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神代勇人は雄染常態!  作者: 忍龍
急転直下の落下先がちょっ、待っ、チェンジで!チェンジで!!
41/46

15

 「あれ? お前背ぇ伸びたな」


 「ええ、殆ど伸び止まりですがあれから五年経っていますからそれなりに」


 「五年?! あ、そっか、だから巫女たちの姿に違和感を感じたのか」



 仕事から帰った両親も加わり、ますます混沌とした家から逃げるように唐突に孫として現れた巫女たちを生け贄に裏の畑跡に来た勇人青年とシリウス青年でございました

 さすがにこの巨木はどうにかしてほしいとの祖母の訴えからそれを口実に逃げ出した次第でございます


 買い物帰りに騒動を起こして慌てて家に逃げ帰った時には慌しく気付いてはおりませんでしたが、こうして精神に余裕のある状態で並び立つと、以前よりも背が高くなっていることに気付いた勇人青年でございました


 彼女達の真実の姿も一度しか見ていなかったので、違和感を感じたのは女性の姿をしていることにだと思っていたのでございますが、それ以外にも違和感の正体があることにやっと気付いたのでございます



 「五年かぁ…お前、幾つになったんだよ」


 「20です」


 「え、お前あの時15だったの?! でかすぎるだろ少しよこせ!」


 「イマガミミカドも貴方より年下ですが貴方より背が高かったようですが」


 「アレは外国人とのハーフなんだからノーカンだ」


 「はいはいそうだといいですね」


 「だから俺の口真似して嫌味返すのやめろ、…しかし時間の流れがごちゃ混ぜだな」



 ハダルの話しではあちらでの二ヶ月がこちらで七年とのことでございましたが、勇人青年はこちらに戻ってまだ一日も経っていないのにも関わらず、シリウス青年の話によれば あちらでは五年過ぎているとのこと、時間の流れに法則性は無いのでございましょう



 「眼が変化してから色々と眼にしました、あの世界は歪んでいる、法則性や規則性といったものは期待しない方がいいのでしょう」


 「そうか…ほら一杯、飲み口で怪我しないように気をつけろよ」



 シリウス青年曰く直接大地に植えたことで思いの外水が合い大きく育ち過ぎたその植物を、彼の能力で3Mほどの庭木に収め、捲くれ返った土を元に戻し、雑草で覆い、砕け、散らばった農作物を種から作り直し、シリウス青年の手により勇人青年の記憶を覗きつつ再現された畑は、大して時間も掛からず元のように戻ったのでございます


 これで明日には全て夢であったということになっていることでございましょう


 たとえ写真に撮られ、動画を録画されていたとしても、現状の景色ではないのでございます

 実際に被害があったのは畑だけ、被害前の写真が残っていたとしても、恐らくそれは風景写真であり、草花でも無い限り農作物を収穫前に接写するなどということはほぼありません、比較することはできないでしょう

 不気味に思い、遠巻きにみる者しかいないので、そうなれば余計でございます


 労うように冷えた缶ビールを一本、プルトップを開けてシリウス青年に渡せば、一口 口にした彼の反応はあまり思わしくはないようでございました



 「…好みの味ではありませんね」


 「あー、炭酸で苦いもんな、向こうにはそういう酒は無かったっけ」


 「セラスヴァージュの外にはありました、流通は少なく、あまり好まれているようでもありませんでしたが」


 「まぁ好みの傾向もあるだろうしな、お詫びに何か作るよ、お袋さんの味久々だろ、何がいい?」


 「…では肉じゃがを」


 「おう」



 肉じゃがといえば、義母を失ったシリウス青年に最初に作った料理でございます

 やはり、記憶の味といえば、あの味が一番彼には印象深いのでございましょう



 「…ところで、あいつは、正宗は、どうしてる?」


 「彼なら、ハダルがそちらに渡ってから二日後にはこちらに来ました、妻子と再会して幸せそうですよ」


 「そっか、良かった…それにしても二日か、ずいぶん早かったな、あの人がこっちに渡ってから正宗がそっちに行くまで間に五年は開きがあったらしいのに…で、その…」


 「加護を受けて獣人化していますよ、彼は素質ありですから」


 「素質…って、継承者のか?!」


 「いいえ、そういった意味ではありません、彼は、土の継承者ポラリスの父親ですから、同じ相手と番わせれば、あわよくば、という算段なのでしょう」


 「ああ、そういう意味か…あ、継承者といえば、ハダルさんこっちに来ちまっただろ、いいのか?」


 「彼はもう継承者ではありません」


 「え、もう次代が見つかったのか?!」


 「はい、いいえ、どちらがいいと思いますか?」


 「どっちって…まさかお前?!」


 「間接的には"はい"、直接的には"いいえ"」



 彼は半分まで飲んだビールを不味そうに飲むのを止め、勇人青年に押し付けた後、小さな種を取り出したのでございました



 「種? …何のだ?」


 「貴方があちらで瀕死になった原因のアレです」


 「触手かっ!」


 「正解です、核を砕いた後 治癒の力を使って種にまで戻しました、これは予備に創った複製です」


 「何でそんなもの…」


 「アレは継承者に相応しい強力な土の能力を持ち、浄化の力によって影響を受けるような精神も無い、継承者としてこれほど打って付けのものもありません」


 「いや、打って付けってお前、あんな肉食植物街中になんか置けないだろうが」


 「そこでわたしの関与です、種の性質を変えました、常に癒しの力を発するようにもしましたから、患者は傍に寄るだけで癒されます」


 「浄化の旅の時はどうすんだよ」


 「持ち運べばいいだけです、鉢植えに植えてありますから」


 「おいおい……」



 カシャ! カシャカシャ!



 「ん?」



 唐突に聞こえたシャッター音と光に振り返れば、家の影からこちらに向かってカメラを構える勇人青年の妹 聖子と、弟の英人の姿がございました



 「あ! 見つかった!」


 「シャッター音とフラッシュ点けてればバレるに決まってるじゃん」


 「?? なにしてんだお前たち」


 「よっちゃんが、電話でお兄ちゃんのお婿さんが来たって教えたらナマモノキタコレ! って叫んで写真送って欲しいって」


 「らぶらぶのやつ」


 「あのアマ俺の弟と妹になにいらんこと教えてやがるんだぁあああああ!!」

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