぞ。この世界への転生の場合、性別はそのまま、容姿もそのまま、年齢もそのままじゃがええか?不細工は不細工のままじゃが?」
「良いにきまってんだろ?俺の顔を見て聞いてんのか?」
「全く口が悪いのぉ。説明するのも面倒になってきたわ。それでええならガチャを回すがよい」
神様の言葉を聞いて、俺は少し緊張してきた。
万一最悪の数字を引いてしまったら‥‥
俺はこのジジイ以外の神様に祈りながら、ガチャを回した。
出てきたカプセルには、九十九と書かれてあった。
「よっしゃー!大勝利!」
壱足りないのは俺らしいが、まあこれなら相当無双できるに違いない。
「ちっ!レベル八十くらいまではほとんど魔力ゼロだから、ハズレの方が多かったんじゃがの」
おいマジかよ。
助かったー!
「それと言い忘れておったが、死んだ時の行いによってレベルは決まるから、お主なら九十以上はほぼ確定しておったでな」
「先にいわんかーい!」
全くドキドキさせやがって。
まあ結果的にその中でも上位を引けたのは良かった。
後は‥‥
「次は職業じゃ。こっちは完全に運じゃからの」
今度は運か。
せっかくこのレベルを引き当てたんだ。
できれば冒険者、最悪でも冒険ができる職業お願いしまーっす!
「じゃあ回すぜ」
俺は唾を呑みガチャを回した。
出てきたカプセルには『冒険者』と書かれているのが見えた。
「やったー!大勝利だぜ!これで俺はファンタジー世界を遊びつくせるぞ!」
俺は喜んだ。
目一杯喜んだ。
ジジイに見せつけるように喜んだ。
やーいやーいジジイ、ざまあみろだぜ!
俺はジジイをバカにした目で見て、おちょくるように小躍りしてやった。
するとジジイは、少しいやらしい笑いをしてきた。
「あんだよ?」
「よく出てきたガチャを見てみい」
何かおかしな所があったのだろうか。
いや確かに『冒険者』と書かれていたはずだ。
俺は改めて出てきたカプセルを確認した。
そしたらそこには『冒険者ギルドの雑用係』と書かれていた。
文字が隠れていて見えていなかったようだ。
「俺は一生雑用係だと!」
ショックで少しの間意識が飛んだ。




