第11話 屋上へ
華凛は雅と手を繋いだまま階段の前の廊下でじっと待ち続ける。
彼女と何か話そうかと思ったが特に話す話題が見つからないし、雅が黙っていたので自分も黙ることにした。
時間が静かに過ぎていく。やっぱりこのままは良くない。同じ部活の仲間なんだし陽菜がいなくても何か話そうかと華凛が決心しかけた時だった。
「待たせましたわね、二人とも。さあ、行きましょうか」
走るなと怒られない程度の速足で陽菜が戻ってきた。目的は達成したらしく上機嫌な顔をしていた。
雅も帰ってきた友達に上機嫌に答える。今までの止まっていた空気を振り切るように。
「うん、行こう。今こそ目的を果たす時」
「あ」
繋いでいた手を雅がふいっと離してしまった。待ち合わせが終わったのだからもうここでこうして留まる必要は無いのは分かるが、雅が何の躊躇もなく手を離したことを残念に思う華凛だった。
ここからはいつもの三人。いつもの活動を続けよう。
そう思う事にして、華凛は黙って陽菜と雅の後をついていった。
二人の背中に続いて華凛は階段を昇っていく。どこに行くのかはまだ知らされていないが目的地は上の階にあるようだ。
陽菜が昇っていくので雅と華凛も続いていく。
やがて三階のフロアに着いた。廊下に足を向けることはなく、陽菜の足はまだ止まらずにさらに上の階へと昇っていく。
その足に続いて雅が階段を昇っていき、華凛もその後に続いていく。
このまま行くと、もしかして屋上まで陽菜は行くつもりなのだろうか。
屋上に出る扉は施錠されていて通れないはずだが。そう以前に悪魔の力を使って屋上を通ったことのある華凛は知っていた。
屋上に行くのだろうかと思った華凛の憶測は当たっていた。
階段を一番上まで昇りきった陽菜は屋上に出る扉の前まで辿り着いた。ここはやはり施錠されているようだ。陽菜はすぐには開けようとしない。
悪魔の力を使えば鍵を開けることなど造作もないが、手伝いを申し出る必要は無かった。
陽菜がポケットから出した手には鍵があった。それを見て雅が訊ねた。
「その鍵どうしたの?」
「職員室から借りてきましたのよ」
「よく貸してもらえたね。わたしは星を利用した魔術で使いたかったのに立ち入り禁止だって言われたのに」
「ええ、気前のいい教師がいて助かりましたわ。さあ、開けますわよ」
陽菜はまた権力を使ったようだ。雅の訊ねた答えに華凛はそう思った。
陽菜が鍵を使ってがちゃりとロックの外れる音がする。ノブを回してドアが開く。屋上からの風と光が差し込んできた。
目的地への到着だ。果たしてここで陽菜は何を行うつもりなのだろうか。華凛の心は興奮に高鳴っていた。
 




