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プロローグ:ハロー、そして……グッドバイ私!?


「こんにちは! 私、天ノ橋(あまのばし)(つむぎ)! 先月高校を卒業して、大学生になったばかりの女の子です。って、誰に向けて言ってんだー!」


 住宅街の一等地にある自宅を飛び出して、よそ行きの服装をした彼女は独り言とともに街を駆け抜ける。

 友達は多いほうだが今日は敢えて、おひとり様を楽しもうというのだ。

 元々かわいらしい容姿をしていたことに加え、風になびく栗色のショートヘアーは美しく、道行く人々の注目を集めた。


「今日は大学も休講日〜♪ 何して遊ぼっかな……そうだ。まずは動物園行こっ」


 判断の早い紬はすぐさま付近にある動物園へと向かう。

 彼女はその動物園のリピーターでもあり、受付嬢をはじめとするスタッフにも顔を覚えられていた。


「ウサギさん、オオカミちゃん、ネコちゃん、牛さん、恐竜さん……の、化石っと。ペンギンさんも……」


 ……化石については彼女のバッグにぶら下がったストラップを指し、この動物園に展示されているわけではない。

 それ以外はここで飼育されており、いずれもみんなのスターあるいは知る人ぞ知る人気者だ。

 何を隠そう、名古屋と白浜以外でコウテイペンギンを見ることができる貴重なスポットでもあるため、ペンギン館はとくに人が多く紬もそのひとりだ。

 南極を模したケージの中で親鳥と一緒に飼育されていた雛鳥を見て、彼女は心から癒されパワーも分けてもらう。

 あとはランチやスイーツを味わい、キリの良いところで動物園を後にした。

 次はまた違うところへ遊びに行こうというのだ。


「危ない!!」


 その時だった。

 横断歩道に白いネコが飛び出したのを見た紬は放っておけずにその白ネコを庇い、代わりに……トラックに轢かれた。


「父さん、母さん、ごめん……ね……」


 ああ、終わった……。

 終わってしまった。今この瞬間、輝かしい人生も終わりを迎えたのだ。

 諦念に至った彼女は、周りが騒然とする中で救急車に搬送され、病院のベッドの上で息を引き取った。

 あのネコを守ることができて良かった、それだけが救いだ……と。

 紬に心残りがあるとすれば、それは――両親より先に命を落とした、とんだ親不孝者になってしまったことだ。

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