#59 逃水の公理(四)
ビッグバンと呼ばれる謎の大爆発により始まった純粋なエネルギー体である宇宙が、やがてそこに素粒子を生み出し、その素粒子が結合して原子となる。宇宙初期には水素やヘリウムといった最も軽い元素が作られたと考えられており、そんな軽元素からなる【雲】は重力によって収縮し、それらは中心部の圧力と温度を上昇させた。そしてそこでは核融合が始まり、やがてそれは原始星となった。
核融合が始まると、そこには熱的な膨張力が発生して重力による収縮に拮抗する効果を生む。そんな熱による膨張と重力による収縮がつりあった時点で、星は星として安定するのだった。しかしそれが太陽の8倍以上もの重い質量を持つ星の場合は、巨星に進化した後も中心部では核融合が加速度的に高まってしまい、それによって次々に重い元素が生まれてしまう。そして最終的にそこには鉄からなる中心核が作られる。鉄の原子核は結合エネルギーが最も大きいため、これ以上の核融合反応は起こらず、星の中心部は熱源を失って重力収縮してしまう。そしてさらに収縮が進むと鉄の原子核同士が重なり始め、陽子と電子が融合して中性子になり、やがては星の中心部がほとんど中性子だけからなる核となる。
この段階になると核全体が中性子の縮退圧によって支えられるため、重力収縮によって核に降り積もる物質は激しく跳ね返される。その跳ね返りの力が衝撃波として発生し、一気に核を吹き飛ばす。これが【超新星爆発】である。
超新星爆発の後には中性子からなる核が中性子星として残されるが、それが太陽の30倍以上もの質量を持つ星の場合には、自己重力が中性子の核の縮退圧を凌駕するため、超新星爆発の後も核が収縮を続ける。これを【重力崩壊】と呼ぶのだが、この段階ではもはや星の収縮を押しとどめるものは何も無いため、重力崩壊は内側に向かってどこまでも進む。この重力崩壊した大質量の恒星の成れの果てが【ブラックホール】であり、その特徴の最たるものが、光ですら脱出不可能になってしまうとされる、極めて強い重力場の形成なのであった。
「黒色の玉型兵器が生み出すブラックホールは小規模なものだ。しかし小規模だからと言って、それがブラックホールである事に変わりは無い。そしてブラックホールは神と同義の【光】すら飲み込み、押し潰してしまう力を意味する。まさに獣神を葬る絶対にして唯一の力。それこそが波導量子力学でグラム博士が生み出した最大の物理的エネルギーである、ブラックホールなんだよ」
シュレーディンガーはリモコンを操作し、ディスプレイにブラックホールが誕生するまでの仕組みを3D映像として映し出す。仮想空間に擬似的に造られた映像なれど、そこには暗黒の闇であるブラックホールが渦を巻く様にして、その中心に向かい収縮し続けていた。そしてそんな不気味な映像を前にしたジュール達は、ただそれを見つめる事しか出来なかった。
「宇宙を膨張させるダークエネルギー。しかしその正体は謎に包まれているため、それ自体を操る事は極めて困難な作業だ。だがグラム博士はそれを逆手に取る事で、ブラックホールを人工的に生み出したんだよ」
「逆手って、どう言う事ですか?」
ヘルムホルツが身を乗り出しながら聞き尋ねる。
「ダークエネルギーは重力に逆らって宇宙を膨張させている力なんだと告げたね。ならばそのダークエネルギーの特性を、限定的な範囲において【無効化】出来たとしたならば、そこで何が起きると思うかね?」
「そ、そりゃ反発する力が除外されたんなら、重力が強まるだけなんじゃ……!?」
自らの発言に対してヘルムホルツは目を丸くして押し黙る。するとそんな彼の姿に納得を示したのか、シュレーディンガーは真っ直ぐな瞳でその答えを告げた。
「どうやらヘルムホルツ君は気付いた様だね。そうなんだよ。重力に反発する力を無効化したとするならば、あとはそこに残された重力が無限に強まって行くだけなんだ。そしてそれは結果としてブラックホールにへと変化するんだよ」
「いや、でもさ、理屈は分かるんだけど、でも本当にそんな事が可能なんですか?」
ヘルムホルツは混乱しながらも懸命に反論する。するとそんな彼に同調する様にアニェージが横から口を挟んだ。
「ヘルムホルツが頭を抱えるのは無理も無い。そんな大それた話し、誰だって信じられるはずが無いからね。それに宇宙にはそもそもブラックホールってやつが本当に存在しているのか? 私から言わせてもらえば、社長の話しはまるで子供に聞かせるお伽噺そのものにしか聞こえないよ」
アニェージは睨みつける様にシュレーディンガーを注視している。しかしそんな彼女の強い視線を巧みに受け流したシュレーディンガーは、真面目な表情で返したのだった。
「目に見えない重力やダークエネルギーは、その存在自体を確認する事は出来ない。でも我々が生きるこの宇宙全体に、それらの影響が伝わっているって事も事実なんだ。現に我々は重力の力でこの地上に足を着けていられるわけだし、望遠鏡をのぞけば宇宙の広がりだって確認出来るんだからね。それに遥か遠く、何億光年も離れた場所だけど、ブラックホールは現実に存在するものなんだよ。天文学者のみならず、物理学者や数学者だってその存在を認めているんだから、間違いはないと断言出来る。だから私の話しを信じてほしいんだ」
「じゃぁもし人工的にブラックホールを造れたとして、それを発動させたのならば、その効果はどんなものになるんです? 光や獣神を飲み込むほどの絶大な力を生み出すって事は、逆に考えれば私達だって無事ではいられないって事ですよね。いや、それどころかこの星自体が消滅して仕舞い兼ねない。獣神どころじゃなくて、それこそ宇宙規模の問題になってしまいますよ!」
反発するアニェージの言葉は強い。だがシュレーディンガーはそれに臆することなく、むしろ微笑みながら答えを返した。
「お前の心配はもっともな事だ。でも安心したまえアニェージ。使い方さえ間違わなければ、この星どころか小虫一匹ですら消滅させる事は出来ないんだよ」
「どういう事ですか? さっぱり意味が分かりませんが」
「うん。これは実際に宇宙にあるブラックホールにも共通して言える事なんだけど、ブラックホールはある一定の半径の中でのみ、強力な重力を発生させるものなんだ。だから極端な話し、目の前にブラックホールがあったとしても、その効果の及ばない範囲にさえ留まっていたならば、重力に引きずり込まれる事はないのだよ。そしてグラム博士が人工的に造り出す事に成功したブラックホールの半径は、およそ【1メートル】ほどだと聞いている」
「い、1メートルだって!」
ジュールが驚嘆の声を上げる。そして彼は続け様に言葉を発した。
「そんなに狭い範囲じゃ、獣神を殴り飛ばすくらいに近づかなくちゃダメじゃないですか。神の懐に飛び込むのは簡単じゃないし、そもそも近づけるかどうかだって怪しいモンですよ。それなのに1メートルって、逆に冗談でしたって言ってほしいくらいなモンです」
「確かにジュール君の言う事は正しいね。黒き獅子は大地と雷を自在に操れるって言うし、そんな獣神に接近するなんて自殺行為そのものだと言えるだろう。隙を窺うにしても、神の目はそうそう誤魔化せるものじゃないだろうしね」
「それじゃ手詰まりじゃないですか」
「その通りだよ。いくら知恵を絞ったところで、獣神を欺くなんて出来やしないし、もし強引に獣神本体に向かってブラックホールを発動させたとしても、すかされるだけで無意味な結果に終わるだろう。だからね、ブラックホールを使うのは、獣神に対してじゃないんだよ」
「獣神を倒そうちゅうのに、獣神に使わない? なんじゃきよ、そりゃ。全然意味が分からんだがね」
要領を掴めないリュザックが皆を代表する様にして徐に口を挟む。するとそんな彼らに向かってシュレーディンガーは、獣神を倒す為の秘策をはっきりとした口調で告げたのだった。
「ブラックホールを発動させるのは獣神本体に対してじゃなくて、かつてその獣神が封印されていた【天照の鏡】に対して使うのだよ。それもまだ、獣神の力が宿っていた頃の鏡にね」
「はぁ? ますます意味が分からんだきよ。ブラックホールで鏡を消滅させる事と、獣神を倒す事がどう関連するって言うきね?」
「関係は大有りだよ。鏡は獣神の命そのものでもあるのだし、それに抜け殻じゃなくて、獣神の本体が宿った状態の鏡をブラックホールの超重力で消滅させるんだ。結果としてそれが獣神の命を絶つ事になるんだよ。そもそも獣神は人の身に宿らなければ神の力を露わにすることが出来ないのだし、かつ鏡に封印された状態の獣神は手も足も出ないとされている。つまり反撃されるリスクは無く、安全に獣神を倒せるはずなんだよ。そして重要なのは、鏡を破壊するのは物理的に可能だって事なんだ」
「ん? じゃぁ、どうにかしてアルベルト国王の中に居る獣神を引きずり出して、もう一度鏡に封印するって事ですか?」
勘働きの良いヘルムホルツが聞き及ぶ。しかしシュレーディンガーはその問い掛けに首を横に振った。
「それは不正解だね。一度人の身に宿ってしまった獣神を、どうすれば引き離す事が出来るのか。そんな事、誰も知らないし、調べようも無い」
「じゃぁどうやって鏡に獣神を封印するんですか?」
「封印するのではない。かつて封印されたいた状態に戻すのだよ。【時間】を操作してね」
「じ、時間を操作って。何を言ってるんですかシュレーディンガーさん?」
まったく意味を理解出来ないヘルムホルツは呆気に取られている。いや、彼だけではない。話しを聞くジュールにリュザック、それにアニェージまでもが呆然と気持ちを萎えさせる事しか出来ないのだ。ただそんな彼らに向かってシュレーディンガーは力強く告げる。それはグラム博士が命懸けで誕生させた、波導量子力学の4番目の産物についてであった。
「国王の身に宿ってしまった現状の獣神を倒す事は不可能と言い切れるだろう。しかしそこでグラム博士は考えたのだ。今の獣神を倒せないのならば、倒せる状態の【時代】に行けば良いのだと。そして博士は波導量子力学を駆使する事で、驚愕の理論を導き出す事に成功した。そう、それこそが波導量子力学の4つめの産物こと【タイムトラベル】であり、ジュール君が大切に保管していた【金色】の玉型兵器の成せる効力なんだよ」
シュレーディンガーがそう告げるなり、ジュール達の視線はブリーフケースに納められている、金色の玉型兵器に注がれた。
「ブラックホールの中心には、高密度で大質量の【特異点】なるものが存在すると言ったろ。そこでは時空の性質を記述するアルベルト国王の光子相対力学が成り立たないため、特異点の性質その他を従来の物理学を用いて議論することは出来ないのだとも私は告げた。しかしね、国王本人は光子相対力学でも数学的には特異点がありうる事を、渋々ながら認めていたっていうのも事実なんだよ。ただ国王はそれをあくまで数学的な話と限定し、こと現実の世界に関して言えば、そんなものはナンセンスで有り得ないと考えを曲げなかったんだ。でもそれって良く考えたならば不条理な事なんだよね。だって計算結果が無限大だというだけの理由で特異点の存在を全否定しながらも、胸の内ではその存在を認めていたって事なんだからさ。まるで光子相対力学の脆弱性を隠そうと躍起になっている。グラム博士じゃなくたって、良く考えれば気が付きそうなモンだよ。しかし重要なのは、グラム博士が腑に落ちなかったのはそこではなかったって事なんだよね。蒸気機関の限界と思われていた先に、まったく違った性能を見つけ出したグラム博士は、そもそも光子相対力学の脆弱性とも呼ぶべき限界の先に何があるのか。博士はそれを疑問視したのであり、またそれを見つけ出そうと必死になって、波導量子力学を研ぎ澄ませていったんだ。そして博士はそこで禁断とも言うべき驚愕の理論を構築する事に成功した。それこそが時間すら飛び越える空前絶後の科学技術こと、タイムトラベルなんだよね」
【タキオン】。それはグラム博士が理論上より考え出した、ダークエネルギーを形成する素粒子の内の一つの名である。そしてそのタキオンには驚くべき特徴が備わっていた。それはタキオンの有する質量が、なんと【虚数】であると言う事なのだ。
虚数とは2乗して負になる数のことを示す。すなわち通常の素粒子の速度は光子相対力学が示すところ光速が上限値になるが、しかしタキオンにおいてはその速度は光速が下限値になるというのだ。つまりタキオンは生成した瞬間から光速以上のスピードで進み、その速度は決して光速を下回ることはない。まとめるならば、タキオンは通常の素粒子とは速度に関してまったく正反対の性質を持つという事なのだ。
またその特殊な性質を別の視点から考えた場合、タキオンはエネルギーを失うと【加速する】とされる。常識で考えたならば、エネルギーを失えば減速するのが普通であるのだから、タキオンの現象は奇妙だと言わざるを得ない。
例えば電荷を帯びたタキオンが存在したとして、その電荷を放出しながらタキオンが進んでいるとする。電荷を放出するに従いタキオンはエネルギーを消費していくわけだが、不思議な事にそれと反比例して速度はグングンと加速していくのだ。そして最終的にエネルギーを完全に失うと、なんとその速度は【無限大】に達してしまう。つまりタキオンはどんなに遠い宇宙の彼方にも、瞬時に到達出来てしまうのだ。そしてそのタキオンを利用した完成理論が、時空をも飛び越えてしまうというものであった。
「どういった理屈で時間を飛び越えるのか、その詳細は分からない。でもグラム博士はダークエネルギーの未知なる可能性の一端を紐解いた。それは紛れもない事実なんだよ。そしてそれを記したものこそが、博士が隠した最終定理なんだよね」
ジュールやヘルムホルツ達は、生温かい唾を飲み込みながら話しを聞く事しか出来ないでいる。それほどまでにグラム博士の残した産物は想像を絶するものなのだ。ただそんな彼らを前にして、シュレーディンガーは少しだけ表情を曇らせて話しを続けた。
「波導量子力学の理論でタキオンの性質を利用し現実のものとするタイムトラベル。しかしそれは過去に限ってのものであって、未来には行けないんだよ。物理学に限らず、科学は全て【因果律】を前提にしていると言っていいからね。因果律とは何事も時間的に先立つ原因があるっていう原理だ。だから過去に起きた現実に対してのみ、科学はその効果を発揮出来るって事なんだよ。まぁ、未来は望まなくても自ずと訪れるものだし、そんな未来は自分の力で切り開かねばならない。過去にしかタイムトラベル出来ないっていうのは、もしかしたらそんな博士からのメッセージなのかも知れないけどね」
シュレーディンガーはそう告げながら苦笑いを浮かべた。きっと博士の説教する面影でも想像していたのだろう。それでも彼はすぐに表情を引き締め直し、話しを本題に戻したのだった。
「これで理解出来たかね。獣神を倒す方法が何であるかを。要は国王の身に宿る前の、まだ天照の鏡に獣神が封印されている状態の過去に戻り、そこでその大地の鏡をブラックホールの効果で消滅させる。それが獣神打倒の作戦の全貌なんだ」
ジュールは拳を強く握りしめる。彼は獣神を倒す手段を理解したことで、その体に滾り出した震えを抑えられなかったのだ。明確な進むべき方向がやっとはっきりした。ならば後はそれに向かって突き進むのみ。そう自身の心に覚悟を決めたジュールは奥歯をきつく噛みしめる。ただそんな彼の高ぶる気持ちを宥める様に、シュレーディンガーは作戦を実行する上での課題を打ち上げたのだった。
「この作戦を確実に成し遂げられたのならば、間違いなく獣神は消滅するだろう。でも正直なところ、それはまだ雲を掴むほどに成功の可能性は低いと言える。なぜなら我らが過去に赴こうとしている事を、獣神も黙って見てはくれないからだ。きっと獣神の方も分かっているのであろう。科学的な理論で過去へのタイムトラベルが可能なのだということを。そして過去に行くということは、過去の歴史を改ざんし、その因果律を崩壊させてしまう事に繋がる。つまり【現実】が【事実】でなくなってしまうのだ。それは結果として獣神自身の消滅を意味する事になる。そんな事、獣神が許すわけがなかろう。獣神は国王の身を乗っ取ることで、したたかにも光子相対力学にあえて弱点ともいうべき上限を設けた。それは恐らく、タキオンのような存在を否定し続ける事で、過去へのタイムトラベルを防ごうとしていたと考えられるんだ。そんな獣神が何の対策もせずに、我々の反撃をじっと待っているとは到底思えん。それにタイムトラベルが出来るのは【一度きり】だけ。それだけに失敗は絶対に許されない。だから作戦には入念な計画が必要であり、まして感情的で突発的な行動なんかは絶対にしてはいけないんだ」
シュレーディンガーはジュールの瞳を見つめながら更に続ける。
「アルベルト国王は光子相対力学を提唱し、その中で時間と空間の定義づけを明確に示した。しかしそれはある種の錯覚であって、実のところその定義は曖昧さの残るものだったんだ。人間という生き物は、一旦正しいと信じ込めば、もう目が見えなくなって自分の信じた理論に有利な解釈を無意識のうちにしてしまうものだからね。そう言った意味で言えば、国王は人の心を上手に誘導する能力にも長けているのだろう。でもそれが逆に現代物理学を誤った方向へ導いてしまい、それにグラム博士やボーアさんは気づいたんだよ。そしてその違和感を調査する事で、国王の正体を見極めると共に、波導量子力学を生み出したんだ。結局のところ人っていう生き物の持つ可能性ってやつが、神の考えすら上回ったんだよね」
「じゃぁ俺達が信じていた光子相対力学って理論は嘘だったって言うんですか!」
ヘルムホルツが口走る。科学者である彼にしてみれば、それまで懸命に学んできた科学が偽りであったなどと、到底受け入れられないのだ。ただシュレーディンガーにしてみても、その思いはある意味同じなのであろう。彼は統一された科学である光子相対力学を、肯定せずとも否定もしなかった。
「光子相対力学が優れた科学理論だということは揺るぎない事実なんだ。それを否定するつもりなんて、私にはさらさら無いよ。ただね、光子相対力学は光の速さを絶対的なものとすることで、それ以上のものなど存在しないという固定観念を植え付けさせた。それが逆に釈然としない問題を露出させてしまうんだよ。そもそも光子相対力学の基礎を考えたフェルマーの理論は、決して光の速度に特化したものではなかったはずだからね。でも国王は、あえてフェルマーの理論に光の絶対速度を付け加える事で、光子相対力学を構築した。ヘルムホルツ君、君にはそれが何故だと思うかね?」
「そ、それは……」
「光の速さを超えるとは、すなわち神の領域を意味するんだよ。そしてその領域に足を踏み入れるって事は、神の力を人が手に入れた事を意味するんだ。だから獣神は、そんな神の領域に人が入り込まぬよう画策したのかも知れないんだよ。しかしそれは不毛な論点のスリ替えであり、目先の正論に振り回されてはいけないという現れでもあった。結局のところ、天才の目は誤魔化せなかったって事なんだよね」
スッと立ち上がったシュレーディンガーは、ある一角の本棚に向かい足を進める。そして彼はその本棚に納められている複数の本を見つめながら、ジュール達に向かって告げたのだった。
「この棚にある本は全てグラム博士が書き残した論文だよ。そしてこれらの中には博士が光子相対力学の脆弱性より見つけ出した、科学的な内容が記されている。初めにグラム博士がその脆弱性に気付いたのは、ハップルが発見した宇宙の膨張からだった。だって宇宙の膨張は確実に光速を上回っているからね。銀河が遠ざかるスピードは、距離に比例する事が科学的にも数学的にも証明されている。だから約五百万光年離れるごとに、銀河の遠ざかるスピードは秒速百キロずつ増えていくんだ。という事は、百億光年を超えるほどの宇宙の遥か彼方にある銀河は、必然的に光速を超える速度で遠ざかっていると言えてしまう。グラム博士は直感としてそう思ったのだろう。その考え方はむしろ素人のそれに近い。恐らく科学的に素人であったハップルの発想が、グラム博士に少しばかりの影響を与えたんだろうね。でもそんな感覚的な発想が、グラム博士の才能を神の領域にまで引き上げた。人の身でありながらも、神の力を手にする方法を博士は導き出したんだ!」
声を弾ませたシュレーディンガーはそう吐き捨てる。そして彼は続け様に神の有する脆弱性についても言及したのだった。
「きっと獣神にしてみれば皮肉にしかならなかったであろう。人が神の領域に達する事を嫌ったがゆえに画策していた事が、逆に仇となって人の可能性を花開かせてしまったのだからね。それに国王の身に獣神が宿ったという事象も、ある意味神に弱点を設けてしまった事にもなるんだ」
「神に弱点なんてあるんですか?」
「あぁ。獣神はアルベルト国王の肉体と精神を乗っ取る形でその身に宿った。残念ながらその時点で、アルベルト国王の命は潰えたと言える。しかし国王の信念に深く刻まれた科学への飽くなき執念についてまでは、完全に消し去る事は出来なかった。いや、むしろ獣神はその科学的な知識と技術を利用し、その産物である光子相対力学を提唱する事で、人が神への領域に踏み込まぬよう誘導したのだ。確かにそこまでは全てが上手くいったのであろう。だが神は人が持つ可能性の高さを見誤っていた。神でありながらも物理科学を重んじる為、そこに矛盾が生じてしまった事に獣神自身が気付かなかったのだ。まさにそれこそが神の弱点であり、我々が物理的に神に挑むための筋道なのだと言えるのだ」
「ちょ、ちょっといいですか。そもそも何で獣神は科学になんて拘る必要があるんですか? なんかさ、俺にはそこがさっぱり分からないよ」
話の論点を上手く飲み込めていないジュールが疑問を呈す。するとその疑問にアニェージが相槌を打ちながら付け加えた。
「私もジュールの意見に同意するね。だって獣神の力があれば物理科学なんて、その存在自体が意味無いもののはずだろ? 人からしてみれば、獣神は初めから卑怯とも言えるくらいの物理的効果を無力化した異次元の力を持っているんだし、それに神の力があればそれだけで全てが万能のはずじゃないか。それなのに獣神にしろグラム博士にしろ、やけに科学に捕らわれ過ぎなんじゃないないのかな。むしろ私には天光の矢の様な、ある種の迷信とも言える神への対抗手段の方が合理的な気がするよ」
「なら君らにとって神の力とは何を意味するんだね? いや、それを言うなら本質的に神の既得権とは何を意味するというのだろうか。はっきり言って、私にはこのロジックが分からないんだよ」
「社長。頼みますからもう少し分かり易く話して下さい」
「ハハッ。こいつは済まない。ただね、私やグラム博士が考える神の力についての定義なんだけど、それは人が勝手に想像しただけの詭弁なんじゃないかって、そう思えてならないんだよ」
「詭弁? ますます意味が分からんきね」
リュザックが首を捻りながら呟く。それに対してシュレーディンガーは、丁寧に話しを続けるだけだった。
「神の力が具体的にどういったものなのか。結局のところ、それは人の常識を超えた域の力を指し示すのであって、でもその力が本当に人では生み出す事が出来ないものでるのか。それは正直なところ、誰にも分からないんだよ。ただ人々は超絶なる神の力を前にして恐れる事しか出来ず、その力に向き合おうとしなかった。いや、それどころか逆に神の力を自ら絶対的なものとして祀り上げてしまったんだ。神の力が合理性の無いものだと、人の都合で勝手に決めつけたんだよ。本来ならば人でも使えるはずの力だったのかも知れないのにね」
「ん? って事は、グラム博士は獣神の力に何か物理的な原理を見つけたって事なんでしょうか?」
頭をフル回転させたヘルムホルツが聞き尋ねる。するとそんな彼にシュレーディンガーは首を縦に振って答えた。
「きっとそうなんだろう。そしてその道標として博士は最終定理をどこかに隠した。順を追ってそれに挑む事で、我々に神の力が何であるのか、それを理解させる為にね。光子相対力学の基礎となったフェルマーズ・リポートにその道案内をさせようとしている事も、きっと博士の残したメッセージの一つなんだろう」
『あらゆる劇は世界の究極の意味を探る試みであると言える。その場合に、一つのやり方は【人間を超えた絶対的な目】つまり【神の目】を想定し、その目で見れば世界は隅々まで見えるのだと考えることである』
これは数えきれないほどに複製され世に出回っているフェルマーズ・リポートの二月、三月、六月の論文に共通して記されているテーマである。そしてこの三つの論文を手に取った若き日のアルベルト国王が、現代科学の基礎である光子相対力学を生み出したのだ。しかしフェルマーズ・リポートには最後にもう一冊だけ、九月の論文が存在した。ただしその論文は存在こそ認められているものの、原文どころか複製一つ無い状態であり、その実物を見た者はほとんどいない状態である。それでも九月の論文に記されたテーマについては、口伝えにより科学者の間ではひっそりと語り継がれていた。
『もう一つのやり方は、絶対的な目の存在を認めた上で、しかもそれを【人間のもの】と考えることである。我々は歴史の流れの中にある法則性ないし秩序を認め、歴史の目で見れば世界の意味が分るだろうと考える。つまり、人間は歴史に究極の意味の認識を委ねるのであって、いわば歴史が神の代りをするのだと言えるのだ』
フェルマーが最後に発表した九月の論文だけが、どうしてこのようにテーマ性が異なるのだろうか。論文自体は未完であったため、そこに記された信頼性には疑問が残る。ただそれでもその論文の内容をしっかりと確かめさえすれば、もしかしたらテーマ性の異なる要因を簡単に紐解く事が出来るのかも知れない。しかし現実にはその内容を調べる手段は無く、たった一つ残されたとされる原文ですら、グラム博士によって隠されてしまっている状態なのである。しかしこの状況を逆に考えた場合、その九月の論文が極めて重要な存在であるのは間違いがなく、それを十分に把握していたからこそ、グラム博士は最終定理と共にそれを隠したと推測出来るのだった。
「獣神側に与した【ヤツ】に、我々が探し当てた3月の論文のオリジナルが強奪されたのは知っているね。その既成事実からしても、獣神側が博士の残した最終定理の存在について、何かしらの情報を得ているのだと考えざるを得ない。そしてそこから考えられるのは、獣神も躍起になって最終定理を探しているって事なんだ。その理由は我々が神に挑む為の望みを断ち切る為なのか、それとも獣神自身が波導量子力学の英知を欲しているからなのか、それはまったく分からない。でもね、一つだけ断言出来ることがある。それは我々よりも先に獣神側が最終定理を手にしたならば、もう世界には絶望しか残らないって事なんだよね」
シュレーディンガーは強く拳を握っている。僅かに震えるその拳から伝わるのは、強敵に怯える恐怖心なのだろうか。いや、違う。むしろ受け止めた責任の大きさに身震いしているだけなんだ。そこにいるジュール達は直感としてそれに気付く。そしてそんな彼らの背中にも、人知れず冷たい汗が流れていた。
「現時点で我々は六月の論文を捜索しているわけだが、その先にあるはずの九月の論文。そこにはグラム博士の残した最終定理が共に隠されているはずだし、またそこには金色の玉型兵器を完成させる為の手法も残されているはずなんだ。そして更に付け加えるならば、そこには未だ見つかっていないブラックホールの発生源となる【黒色】の玉型兵器の所在についても、手掛かりが残されているはず。私が数年前にグラム博士より直接聞いたところでは、もう黒玉は完成しているって話しだったからね。だから我々は何としても獣神よりも先に、最終定理を見つけ出さなければならないのだよ。それもタイムリミットはそれほど残されてはいない。ガルヴァーニさんの調査によれば、最終定理の捜索猶予は来年の千年祭までらしいからね。のんびりしている暇はないんだよ」
「あのガルヴァーニっつうじいさんは信頼できる人なんかがか? それにどういった根拠で来年の千年祭がタイムリミットになっとるきよ?」
「済まないが、まだ断言は出来ない。でもそれを裏付けするために、ガルヴァーニさんには行動してもらっている。確証が掴めないままで君達に話しをすれば、余計な混乱を乗じさせるかも知れないからね。今のところは千年祭に何かしらの危険性があるとだけ、言っておくよ」
「なんじゃそりゃ。なんか気持ちが悪いきね」
シュレーディンガーに疑問を呈すリュザックの言葉は収まりが悪い。それは彼の持つ優れた洞察力から来るものなのだろう。ただそんな訝しむリュザックに向かい、能天気にもジュールは明るく声を掛けたのだった。
「まぁ良いじゃないですか、リュザックさん。とりあえず俺達が何をしなくちゃいけないのか、それがハッキリしたんだからね。それ以上の分からない事に頭を悩ませても意味無いっすよ。まずは六月の論文を探し出す。それに全力を尽くしましょう」
「チッ、こいつはバカってだけじゃ言い表せないほどに真っ直ぐな奴じゃきの、ジュール。お前の無神経ぶり見とると、先が思い遣られて疲れてくるがよ」
「まあまあ、リュザック君の心配する気持ちはよく理解出来るよ。正直な所、私とてまだ把握しきれない事ばかりだからね。不安のほうが多いってモンさ。でもね、だからこそ今はジュール君が言う様に、目の前の目的に向かって全力を出してほしいのだよ。あれこれ考えたって分からないものは分からないのだし、未来を正確に予測する事なんて誰にも出来はしないのだからね」
「でも一点だけよろしいですか。六月の論文捜査が重要なのは理解出来ましたが、それでもまだ俺達には与えられた情報が少なすぎる気がします。先だって実行された天光の矢による獣神抹殺の件だってそうだし、それにヤツの存在一つ見ても分からない事が多過ぎる。まして王立協会の裏組織であるアカデメイアなんかは、尋常でなく悍ましい研究に手を染めているほどなんだ。そしてそれらに対抗する手段を、俺達はまだ全然知らない。最終定理の捜査には、やはりそれ相応の情報と装備が必要なんだと思うんですが。その辺はどうお考えなんですか、シュレーディンガーさん」
心許無い表情を浮かべたヘルムホルツが直接的な疑問を投げかける。彼にすれば当然な懸念なのであろう。敵とする相手の情報が霧に霞んだほどに不鮮明なのだ。それに命懸けの作戦であるはずなのに、その対処方法が常識外れの科学理論ときている。これで全てを受け入れろっていう方に無理があるのは否めない。ただそんな彼の心境を正確に読み取ったシュレーディンガーは、その質問に答える為、玉型兵器の納められたブリーフケースに歩寄ったのだった。
「ヘルムホルツ君の胸の内の懸念はよく理解出来る。でも残念な事に、私自身が知り得る情報はそれほど多くは無いんだよ。まぁそれでも天光の矢による獣神抹殺計画の経緯についてや、ヤツの特徴について私が知り得ている事実は隠すことなく全て君達に伝えるつもりだけどね。でもそれだけではヘルムホルツ君が不安視する様に、敵に立ち向かう為の準備としては不十分過ぎるのも確かだ。でもね、そもそも我々は神なんていう不確定な対象に挑もうとしているんだから、少なくとも先の読めないリスクを顧みずに前進しなければ、それこそ神なんて倒せやしないはず。そうは思わないか?」
「俺だって覚悟は出来てるつもりです。けど現状を考えると、いくらなんでも無謀過ぎやしませんか? 命を懸けるにしたって、犬死だけは御免ですよ」
「相変わらず図体ばかりデカいだけで肝っ玉が小せぇなぁヘルムホルツ。シュレーディンガーさんが言った様に、分からないものは分からないんだから、今は我武者羅に突き進むしかないだろ」
「ケッ、馬鹿ジュールが。お前の単細胞はどこまで中身が空っぽなんだよ。俺が言いたいのは、このまま突き進んだって、返り討ちにあって無意味に死ぬだけだって言ってるんだよ」
「それがケツの穴が小せぇって言ってるんだよ! 今は分からなくったって、先に進む事で新しく分かる事だってあるだろ。それとも何か、ここにじっとしてれば、勝手に情報が降って来るとでもお前は言いたいのか!」
「なんだとコイツっ、ふざけやがって。俺は強敵に挑む為の最低限の準備をしたいだけなんだ。そんな簡単な事も理解出来ないで、お前は本当に神に勝てると思っているのか。俺に言わせればお前なんて、ギャンギャン吠えてるだけの野良犬みたいなモンなんだよ!」
「なんだとテメェ、ブッ飛ばすぞ!」
「やってみろコラッ!」
ソファから飛び上がったジュールとヘルムホルツはお互いの胸ぐらを掴み合う。そして二人は互い向けて自らの拳を振り上げた。――がそれよりも早く、リュザックの拳骨が二人の頭上に振り降ろされる。
「ガンッ!」
「痛てっ」
かなりの強さで拳を降ろされたのだろう。表情をしかめたジュールとヘルムホルツは、殴られた頭を抑えながらその場に蹲った。ただそんな痛みが彼らに冷静さを取り戻させる。二人はつい勢い余って取り乱してしまった事に決まりの悪さを覚えながら、申し訳なさそうに殴られた頭を掻きむしっていた。そしてそんな彼らに向かいリュザックは、溜息まじりに苦言を吐き捨てたのだった。
「まったく、こんなところで揉めてどうするがよ。これだからガキの世話は嫌いなんだきね」
「わ、悪かったよリュザックさん。でももう少し手加減してくれても良いじゃないですか。それとも俺達の頭かち割るつもりですか」
「そんなに痛かったがか? 日頃の鍛錬がなってないきのう。でもまぁ、駄々っ子を諫めるにはこいつが一番だき。ジュールのほうはそれ以上バカになる事はないだろうし、別に構わんじゃろ。博識のヘルムホルツのほうは少し気が引けるところもあるけんどね」
「フフッ、そいつは言えてるな。ジュールには私の蹴りを追加してやっても良いくらいだからね」
「そ、そいつは勘弁してほしいぜ。あんたの蹴りは冗談じゃ済まないんだからさ」
からかうアニェージに対し、ジュールは居心地が悪そうに呟いた。そんな彼からは、そそっかしくも頭に血を昇らせた自分を反省する気持ちが窺える。そしてそれはヘルムホルツも同じであり、彼らは申し訳なさそうな表情でお互いの視線を合わせていた。
きっと誰もが不安なのだ。立ち向かう獣神という異次元の存在だけでも身が竦むほどなのに、それにも増して波導量子力学の成す超次元の科学力に想像が追い付かないのだから、そこに極度の不安や焦りを覚えるのは人としてはむしろ当然な感情と言えるのだろう。だからこそ、そんな焦燥感にジュールとヘルムホルツはお互いの苛立ちをぶつけたのだ。まだ若い彼らの未成熟さが露呈された。一言で表すならば、そんなところなのかも知れない。しかし逆に考えれば、それは彼らが責任と覚悟を十分に受け止めている証拠であると見る事も出来るのだ。
絶対に失敗は許されない。だけど残された時間には限りがあるため、悠長に構えていることも出来ない。結局のところ、ジュールが言う事もヘルムホルツが気に掛ける事も、決して間違ってはいないのだ。そしてそれはここに居る全員が理解している事であり、もちろんジュールにしてもヘルムホルツにしても、お互いの気持ちは手に取るほどに察しているはずである。それでも湧き上がる不安につい感情が高まってしまった。ただそれだけなのだ。
でも一時的に感情が爆発した事で、それが一種のガス抜き効果を及ぼしたのだろう。いつしか張り詰めていた周囲の緊迫感は鳴りを潜め、その代わりにどこかホッと心を和ませる穏やかな空気が部屋全体を覆っていた。するとそんな一変した周囲の感覚に同調したシュレーディンガーが、少しだけ弛ませた表情で話し出す。それは若者達を送り出す事しか出来ない、彼なりの心苦しさを誤魔化すものであった。
「君達が先の見えない未来に煩わしさを感じ、苛立ってしまうのはとても良く理解出来る。そしてそんな君達に対して私がしてやれるサポートは、精々金と武器の工面くらいなものだろう。それについては本当に申し訳ないと思っている。結局のところ私やグラム博士は問題を先送りにしてしまい、掛け替えの無い未来を君達若者に託す事しか出来なくなってしまった。それも試練に満ちた過酷な未来にね。だから本当であれば君達が怒りを向ける対象は、我々年寄りなのかも知れないんだ。でもそれを今更嘆いたところで、何の意味も無いのは分かり切っている。だからね、私は少しでも君達が先を見失わぬよう、後方から道を照らすつもりだ。そしてそれはグラム博士も一緒なんだと思うんだよね。逃げ出したくもなる困難な道なれど、そこを一歩一歩進む事で君達は間違いなく成長出来るはず。きっとグラム博士は君達なら成し遂げられるはずだと信じていたからこそ、最終定理に続く絡め手を仕立てたんだ。だから君達も私やグラム博士を信じてほしい。存分に頼ってほしいんだ。私に出来ることなら、惜しむことなく何でもするつもりだからね」
そう胸の内を告げたシュレーディンガーは皆を見渡した。その瞳には言葉で表せないほどの強い気概が込められているのが分かる。とても頼もしく、それでいて安心できる。きっと彼とてその心情では、不安が色濃く存在するであろう。しかし彼はそんな弱さなど微塵にも表面化させる事はなく、むしろ心強く若者達の背中を後押ししているのだ。そしてシュレーディンガーは、ブリーフケースに納められていた白色の玉型兵器を手に取り、穏やかな口調で続けたのだった。
「これらがどこまで獣神やヤツとの戦いに効果を示せるかは不明だ。でもこれから先の戦いで、これらのアイテムが絶対に必要となる事も確かなんだよね。だからまずはここにある、新しい玉型兵器の効力について説明するとしよう」