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「狂い蝿を一撃かよ・・・あいつすばしっこいから中々仕留めるの大変なのに」
「あれくらいなら僕でも出来る」
「スピードだけなら確かにザルドでも可能だろう。しかしそのスピードを出しつつ直進牛を一撃で狩れるか?」
「それは確かに僕の力だと難しいね・・・」
来たときと同じ道を同じようにハエやらウシやらを蹴散らしながら進んでいると、我の後ろをついてきていた男3人がなにやら驚いた様子で話をしておった。その更に後ろではジュネがにこにこしながらついてきている。
男3人には、たまに横道から現れたウシが襲いかかって返り討ちにあっているのだが、ジュネには襲いかかることが一度もない。そもそも非武装の神官であるジュネがしんがりに居ることが既に不思議な状況だった。
「あぁ、それはジュネが神官だからだな」
不思議だったので近くにいたフレイに聞いてみたが更にわからなくなってしまった。
「神官って言うのはなりたくてなれるものじゃない。俺達生き物には皆強いか弱いかは別として神の加護がついている。そのなかでも神の加護が強いものが神官と呼ばれるんだ」
それが何故襲われないということになるのか。
「さっきの答えになってないって顔だな。この神の加護って言うのは相手に傷付けることへの忌避感を与えるんだ」
「つまりは加護が強いほど襲われないってこと。しかもジュネちゃんは神官の中でも特に力が強くて、獣なんかにはまぁ襲われないさ」
「要約すればフラガ様の御力は偉大ってことさ。どうだい、君もフラガ様の使者の立場がどれほど重大かわかっただろう?」
途中から残りの2人が説明に割り込んで来たから纏まりが無くなったが、概ねは理解した。人間以外にもそう言う加護の強い生物が居ることもあって、見つかると村や町の守り神として大事にされることが多いらしい。
「なるほどな、っとここだ」
喋っている間に随分と進んできていたようだ。最初に我が降り立った地へ着いた。別に特段目につくようなものがあるわけではないが、我が足を着けた際に地面が抉れたから此処で間違いないだろう。
「なんだこの不自然な草のめくれ方は?」
「普通に掘ったんじゃこんな風にはならないよなぁ?」
「別に、興味ないね」
「これは、なるほど、つまりはそう言うことでしょうか」
反応はそれぞれだ。そしてその4人にはなるべく距離をとってもらい、我は元の姿に戻った。そして・・・
「「「うわあぁぁぁぁぁぁ!!?」」」
男3人の絶叫が響いたのだった。