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少しずつ、交流を深める ②

「私、どちらかというと親に決められるままに生きてきたから、自分の為に動いている人たちってとてもすごいなと憧れるの」



 私自身が、貴族令嬢としての柵の中で生きてきた。

 出戻りして、そういう柵が少し緩くなっているけれど――それでも私はそういう柵の中で生きている。


 だからこそ、そういう自分の意志で動いている人たちへのあこがれが強い。

 


「そうなんだ。俺の家は全部自分で決めろって感じだったからな。まだ幼い子供になんでも決めさせようとしてたから、親から決められているっていうのが想像がつかない」



 そんなことを言うラト君。



 私とラト君って、結構正反対なのかもしれない。

 私は親に決められた道をずっと歩み続けていて、出戻りして親からの期待はなくなった。でもやっぱり私は親に決められた道を歩もうとしている。……なんとか自分の意志で自立出来たらと考えているけれども、それでもそれが出来るかも親からの柵から外れられるかもわからない。



 ラト君は聞いている限り、とても自由な道を歩んでいる。それはご両親が子供の一人一人の意志を尊重しているからと言えるだろう。自分の意志で、やりたいように、動いている。それどころかラト君がやりたいことを邪魔するものを親の方が排除しそうな感じらしい。





 ――今の私は、まだ自由とは程遠い。

 いつまでも出戻り令嬢である私がこうして外に働きに出たり、街を歩けるかもわからない。私の両親は、今、私に価値がなくなったと思っているからこそ、そのまま放っておいてくれている。

 出戻りで、子供が産めないと思われている私を誰かが求めることはあまりないだろうけれど……もし両親が誰かに私を差し出すことがあるならば、その前に家から出たい。年を重ねるごとに、私の貴族令嬢としての価値がなくなっていき、益々実家での立場も悪くなり、今よりももっと悪い立場になるだろうから。



「ねぇ、ラト君、自分でなんでも決めるってどんな感じかしら。自分で何か決める分、色々大変かな」

「大変というか、まぁ、自分で決めた分、その責任は自分で背負う必要はあるとは思うけど」

「そっか……」

「でも自分で決めることにその結果を責任として負うとしても、そんなに難しく考える必要はないと思うけど」

「それってどういう意味?」

「周りの人に幾らでも助けてもらえばいいってこと。ペネが何かやりたいことがあって、自由になるために何かを起こしたとしても、それを助けようとする人は周りにいるだろう。オレユさんもそうだし、ペネと関わっている街の人たちはペネをよく思っているから。それに俺も知り合いが困っているなら助けるぐらいは出来るし」




 自由に何かを行うということは、それだけその結果の責任を自分で負うことになる。

 私は――お金が貯まったら一人で、生きていけたらって、誰も知らない場所で生きていけたらって……そう思っていて、それをたった一人でなさなければ、周りに迷惑をかけてしまうんじゃないかとか、そういうことばかり考えていて……でもラト君の言葉は一人でやらなきゃって気持ちや不安を拭うものだ。


 オレユさんたち夫妻もラト君の言葉に笑いながら頷いていた。


 私は仮にも貴族の令嬢で、出戻りしたとしても貴族として生きてきた責任があって……私が子爵家から出る時、誰かの手を借りたらきっとその人に迷惑をかけてしまう。……うん、やっぱり難しい。一人の力で子爵家を出るのは難しいけれど、でも周りに迷惑をかけたくなくて、そういうことを私はずっと悩んでいる。



 多分、ラト君の言う通り私を助けてくれる人はきっといる。家を出るためにお金を貯めようとしている私だけど、オレユさんたちに言えば、そういうことをしなくても違う街に送ってくれるかもしれない。だけど、やっぱり私は踏ん切りがつかないから、少しずつ行動をしようとこうしてお金を貯めている。



 やっぱり色々と難しい。



 そう考えている中で、ラト君から仕事が終わったらお茶に行こうと誘われる。

 多分、私が考え事をして暗い顔をしてしまったからかもしれない。



 その後、ラト君と一緒に喫茶店に行った。



 ラト君と一緒にのんびりとお茶をする。穏やかな夢心地な時間。現実だけど現実じゃないみたいな、街での日々。



 ――子爵令嬢という地位を捨てて、家を出るとなると、こうして親しくなったただのペネとしての繋がりもなくすことになるのだろう。




 ラト君は、期間限定でこの街にいてきっともうしばらくしたら仕事が終わってこの街から去っていく。



 それを思うと少しだけ寂しい気持ちになった。




 それは少しずつラト君と距離を縮めているからと言えるだろう。





「ラト君、いつまでこの街にいるの?」

「あと少しだけ。仕事が終わればまた次の仕事だから」

「……そうなると、寂しくなるね」

「また会いたかったら会いに来るから、それで終わりではないよ?」

「……そうね」



 ラト君がこの街からいなくなった後、どのくらい私はこの街にいるだろうか。そう考えると、ラト君がこの街から去ったらラト君と関わることも無くなるんだろうなと思った。




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