7話:剣放つ光
刀身きらめき、
放たれる衝撃波。
「――――っっっ!!」
横一閃に飛ぶ斬撃――
そのすさまじい反動が、剣を握るその手に重くのしかかる。
オレは“聖剣”をみくびっていた。
いや、みくびっていたというより――ただ無知だったのだ。
甘く見ていたわけではない。
オレは彼女のことを、なにひとつわかっちゃあいなかったってことだ。
――これが“ほんのすこしの魔力”だって!?
彼女はこの一発分の斬撃に用いられる魔力を、
“微弱に残っただけのすでに尽きかけている魔力”と言いあらわした。
しかし地底湖全体をつつんでいたあの虹色の光。
それが示す魔力量がいったいどれほどのものか、今思えば容易に連想できたはずだ。
彼女の言う“ほんのすこし”とは、
聖剣基準の“ほんのすこし”だったんだ。
さらに彼女の言う“勝利”。
それが大げさでもなんでもないという現実を、オレは目の当たりにする。
そしてその現実を目の当たりにしたのは、
オレひとりではない。
魔法使いたる青年剣士と踊り子はもちろんのこと、
超大型ネズミも例外ではなかった。
ネズミは眼前の標的への攻撃をやめ、とっさに振りむく。
その真っ赤な眼球をぎょろりと見開き、斬撃を見つめていた。
「この光と衝撃……まぁ気づかないわけないよな……っ!」
オレは未だびりびりと残る反動に歯を食いしばりつつ、
斬撃がもたらすその結果に目をこらした。
背後からの不意の攻撃。
このまま一撃で決まればと願っていたが、そううまくもいかないらしい。
ネズミは瞬時に理解したのだ。
斬撃のいきつく先は自分であると――
そして超大型ネズミは跳んだ。
横っ跳びに地面を蹴ったのだ。
この空間は横には広いが、
高さは低い。
人間にとっては余裕ある高さでも、
超大型ネズミにとっては頭上すれすれであった。
上に跳べば天井にぶつかる。
そしてあの巨体では、低くかがんでやりすごせるほどの空間もない。
伏せても当たる、上に跳んでも当たる。
ならば幅が広い通路を活かし、横に跳んで避ける――
それがネズミの思惑だろう。
さすがは歴戦の猛者たる魔物だ。
並のネズミならざる判断力と瞬発力をもっている。
――しかし、
尋常ならざる――普通じゃないのはこちらも同様だ。
いや――
“勝利をもたらすチカラ”ってのは普通じゃない。
……そんな次元のものではなかった。
ネズミの横を通過するさなか、
斬撃の光が急激に強まる。
ネズミの回避のうごきにあわせて、
斬撃はその横幅を一気に広げた。
羽を広げた鳥類のように、
華麗にその光をまたたかせる。
それはまるで斬撃自体が、
意思をもって敵を斬りさいたように見えた。
「すっ……げぇ……!」
どてっぱらを斬りさかれ、
通路の床に崩れおちる“脅威”。
そうあれは“脅威”だ。
あの超大型ネズミは魔力ゼロのオレにとって絶大な“脅威”。
……それがいまやもう“脅威だったもの”へとなりはてている。
さきほどまで絶大な脅威であったものが、一撃で倒れ伏した。
これが勝利をもたらすチカラ……
彼女のもつ飛行能力といい言語能力といい、
神秘的ななにかを宿していることはまちがいない。
しかしこれはあまりにも……
あまりにも、ものすごすぎる。
オレは感嘆の声とともに語彙力がすっとぶぐらい、
目のまえの状況にあっけにとられた。
だからこそオレは気づかなかった。
この一連に便乗して通路の脇を走り来る“それ”の存在に――




