Side:青年剣士のゆめ
“青年剣士”と呼ばれる男。
彼が冒険者になった理由――
それは幼いころ読んだ絵本の物語。
その主人公がとてもカッコよくて猛烈にあこがれたのだ。
あの絵本の冒険者のように正義の剣をふるい、
悪のモンスターを狩りながら大冒険をくりひろげる。
そんな輝かしい将来を夢見ていた。
――なんて
そんな子どもじみた浅い夢は、
彼が本当に幼いころだけにとどまることとなる。
歳を重ねるごとに彼は現実を知り、
そして彼の両親も我が子に現実をつきつけた。
外面、世間体。
閉鎖的な田舎で生きてきたからかそれらを誰より気にしてきた、プライドのたかい両親。
「正義の冒険者だなんて、子どもじみたくっだらねぇ理想論だ」
両親は夢みる我が子にたいし、そう言いすてるように吐きつけた。
そうののしられつづけることで、彼自身もその結論にいきつくまでに大して時間はかからなかった。
じゃあなぜ彼は冒険者になったのか?
それはいたって単純な動機――
それは“逃げ”である。
彼は両親のプレッシャーから逃げるために、
幼いころの輝かしい夢を言い訳に使った。
その選択が“冒険者となり都会に行くこと”だったのだ。
両親の猛反対を押しきり都会へとおもむいた。
――親から逃げたかった。
ただそれだけだった。
しかし都会で待っていたのは、またしても非情な現実であった。
いや都会に来てからのほうが、よっぽど現実らしい現実とも言える。
金・銀・銅の冒険者等級。
彼は何年努力しようと銅のブロンズ級冒険者どまりであった。
つまり最下位――
彼の素性を知る者たちはそろって言う。
「田舎者でさらに落ちこぼれ」
そう言ってわらった。
青年剣士の心は、
プライドはもう折れる寸前であった。
ごまかして生きてきた資金資材も底をつきかけている。
彼はあせっていた。
――もしもこのまま成果があげられなければ実家に帰らねばならなくなる。
あの両親のもとへ。
彼の背筋に寒気が走る。
それだけはなにがなんでも避けなければならない――
そして彼は思いだす。
故郷をとびだす直前、実家の蔵をあさってる際に見つけた小さな檻を。
なにげなく荷積みした、
妖精の檻とタグ付けられたソレの存在を。
彼はあせっていた。
あせっていたのだ――
◆
「もう……だめだ」
「いやよ死にたくない!」
――こんなはずじゃなかった!
「くそが……くそがくそがくそが!!」
俺は悪くない。
俺は悪く――
そのときだった。
目のまえの“殺意”のうしろから閃光が走る。
そして青年剣士はその光のさきに見た。
彼がかつて幼き日にゆめみた“主人公”の姿を――




