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3話:勝利の光

 オレが魔法使いになりたかった理由――


 それはかつて魔法使いに命を救われ、

 あの人のように強くなりたかったから。



 じゃあなんのために強くなりたかったのか?


 あの人のように強くなれば、

 もうなにもだれも失わずに済むと思ったから。



 オレの両親はすでに亡くなっている。

 出先で盗賊に目をつけられ、襲われ奪われ、殺された。


 それ以来オレは両親の墓前に良い報告をしたくて、

 ずっとそのために前に進んできた。



 理不尽によって殺された両親、

 彼らのような人たちを救いたいと。

 そのために力がいると――

 

 

 ……なんてな。

 本当はそんなキレイでカッコいい理由じゃない。


 ぶっとばしたい。

 オレの両親を奪いやがったあいつらをこの手でぶっとばしたい。



 ただそれだけのことだった――


 

 奈落の穴に落とされたのち、

 オレは地底湖に浮いていた。


「オレは……生きているのか……?」


 地底湖に浮いたまま天井を見上げ、

 自分が落ちてきたであろう場所に視線を向ける。


「あの穴を登るのはまず無理か……」


 地下水が溜まったのか、湧きでた地下水によるものなのか、

 そこは地下4階同様にドーム状の広い空間があり、地底湖ができていた。


 奈落の穴は地下水によって削られてできたもの――

 あの剣士が言っていたことを思いだす。


 意識をうしなった直後の記憶はおぼろげだが、

 落下しながらいたるところに体をぶつけた記憶はあった。


「穴が“らせん”状にカーブして落下の勢いが落ちたのか。そして最終的に湖がクッションに……」


 意識が覚醒したばかりで混濁しながらも、

 なんとか自分が死なずに済んだ理由を考察した。


 なんの衝撃緩和もなくまっすぐ地下湖におちていたなら、

 おそらく、いや確実にオレは死んでいただろう。


 そして1つの疑問が解決すると同時に、すぐに新たな疑問がわいてくる。


「ここはあの奈落の穴の下なんだよな? なんでこんなに明るいんだ……?」


 洞穴の奥のさらに奥底、

 暗闇であるはずなのに、そこは温かい光で満ちていた。


 じつに心地いいあたたかさと強いきらめきを放っている。

 その薄明かりはどこか見覚えが――


「セイレーンの……光?」


 この光はセイレーンのまとう妖精光によく似ている。

 見覚えがあるもなにも、オレにとって一番なじみ深い光だ。


「奥から光が……」


 一刻も早く上にあがりたいが、

 オレが落ちてきた穴はドームの頭頂部に位置していて、飛行能力でもなければ岸壁に手をかけることさえできない。

 

 オレは別の昇降口・上昇手段をさがすため、

 まずはその不思議で不審な光のもとへ向かった。



「これは……剣?」


 光に誘われるまま泳いでゆくと、

 地底湖の中心……そこには小さな島があった。


 島とは言っても質感や石の積み方からして、

 人工的につくられたものだ。

 

 そしてそこには四角くおごそかな様相の祭壇があり、

 その中心に“つるぎ”がある。


 剣は祭壇に突きたてられている。

 そしてこの剣こそが、例の光を放っている光源だったのだ。


 遠くからだとセイレーンの妖精光に似た光であったが、

 近くにくるとそれが虹色に輝いていることがわかった。


 こんなだだっ広い空間のなか、全てを照らしだすほどの光。

 セイレーンの妖精光以上に強い光だ。


「なんだ……これ? なんでこんなものがこの洞穴にあるんだ……?」


 このダンジョン……

 もとい“ただのネズミの巣穴”であるこの洞穴に、どうしてこんな人工物があるんだろうか?

 

 あの剣士の言うとおりならここは元・鉱山だ。

 古代の神殿でもなんでもない。


 どう考えてもこの剣は、この場所にふさわしくない創造物だ。

 あやしいこと、このうえない



 だけど近寄らずにはいられない。

 この剣は人を引きつけるなにかを醸し出している。


 そもそも光を――

 妖精光を放つ剣なんて聞いたことがない。


 ふれずにいはいられなかったオレは、

 おもわずその柄をゆっくりとにぎった。


なんじはなにものだ?』


 剣にふれたとたん、

 頭のなかから声がした。


「――ッ!?」


 口調は凛とした女性の声だ。

 あたりまえではあるが、まちがいなく自分の声ではない。


『そもそも汝はどうやってここに入ってきた? そしてなぜ我にふれられるのだ。すべては封印が施され、ふれたものは消滅するはずなのに……まぁいい』


 矢つぎ早に質問と意味不明な用語をくりかえすその声。

 オレは突然の出来事にただ混乱していた。


 しかし次の言葉に、オレの頭はえた。


『問おう。汝の望みはなんだ?』

 

 おごそかな祭壇、

 そしてそこに突きたてられた神秘的な剣。


 これはつまり……そういうことなのだろう。


「オレの夢は……魔法使いになること」


『ほう。それが望みか』


「ちがう」


 オレは否定するが、

 夢を否定したのではない。


 今すべきこと、

 夢よりなにより大事なそれを、オレは知っていた。


「勝ちたい」


『勝つ?』


「オレをここに落としたやつらに勝ちたい。それがオレの望みだ」


 オレはありのままに、

 今のオレの望みを述べた。


「オレの相棒がそいつらに捕まってる」


『ではその相棒とやらを助けるという願いではないのか?』


「勝たなきゃダメなんだ」


『なぜ?』


「オレはようやくわかったんだ。自分がなんで魔法使いをめざしていたのかを」


 オレはあいたほうの手で拳をにぎりしめ、

 それを見つめた。


「ここで戦わなきゃオレはオレじゃなくなるんだ」


『戦いとは非常なものだ。死ぬかもしれんぞ?』


「生き抜いて死ねたのならそれでいい。戦って勝ってセイレーンも救う。生きて帰れるかどうかは二の次だ」


 だから力がほしい――


『ははは……。千年の眠りからめざめてみればなかなかどうして……じつにおもしろい!』


 頭のなかの女性の声はひとしきり笑ったあと、

 ふたたび冷静な声にもどり、言った。


『……いいだろう。貸してやる。“我”をひきぬけ。さすれば勝利をもたらさん』


『我が名は勝利の剣――エクスカリバー』



「なによこれ……なんなのよ!」


「くそがっ! “こんなやつ”がいるなんて聞いてねえっ!!」


 アベルが自分と向きあい決意を固めていたころ地下4階では、

 弱者を落としいれた彼らに罰をあたえるかのように、


 すべてを踏みつぶす“理不尽”が降臨していた――

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