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「うぅ・・・」
ザルドが女神像の前で項垂れている。その理由は目の前の女神像にあった。石像は首と左腕の部分が無くなっていた。
女神をバカにされたと感じたザルドは我に殴り掛かってきたが、我が人に負けるわけがない。危なげなく攻撃を捌いていたのだが、ザルドの蹴りが女神像に直撃したわけだ。盛大な自爆だった。
フレイが話をするなら全員落ち着いてからしたいというので、ザルドが落ち着くのを待っているのだがこの男はいつまで嘆いているのだ。仕方がない、ギルドの中から様子を伺っている奴を引きずり出すしかあるまい。
「女神、居るのだろう?」
我がギルドの方に向かい言うと最初に会った時より更に小さい女が出てきた。む?女神の気配はするのだがなにか別のものが混ざっているような?
「「ジュネ(ちゃん)」」
フレイとウィドはこの小さい女を知っているようだ。
「今の私はジュネではありません」
少女が呼びかけた2人にそういって微笑みかけた。そして我を睨み付けた。
「あなたは本当に・・・!1日足らずで何回騒ぎをおこすつもりですか!それに女神女神と、私にはフラガというきちんとした名前があるのですからね!」
女神、フラガがそういって怒っている。あまり女神と呼ばれるのは好きではないのだろうか?そう思いザルドを見ると何かをこらえるかのように震えていた。
「女神様!女神様と呼ばれることは好まれていなかったのですか!それではこれから私はあなた様をなんと呼べばよろしいのでしょう!?」
女神好きが爆発したようだ。そしてやはり呼び方の件も気にしているようだ。崇められているフラガ本人がドン引きしている。
「え、えぇ、普通に名前のフラガで良いですよ・・・?」
「女神様の名前を呼び捨てするなんてとんでもない!それではこれからはフラガ様と呼ばせていただいてもよろしいですか!?」
「お、お好きにどうぞ・・・」
我に対して怒っていたのも忘れるほどのドン引きである。
「えっと、それでは竜、いえ今はディスターでしたね。途中で話が逸れてしまいましたがこの世界の事をお願いいたします」
無理やり話を纏めると、フラガの気配が離れていくのを感じた。
「フラガ様はお戻りになったようです」
フラガか去った後、少女が口を開いた。先ほど混じっていたのはこの少女の気配だったのだろう。
「フラガ様からお話は聞いております。わたくし、サルバジオンを拠点に活動させていただいている神官のジュネと申します」
フラガが感情の起伏が大きかったのに対して、このジュネという少女はとても落ち着いている。フラガよりよっぽど神らしい雰囲気を持っている。
「ザルド様、石像はまた直せば良いのです。石像が壊れたからといってフラガ様に害があるわけではありませんし、私たちの信仰が翳るわけでもありませんから」
我への挨拶が終わると次にザルドに声を掛けた。ザルドは女神に会えた嬉しさと、石像を壊した後ろめたさで、落ち着きの無い状況になっていたがジュネの言葉で気付かされた事があったようだ。
「ジュネ様の言うとおりですね!僕のフラガ様への敬意が廃れるなどあり得ないのですから!」
「はい。それでは一度ギルドのなかに入りましょうか。いつまでもギルドの前で話していても落ち着きませんし」
色々と揉め事もあったがようやく話を聞くことが出来そうだ。