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神代勇人は雄染常態!  作者: 忍龍
破れかぶれでも死守しなきゃいけない一線はあるわけで
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 「あの、佐倉真由子です、お騒がせしてしまってすみませんでした、彼はハダルさん、あと、今はいませんがカネスです」


 『ハダル・ケレスです、この度はとんだ恥を晒してしまい…』


 『カミシロ気にしてない、わたしたちも気にしない、わたしはミアプラ・アケルナル』


 「えっ、アケルナルって、あの、エリダヌスさんのご親戚の方ですか?」


 『いえいえ違いますぅぅうげぇっほごほっごぶっ』


 「ひゃああッ?! だ、大丈夫ですか死なないでください!!」


 『こ、ここまで重病人は初めてだが、なんとかして俺が…!』


 『突然どうしたんですの? そんなに驚いて』


 「あー大丈夫大丈夫、死なない死なない、至って健康だから、視覚情報は無視しちゃっていいから」


 「だってこんな! 今にもっ、し、し、~~~ッ!!」



 騒ぎは一応の収束を迎え、相手方の巫女たちは現在そちらの宿で巫女スピカのありがたいお説教を拝聴していらっしゃるのでございます

 そしてやはり説教を授けるにあたり邪魔になるであろうシリウス青年は、当然の如く宿でお留守番なのでございました

 因みに今回の騒動の一因であるところの獣人正宗は改めてカネスと話をするようで、現在は席を外しておられます


 そしてイマガミミカドは不貞腐れていたところをナンパされ夜の歓楽街へと消えていきました、……が、誰もその事に気付かず姿が見えなくとも気にも掛からないようでございました

 彼は浄化を終えて故郷に帰る際、十代の青少年にとって有害な経験則を含め もしかするとセラスヴァージュでの記憶を根こそぎ消されているやもしれません



 「え、じゃあ、苗字じゃないんですか」


 『ええ、ケレス、ファーニス、ウェーラ、アケルナル、これらは原初の神子の名前です、わたくしたちは素質のある者がその力を継ぎ、その名を冠しているのですわ』



 死者寸前の姿を含め巫女たちの姿が幻覚だと勇人青年から耳打ちで教えられたサクラマユコらは、やっと事情を飲み込み、それでもどきどきはらはら、時に、というか頻繁に びくびくとしつつもちらりちらりと巫女アプスを盗み見しながら先ほどの会話に戻ったのでございました



 「その話しは初めて聞くな、土の巫女が少ないのは何か関係があるのか?」


 『巫女が継承しなくとも、元々力を使える人間はいる、けれども浄化が行えるのは四名だけだった、なるべく多くの者に浄化の力を伝える為に特に浄化の素質のある者に分け与える形で継承は行われた、とうぜん一人一人の力はその分小さくなる』


 『でも土の力は別ですぅ、げほっ、大地に直接作用させるので、おえっぷ、なるべく隙間無く覆うために、継承する人数はセラスヴァージュの要の地の数に留まりましぐぅえっぷごぼっ』


 「それで任地を決めて今回みたいな大規模な浄化以外はそこから動くな、ってことか」


 『その通りですわ、そして元々土の素質を持つ者はその力の特性上極端に少なく、その上 更に浄化の素質を兼ね備えるとなると殆ど見つからないのです、ですから土の継承者は極めて長命なのですわ、力を次代に移譲するまではどんなに老いようとも身体を欠損し人の形を保てなくとも絶対に死ねないのです』



 巫女プラウの言葉に、勇人青年はシリウス青年を振り返りました


 彼は、眼を持っているのでございます


 只人には視えぬものを視ることのできる眼を


 彼は……


 ……彼は、シリウス青年は、もしかして次代を


 次代を、その手で……




 *** *** ***




 「あっ、おいしぃ~! 牛筋?の煮込みだっ、おいしい、お米が欲しいっ、ごはんと一緒に食べたい!」


 『不思議な味付けだな…初めて食べる風味だが何とも食欲をそそる』


 「この味付けお醤油でしょ、これどうしたの?! ど、どこに売ってるか教えてもらってもいいかな?!」


 『南方の調味料、滅多に入手不可能、これが現物』


 「そっかぁ…、わっ、この瓶冷たい!」


 『げほっ、ごほっ、ミアプラちゃんが冷やしぇえ゛っぶっ』


 「そ、そうなんだ、えっと、ほ、ほんとに大丈夫?」


 『何がですの? それはそうとおかわりは?』


 「あ、ぜひ!」


 『戴く』



 勇人青年らは既に夕食を済ませておりましたが、この騒ぎでまだ食べていないというサクラマユコらに夕餉を振る舞い、懐かしい故郷の味に彼女は興奮を隠せない様子でございました


 いつもは食い意地の張っている巫女たちも、勇人青年の作る料理が大いに喜ばれ褒められるのが誇らしいようで、おかわりまで勧めるほどでございます



 「そんなに沢山は無理だがいくらか分けようか?」


 「あ、いえ、貴重なものだし残念だけど遠慮しておきます、お母さんの手伝いしてたから全く料理できないってわけじゃないけど、上手に使えなくて無駄にしちゃいそうだし、それにやっぱり懐かしくて泣きそうになっちゃうから」


 「そっか、うん、それがいいな」



 彼女の眼が潤むのを見なかったふりをした勇人青年は、調理用に買っておいた酒瓶を持って立ち上がり、会話の輪から席を外しなさいました



 「……で、破戒僧シリウス?」



 彼が向かったのは借りた大部屋の灯りの届かない部屋の片隅でございました

 酒瓶と一緒に持ち出した木製の小さな器になみなみと酒を注いだ勇人青年がソレを差し出すと、窓辺で外を眺めて待ち人の帰りを待っていた彼はうっそりと仄暗い笑みを浮かべ、それを受け取ったのでございます

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