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8話:ただ前を見て

 この地下最大の脅威――超大型ネズミが崩れおちるさなか、

 オレの視界――その端になにかが映りこんだ。


 人間大のなにかが、

 猛スピードでオレに向かってくる。


 ネズミがいた方向からなにかが急速に近づいてきた――

 そのことに気づいたのは、ソレがもうオレのすぐそばまで近づいてきてからだった。


 ――ネズミの配下か!?

 ――親玉が殺されたその報復か!?


 直感的にオレはそう考える。


 しかしちがった。

 ソレはネズミではなかった。


 なぜならソレはするどく重い、

 長い鉄剣の斬撃――


「――っ!」


 オレはとっさに聖剣を盾にする。

 するどい金属音が地下内に響きわたった。


 鉄剣と聖剣。

 敵意と戦意のぶつかりあい。


 戦意――なのか?


 一歩まちがえば袈裟けさがけで斬られていたろう一撃。

 触れる寸前、間一髪でオレはふせいだ。


 そこまできてはじめてオレはソレをじっくりと見定める。

 ソレ――いや、“彼”は口元をゆがめていた。


「なっ……あんたは……!」


「生意気にふせいでんじゃねぇよ能ナシがっ!」


 “それ”の正体は青年剣士。

 オレをおとしいれたあの青年剣士だ。


 さきほどまでオレよりずっと遠く、

 超大型ネズミをはさんだ向こう側にいたはずだ。


 ネズミの攻撃に対し、

 あの踊り子とともに長剣をふりかざして応戦していた。


 “飛ぶ斬撃”が超大型ネズミをくだすと同時に、その騒ぎに乗じたのか。

 その脇を抜けてオレに向かい、一直線に走りこんできたんだ。


 もうひとり――踊り子はどこにいる?

 それを確認しようにも、目のまえに迫る敵意に手一杯でそれどころではない。


 青年剣士はつばぜり合いつつ、

 目のまえのオレに向かって憎々しく悪態をついた。


「なんで……なんでおまえなんだ!」


 声を荒らげ、

 ぎろりと睨めつけてくる青年剣士。


「オレは火の魔法使いだ! 伝説の勇者と同じ属性だぞ!? 才能がある!」


「だからなんだってんですか!」


 オレも言われっぱなしはしょうに合わない。

 剣で押し返しつつ、反発の言葉をぶつけ返した。


「あなたが魔法使いであること……才能があることが、オレになんの関係があるんです!?」


「大有りだ! 俺のほうが断然、勇者にふさわしい! ……仮にそうじゃなかったとしても……おまえが……まちがっても無色のおまえじゃありえねぇんだよ!」


 怒声とともに、より一層、

 青年剣士の剣勢がつよくなる。


「魔力ゼロの能ナシがよぅ……俺らが苦戦したあの親玉ネズミを一撃で倒すなんて……あっちゃならねえんだ!」


「ぐっ……!」


 オレは彼の勢いに押し返される。

 彼が剣を振りきると同時に、後ろに跳ぶかたちで後退した。

 青年剣士から距離を取る。


 彼は俺のもつ聖剣を指差して言った。


「それだろ!? その剣のおかげだろ!? でなきゃありえねぇ! おまえはただ偶然その剣を手に入れただけだ! 運がよかっただけだ!!」


 ――この剣……そうだ聖剣!


 そのときはじめて、

 エクスカリバーから完全に“光”が消えていることに気がついた。


 最後に残った魔力をおぬしに託す――

 彼女つるぎはそう言っていた。


 剣の魔力が尽きたのだ。

 そしてその効力も失われた。


 心のなかで何度呼びかけても、

 彼女の声はもう響いてこない――


「おまえをここで再度始末する」


 青年剣士はふうと息をついて、

 冷淡に言い捨てた。


「おまえをここで始末してあの親玉ネズミの魔石を見せれば、モンスター退治の戦果は俺のもんだ。そしてその剣は採掘品だって言えばいい」


「その剣……だと?」


「おまえのもつその剣だ。さっきの斬撃を放った聖剣。それはおまえにふさわしくない。俺に……俺にこそふさわしい武器エモノだ」


「いやだ」


「なら死ね」


 ごう――


 猛烈な風切り音が響き、

 ふたたびソレはオレに突進する。


「早……っ!」


「当然」


 防がなければ。

 先刻同様、オレは剣を盾に構えるも――


「脇が甘いな」


 回りこまれて――


「終わりだ」



「わかったかよ? これが持つ者と持たざる者の差だ! 運じゃなく才能の、実力の差だ! 現実だ! ははははは! はは……は……。だから……だからよ……」


 ――聖剣がないから……なんだ?

 それがどうした?


「これは……オレの戦いだろ……!」


「なんで俺の一撃をうけておまえは倒れやがらねぇんだよ!」


 オレはばっさりと斬られた脇腹をおさえつつ、

 立ちあがった。


「強化の速度に強化の斬りこみ、おまえはそれすら受けきりやがる……なんなんだ……なんなんだおまえは!!」


「オレはただ――」


 立ちあがり、地に脚ふみしめて、

 オレは前だけを見ていた。


理不尽あんたをぶっとばしたい。それだけだ」

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