♪123 恙ない進行
「いやぁ、それにしても、売れましたなぁ」
松ケ谷はしみじみと2人を見つめながら言う。
「いやね、他局ですけど、朝の番組でデビューした時はね、てっきり2、3曲出しておしまいや思てたんですよ」
「それが、アナタ! やれアニメのタイアップだ何だで、何? ドームツアーって」
竹田がそれに乗っかり、大げさに頷いてみせた。
「アナウンサーとの掛け持ちキッツくないすか? 朝の番組って生ですやんか」
「そうですね……なので、遠方は収録のない土日に固めて……。平日はどんなに遅くてもどうにかして戻ります」
「それは大変ですねぇ……」
同じアナウンサ―としてその辛さがわかるのだろう。千晴は眉をしかめた。
「ただ、そうなると、どうしても平日公演の開始時間を早めなくてはならなかったりもするので、それだとやっぱり行きたくても時間的な問題で諦めざるを得ない方がいたりするわけですよ」
「それはそうかもしれないですね……」
「なので、来年は僕の正月休みに前回平日でやったところを回らせてもらおうかと……」
「ほんなら、SHOWさん休まれへんやん」
「まぁ、そうなんですけど……。でも、ライブは楽しいですからね」
章灯の言葉に晶もこくこくと頷く。
「お、AKIさんもそう思われますか! いや~、聖人やなぁ、この2人。好感度うなぎのぼりやで」
そう言いながら竹田は晶の背中を軽く叩く。ボディタッチが増えてきたら危険信号だ。晶もそう思ったらしく、背中を少し丸めた。
「嫌やわ、AKIさん。そんな警戒せんでもよろしいがな」
「お前が言うな!」
松ケ谷が勢いよく竹田の頭を叩く。「お前、次やったらマジで出てくれへんぞ!」
「いやいや、コッチ上乗せしまっせ」
竹田は胸元で『ギャラ』を示す輪っかを作る。
「お前が決められるもんやないやろ!」
2人のやり取りに章灯は苦笑する。とりあえず、竹田さんには注意しないと。
「いや~、僕ね、AKIさんのこといろいろ知ろう思てね、『SpreadDER』なんかもチェックしてるんです」
「何? AKIさん、『SpreadDER』やってはるんですか?」
「ちゃうねん、AKIさんはやってへんねん。でもな、『ORANGE ROD』とか『AKI』で検索するとぎょーさん出てくんのや。せやから、詳しいで、ホンマ」
「お前の知識、『SpreadDER』だけかい! 詳しいって何知ってん」
「そんなわけで、こんなものを用意しました!」
どうやらここの件は打ち合わせ済みだったようで、千晴はおもむろに後ろからパネルを取り出した。
「『コレはホント? 2人にまつわるこんな噂!』です!」
そう言って千晴の胸の前に置かれたパネルはところどころ文章が隠れており、後からはがす形式になっている。あの下には何が書かれているのだろう、と章灯は気が気ではない。ちらりと晶をみると、彼女も同様であるらしく、顔をしかめてパネルに釘づけになっている。項目は全部で3つ……。




