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神代勇人は雄染常態!  作者: 忍龍
急転直下の落下先がちょっ、待っ、チェンジで!チェンジで!!
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07

 『アレは術でしょう、向こうに本体がいました、唐突に見えるようになりましたよ、わたしが見ていることに気付いているのに、こちらを気にもしませんでした』


 「見えるって…その、術を使った相手がか」


 『ええ、額の眼だけではありません、この両目もです、そもそもこの眼が見えるようになるなど、ありえないんですよ、眼球が無かったんですから』


 「はぁ?! だ、おま、眼ぇ閉じてても瞼はへこんでなかったぞっ」


 『額のコレを手に入れた時に無くなったんですよ、母が心配するでしょうからそれらしく埋めただけです、無いことが正常な状態になってしまったので土の能力で治すこともできませんでしたから次善策ですよ』


 「なんだそれ…バレてたらお袋さん絶対泣いてたぞ」


 『ですから秘密にしました』


 「こ…の、親不孝モン!」


 『心外です』



 そう言いながら勇人青年に歩み寄ったシリウス青年は、土の能力を鏡の代わりに自身の眼を確認したのでございました



 『あぁ、額の瞳、色が変わっていますね』


 「元はその色なのか?」


 『そうです、ご丁寧にも瞳の色を揃えて下さったようで、至れり尽くせり、ですか?』


 「はは…笑えねー…なんだよアレ」


 『さて、一体何だったのか…個人的にはアレが魔導師だったのでは、とも思いますが』


 「うわ、怖いこと言うなよ、俺にはアレが善意の存在には見えないぞ」


 『では白昼夢…ということにでもしておきましょうか』


 「あーそりゃいい、名案だわ、さんせー、異議なーし」



 疲れを吐き出すように長くため息をつきつつ同意した勇人青年は、地面に転がっていた食器を取り皆の眠る野営地へと歩き出したのでございました

 閉じられていた空間の外は時間が流れていなかったようで、空は明るくなりつつも太陽はまだ顔を出してはおりません



 「そうだ、お代わり食うか?」


 『いただきます』



 同じく義母の装束を拾い上げ、先ほど受け取った伝言の結晶を強く一度握込んだ後、彼に続き歩き出したシリウス青年が、そう言えば、と尋ねなさいました



 『お嫁さん…というのはどうやって調達するものですか』


 「…調達とか言うな」


 『ふう…』


 「なんだその溜息」


 『やはり知りませんか』


 「よし分かった、喧嘩だな、買うぞコラ」




 *** *** ***




 『わっ、あっ、』


 『ポラリス危ないですわ!』


 『ふう、感謝する、今のは肝が冷えた』


 『気にしない、まだ戦闘中、連携の強化が必要』


 『そうですぅぇっぷうぉっぷ』


 『くぅん(ポラリス大丈夫か)』



 巫女ポラリスが継承してから三日ほどでございます

 巫女たちの話によれば浄化予定地まではもう間もないとのことでございましたが、しかし浄化の効率は思わしくはないようでございました



 「…ケレスさまが一応実戦経験させてたがどう見ても経験不足だし、それにやっぱ精神的な影響の方が強いみたいだなぁ…」


 『子供の頭の中は混濁状態で読み取り難いです、しかし大体は貴方の言うとおりですね、わたしの母が亡くなったのが影響の大部分でしょう、あとはプレッシャーです、負の連鎖もあるようですね』


 「やっぱりか…」



 戦闘に於ける土の巫女の役割とは、主に土壁や植物を使った戦況の誘導でございます、戦場の全体を見通すことが可能ですが、俯瞰から盤面を見通しているうちは兎も角として己自身が場に立ってしまうと目まぐるしい状況変化に飲まれてしまい、混乱の結果後手後手に回り仲間の邪魔をし戦況を乱してしまうのでございます


 ですから、戦闘に加わる仲間はなるべく少人数で把握しやすくすることが求められます、巫女自身が戦闘能力を持つのは嘗ての教訓によるものと土の巫女の為というのが理由の大部分なのでございましょう


 ここにこうして勇人青年と並ぶようにシリウス青年が居るのも、彼の義母の存命のころからのことでございます


 スピカ存命の折には、彼女が慣れていたことから殲滅速度を重視し獣人夫妻は戦闘に参加しておりましたが、さすがに今では無理でございましょう


 現状、巫女ポラリスの左右に獣人正宗とその妻カネスが立つのは彼女自身を戦闘から切り離し冷静に戦況を誘導させるためであり、二人が自主的に参加することはございませんでした

 しかし巫女ポラリスの誘導失敗により彼女の方へ向かってきた魔物を一人一体ずつ対処しているところに三体目が現れ、そこを巫女プラウが対処したのでございます



 「お前が訓練つけてやることはできないのか?」


 『わたしとポラリスでは見えるものが違い過ぎます、参考にならないどころか寧ろ逆効果です』


 「っつーか、お前が一番強いだろ、最後の浄化以外お前一人で全部こなせるんじゃないのか?」


 『それは可能です、ですが継承者、ひいては神属者全体の存在意義に関わります、そのためだけに、そのように、彼らは育ったわけですから』


 「あーもー…これ絶対後で問題起こるぞ」



 勇人青年が頭をぐしゃぐしゃと掻き毟っていると、それでもなんとか戦闘と浄化を終えて戻ってきた中から、巫女ポラリスが小走りに彼に走り寄り、ぎゅっと顔を伏せるように抱きついてきたのでございます



 「よく頑張ったな、疲れただろ、飯にするか」


 『んん、ばぁちゃん、みんな、ごめんなさい』



 ぐりぐりと頭をすりつけてきた後、ちらり、と後ろを振り返ってぐしゃぐしゃの泣き顔で彼女が謝ると、きゅーん!と鳴いた獣人夫婦がぐぁばと飛び掛かってきて勇人青年ごとべろんべろんと嘗め回し、そこへ巫女たちも加わり、最終的に団子のような状態の中心核になった一人だけ加護を持たない勇人青年は軽く圧死しそうになったのでございました



 そうして勇人青年の予測したように、ほんの、十数時間後



 問題が起こったのでございます

因みにメニューは肉じゃがでした

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