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ショートショート12月~2回目

年越しを愛する君と♥️

作者: たかさば

 今日は大晦日。

 去年までは寂しい年末を迎えていたけれど、今年の僕は一味違う。


 ……彼女が今から、来るんだよん!!


 バレンタインデーに逆告白してゲットできた、僕の愛おしい彼女が!!

 もう間も無く!!

 我が家に、クールー!!


 もうさ、朝からテンション上がりまくりなんだよ!!


 ずいぶん前に僕の部屋に来てくれた時に、掃除が行き届いていないせいで彼女怒っちゃってさ…、およそ半年振りの来訪なんだ!!

 ぐふふ、今日はきっちり掃除もしたし、彼女を怒らせるようなものは……何もない!


 ヤバイ本も大掃除にかこつけてゴミに出したし、食べかけの食材も捨てた、出しっぱなしの服もきちんとクローゼットにしまいこんだし、僕と彼女のラブラブを阻止する無粋な連絡が来ないよう電話もコンセントを抜いておいた。


 準備は万端だ、あとは彼女が来るのを待つのみ!!


 そうだ、一緒に年越しそばを食べる約束をしてるから、お湯だけでも先に沸かしておこうかな!

 あとはゆでるだけにしておけば、その分ラブラブとした時間を長く過ごせるじゃん?


 僕は寸胴鍋に水を入れ、火をつけて!!



 ピンポン♪



 彼女、キター!!


「さやちゃん!!いらっしゃい!!さあ、こっちへ!!今ね、お湯沸かしてるんだ、一緒にそばを作ろう!!」

「う、うん……お邪魔、します……。」


 アア、前回の失敗が、いつも無邪気な彼女の表情を曇らせている。

 あたりをきょろきょろ見まわして、恐る恐る靴を脱いで…あがる。

 ……そんなに警戒しなくてもいいのになあ。


 ちょっぴり寂しさを覚えるけれども、この状況を生み出してしまったのは、僕が至らなかったせい……。

 しっかりと気を引き締めていかねばなるまい。


「ゴールデンウィークの時はゴメンね?今日は…ちゃんと掃除もしてるし、さやちゃんが怒るようなものは何もないから…安心して?」

「……うん、分かった。えっとね、私スーパーでえび天買って来たの、一緒に食べようと思って!」


 にっこりとレジ袋を差し出すさやちゃん…、アア、ぷりぷりのほっぺとつやつやの唇が……はッ!!いかん、いかん!!!


「ありがと!!じゃあ、そば茹でよっか!!さ、コートを脱いで…玄関にかけておく?それともクローゼットに?」

「すぐに初詣行くでしょ?玄関でいいよ!」


 靴箱の上にコートを畳んで置いて…二人で並んで、キッチンに立つ。


 ぼこぼこと沸騰し始めたお湯・・・アア、僕の中の熱も、今まさに沸騰しているのだけれど。


 ……うん、お楽しみはまだまだ、これから。

 あせるな、あせるな……。


「おそばの乾麺、どこにしまった?先週山陰の道の駅で買ったやつ!」


 この前ドライブデートに行った時に、ふと面白い建物を見つけてさ。

 予定外だったけど立ち寄って、そこでそば打ち体験をしたんだ。

 おいしくってさ、大喜びで乾麺を買ったんだよね。

 で、年越しそばで食べようねって約束して…あの流れは最高だった、あの日道の駅に寄ったから、今ここに愛する彼女がいるのだ!!


「うん、そこの棚の中に入れてあるよ、取ってもらっていい?」

「ここ?・・・なんか色々入って」



 ピンポン!!



 なんだ?こんな大晦日に!

 しまった…、電話のコードは抜いておいたけど、インターフォンをきるのを忘れていたらしい。


 ピンポン!ピンポン!!


「ゴメン、ちょっと出てくるから、麺ゆでといて!」

「あ、これかな…あれ?袋・・・」


 一人玄関に向かうと、後輩だった。

 クソッ、気の利かないやつだ、なぜ僕とさやちゃんの蜜月を邪魔するんだ!!


「先輩ちーすwwwうまい食材入ったもんで持ってきたわ!」

「…ちょ!!!待てよ、今彼女が来てるから」



 どさ!!!!



「じゃーいいおとしをー!来年度もよろしく!!」


 まずい!!!

 後輩は気の利くいいやつだが、如何せん強引で気が利かない!!

 何で肉嫌いのさやちゃんがいる時に僕の大好物の肉の塊をもって来るんだ!!

 こんなの見つかったら……今度こそ破局の道が・・・・・・



「きゃあああああああああああああ!!!!!」



 どうにか肉を片付けようと手を伸ばしたとき、キッチンから愛する人の悲鳴が聞こえた!!!


 僕は一瞬でキッチンに戻り・・・うわあ!!!!



 ぬちゅっちゅぬぽっぽ♡にっちゅにっちゅ!!!



 寸胴鍋からはみ出してへらへらと喜んでいるのは……ちょ!!


 乾燥触手じゃないかアアアアアアア!!!


「ひゃ、ひゃはああああ!!!そば、そばが…そばじゃないぃいいいイいいいい!!!」

「あーもー、何でさやちゃんこんなものお湯に入れたのさ!!」


 乾燥触手は通常、一本づつ水に投入してから装着することが推奨されている。

 100本入りの触手をすべてお湯の中に入れてしまったせいで、お湯不足と熱による相乗効果がハンパないらしく……触手たちのコネクティング欲求がすごい…ああ、戻してくれたさやちゃんにみんな群がっちゃって!!


 ぬちゅっちゅぬぽっぽ♡にっちゅにっちゅ!!!


「ぎ、ぎゃああアアア!!ぬるぬるのっ!!ヒィイいい!!!あつ、あっ、き、きぼちわる…ちょ、イヤッ!!そんなとこに入んないでぇええええええ!!!」


 生の人肉、しかも生きてるやつなんて…なかなか滅多に対面できないからなあ。

 ここぞとばかりにケラチノサイトにむしゃぶりついてるぞ、やはり人肉と触手は非常に相性がよく・・・。


「ちょっと?!何で助けないの?!どうして見学してるの!ニヤニヤしてるとかどういうつもり?!こういうところが嫌なのよっ!だいっきらい!」


 しまった!!


 烈火のごとく怒りの感情を爆発させている人肉じゃない、愛するさやちゃんがアアアアアアア!!!


「ご、ごごごめん!!!今すぐ元に戻すから!!!」


 僕はゆだっている触手を二次元圧縮で回収し、お湯を入れ替えクリーンな状態にした。


「サイテー!!べたべたじゃない!!…もう帰る!!こんなんじゃ帰れないから服貸して!!タオルも!!」


 びちゃどすぶちゃどたびちゅばた、びちゅっ……!ガ、ガガガガ!!


 触手の粘液でびしょびしょになってしまった体で、リビングにあるクローゼットを開けたさやちゃん……。


「ぎぃいいいいいイいいいイやアアアアアアアアアアア!!!!!何、なにこれええええええええええええ!!!!!」


 アア、クローゼットに朝方押し込んだ、人肉スーツを見て腰を抜かしている最愛の人が。


 おじいちゃんと子供にマッチョ、陰キャにパリピに…でも、さやちゃんに怒られてからは、女性のスーツは買わないようにしてたからたぶんセーフ……?


 一応防腐剤とか添加しないで自然の肉質をキープしてるから、不自然ではないはず…。

 初めてコレクション見せた時に穴だらけなのにぴちぴちしてて怖いって言ってたからさ、ちゃんと手を加えずにキッチリ腐敗させてるし…って、あれ。


「ヒッ…ひぃいいいいいいん……、もうやだ、やだよぉおおおお!!!」


 ばたんっ!!!

 びたびたびたびた・・・!!!


 さやちゃんは勢いよくクローゼットを閉めると、まっすぐに玄関に向かって!!


「ぎぃやあアアアアアアアアあああああああああああああああ!!!!!」


 アアア!!!玄関に、後輩の持ってきた肉が、置きっぱなしだったアアアアアアアアアアア!!!!


 慌てて玄関に向かうと。粘液まみれのさやちゃんが・・・さめざめと涙を流している。


「ねえ…なんでここに変な生き物?これ、人の足だよね?なんなのこれ?うふ、ウフフ・・・!!!」


 泣いてるわりには笑っているぞ、機嫌治ったのかな?

 どうも僕は人間の感情というものがイマイチよくわかってなくて…。

 多分大丈夫だよね、状況説明だけきちんとしておこう。


「これはふんかま星人だよ、落っこちてた人間を食べてたから捕獲されて、食用肉として後輩が持って来てくれたんだよ、大丈夫、人肉部分は消化されてるから気にしないで?口からはみ出てる部分はもったいないけど廃棄するね、パーツになってる人肉は怖いって言ってたもんね?うんしょ……。」


 多次元廃棄ボックスにふんかま星人の口から飛び出しているおっさんの足を突っ込んで、肉は…圧縮ボックスに収納した。


 ああ、ついでにさやちゃんの粘液も吸い取っておこう、部屋中に粘液が飛び散ってると…おなかがすいちゃうんだよね。

 僕は吸収体を放って、水分を集め始める……。


「ごめんね?びっくりさせちゃった。おそば、食べられる?僕ね、おいしいそばつゆ、研究したんだよ。さやちゃんに喜んでもらおうと思って。大丈夫、ちゃんと海産物と菌類でしか出汁取ってないよ、肉は使ってないからね?骨はちょこっと…何でもないよ!」


 腰を抜かしているさやちゃんを立たせて、そっと腰に手をやり部屋の中へと促す……。


「はい、触手のしるしるも乾いたよ!もうキレイになったし、気を取り直して一緒においしいおそば食べようよ?えび天、僕食べたことないんだ!楽しみ!!」


 優しく声をかけつつ、さやちゃんの顔をのぞき込むと……え、なんで…そんなに血の気が引いてるの……?

 つい今の今まで陽気に笑っていたのに、ホント感情ってころころと変わるなあ、正直ついていけないよ。


「もうヤダ…やだよぉ…宇宙人が彼氏とか、無理、無理……。」


 粘液質の無くなったさやちゃんが、めそめそと泣いている。

 その、愛らしい目から流れるのは、至高の……しずく。


 ……ぐぐ、ぐぅうううう。


 ああ、実に。


 実に、うまそうな。


 ……ぺろり、ぺろり。


 指で拭うふりをしながら、多次元でしずくを捕食する。


 ……じゅるり、じゅるり。


 キスをするふりをしながら、体液をすする。


 ……はむ、はむ。


 うっとりしながら、唇で肉をはみ……。


 ……ボリ、ボリ。


 ……はッ!!!!!!!!!


 し、しまッたああああああああ!!!!!!!!!


 ついついうっかり、さやちゃんをもぐもぐして、してえええええええ!!!!


 ああ、もうこれで何度目だ?

 ああ、確かこれで八回目だ。


 いつだって僕の欲望が抑えられなくて食べちゃうんだよね。

 いつだってさやちゃんの魅力にめろめろで我慢できないんだよね。

 いつだって食べちゃってから後悔しちゃうんだよね。


 食べちゃったら、おしまいだからなあ……。


 怖がりながらも、僕のこと許してくれたのって、さやちゃんだけなんだよね。

 泣き叫びながらも、僕のこと怒ってくれたのって、さやちゃんだけなんだよね。

 呆然としながらも、僕のこと見つめてくれるのは、さやちゃんだけだったんだよね。


 アア、なんて……可愛い、僕の、さやちゃん。


 足の爪まで堪能したところで、僕は時間を移動し。


 棚の中から乾燥触手を取り出して多次元ボックスに入れ。

 クローゼットの人肉スーツを二次元シートにはさみ。



 ピンポン♪



 彼女、キター!!


 にっこり笑顔で愛おしい彼女をお出迎えし。


 インターフォンの電源を消して……と。


「…いらっしゃい、さやちゃん♡」

「う、うん……お邪魔、します……。」


 僕はにっこり笑って。


 愛する彼女に、キスを落とした。

なお、このあとさやちゃんは、トイレを借りた時に流しきれてない人肉の欠片を発見して悲鳴を上げ、ガレージにとめてあった宇宙船内にサンタさんの贈り物(だし汁用の骨)があるのを発見して気絶し、空の上でランデブーついでに大気圏に突入して瀕死になり、散々な年越しをした模様です((((;゜Д゜)))


ちなみに、宇宙人との恋愛を綴った物語を連載しております、よろしければ合わせてご覧下さい(*´-`)

作者マイページ→シリーズ一覧→連載中もの→エコー

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― 新着の感想 ―
[一言] 普通のラブコメを読んでいたはずが……。 いつの間にか……。 触手……。宇宙人。まぁ、これが平常運転。はい。 あけおめです。 今年も楽しい物語を楽しみにしておりまする〜。
[一言] ( ゜д゜) (つд⊂) (;¯°д°¯) 「ヤバイ本」は絶対ヱ□本ぢゃないと思いますたwwwwww
[良い点] あらー。タイトルから既に嫌な予感がしたら案の定。 [気になる点] 肉体ウマー [一言] 汁か。汁かァー!
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